新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行で都市封鎖や外出禁止令が出され、観光産業を中心とする多くの産業が活動を停止させています。アダルトムービーの制作も例外ではなく、撮影には多くの人が集まり接触する必要があることから、スタジオ制作がストップしています。しかし、これによって全てのAV女優が困窮状態に追い込まれているわけではなく、中には逆に収益が増加した人もいるとのこと。社会的な逆風の中で、テクノロジーを利用した新しいポルノの形が台頭してきています。

Porn Takes On a Personal Touch in the Pandemic - The Ringer

https://www.theringer.com/2020/5/27/21269951/porn-coronavirus-pandemic-onlyfans

シカゴを拠点とするコスプレイヤーでありアダルト女優でもあるLittle Puckさんは、会員制SNSサービス「OnlyFans」を通じて月額制でアダルトムービーを配信することで、都市封鎖・外出禁止令が下された中でも多くの収益を上げることに成功しています。2020年1月にOnlyFansに登録したPuckさんは、当初1カ月に2000ドル(約22万円)程度だった収益を、4月には7500ドル(約80万円)に増加させました。PuckさんはOnlyFansに登録する前から自分のアダルトムービーを直接販売できるストリーミングサービス「ManyVids」に登録しており、月1万ドル(約110万円)を売り上げていましたが、OnlyFansの収益はそれに匹敵する勢いとのこと。

COVID-19が流行する前から、OnlyFansやManyVids、そしてSnapchatのようなSNSはアダルト女優たちによって活用されてきました。これらのプラットフォームはスタジオが関わらない分、女優の収益率が高くなり、コンテンツ製作者としての自律性も高まるためです。COVID-19のパンデミックは、既に存在した傾向を加速させたものといえます。

このようにアダルト産業では「スタジオからパフォーマーへ」という大きなシフトが起こっていますが、大きなシフトが起こること自体は珍しいことではありません。例えば、「VHSからDVD、そしてBlu-rayへ」という変化もその1つ。さらに、近年ではPornhubやXvideosといった無料でコンテンツを配信するウェブサイトが増加し、DVDのような収益性の高いメディアが崩壊したのも大きな変化です。これにより、アダルトDVDを制作していた多くの企業が廃業に追い込まれ、Pornhubの親会社であるMindGeekや、Xvideosを運営しているWGCZ Holdingは人気スタジオをどんどん買収していきました。

またアダルト女優がコンテンツをファンに配信するという発想自体も、新しいものではありません。1997年頃からウェブカメラによるヌードショーや、テレフォンセックスの提供などが行われてきました。しかし、最新のプラットフォームは多くがサブスクリプション(定期購読)の形式を取っており、ファンは月額料金を支払うことでお気に入りのパフォーマーからサービスを受け取ることが可能です。これは、セレブがファンとやり取りするInstagram LiveやTwitch、あるいはセレブから個人的なメッセージを受け取ることができるCameoを踏襲した仕組みです。

特に冒頭に登場したOnlyFansの勢いはすさまじいとのこと。OnlyFansはもともとポルノ専用というわけではなく、フィットネスインストラクターが利用して収益を上げていることも報告されていますが、アダルトコンテンツに関しては「ポルノの直売所」と称されるまでになっています。

「ポルノの直売所」と称されるまでに性的コンテンツの配信が会員制SNSで増加した理由とは? - GIGAZINE

2020年3月時点でOnlyFansは2000万人の定期購読者と20万人のコンテンツクリエイターを保有していますが、その成長は「社会的距離」が問題になり始めてから劇的に増加しており、3月だけで350万人の定期購読者と6万人のコンテンツクリエイターが登録を行ったとのこと。都市封鎖前はアダルト女優として世界各都市を飛び回っていたソフィア・ローズさんは、月14.99ドル(約1600円)でコンテンツ配信を開始しましたが、4月初旬に定期購読者が400人になり、5月中旬には1000人に到達したことを報告。つまり、OnlyFansだけで月160万円の売上げがあることになります。

ただし、OnlyFansにも問題があるとのこと。OnlyFansではコンテンツクリエイターのルールが明記されておらず頻繁に変更されており、またバグもあるとPuckさんは述べています。さらに、OnlyFansは電話での依頼に応じるコールガールによるアカウントについては、たとえコールガールとしてのサービス提供目的ではなくとも、アカウントが特定されればページを使用不可にして収益も保留にするという処置が行われているとのこと。そして2020年初頭にはデータ流出が起こり、コンテンツクリエイターが住所を特定され嫌がらせを受けたことも報告されています。

このようなデメリットにも関わらずOnlyFansへの支持が高い理由は、コンテンツクリエイターが売上げの80%を得ることができるという、収益性の高さにあります。これは、類似サービスの収益割合よりもはるかに高い数字です。また、消費者のニーズに変化が生じたというのも理由として挙げられます。Puckさんは3年前に一度OnlyFansに登録してみたものの、当時はManyVidsの方がはるかに収益源として優秀だったことから、すぐにOnlyFansの利用をやめたとのこと。しかし、2020年1月になり、多くの同業者がOnlyFansで稼ぎだしたことを受けて、OnlyFansを再開。ここで大きな利益を生み出すことに成功しました。

典型的なスタジオ撮影のアダルトムービーでは、女優は撮影1回あたり800〜2000ドル(約8万6000円〜22万円)を稼ぎ、新人であればわずか300ドル(約3万2000円)しか受け取れないことも。また、権利の使用料について女優は支払いを受けないため、一度の撮影が終われば、収益はそれきりです。

このため、アダルト女優の中には「スタジオ撮影のアダルトムービー」を新しいファンを作るための場所として利用し、定額購読制のサービスで安定した収入を得るというスタイルを確立させた人も。平均より大きな体格のプラスサイズのポルノ女優として活躍するローズさんもその1人で、スタジオでの撮影は収入全体のごく一部であるものの、スタジオのムービーに出演するたびにInstagramやTwitterのフォロワーが1万5000〜2万人増加することから、スタジオ撮影を続けているとのことです。

また、ビデオサービス・電話・カスタムコンテンツなどを通じて、プライベートセッションを行うことで、定期購読料金以上の収益を上げることが可能なのもOnlyFansの魅力です。ポルノにおける「素人っぽさ」のニーズは昔から大きく、実際には素人ではない女優が、素人感を演出し、ファンと接触していくことで高額を稼ぎ出す事例も存在するとのこと。

一方、スタジオ撮影の価値も消えてはいません。オリジナルコンテンツを放映する100チャンネルを保有するストリーミングサービス「Adult Time」のディレクターであるBree Mills氏は、COVID-19の流行で活動停止を余儀なくされていますが、それでも「独創的な方法でコンテンツ制作を行うこと」に目を向けています。Pornhubといったウェブサイトが台頭した際、多くのスタジオが新興プラットフォームに積極的ではなく、閉業していきました。「2020年は全体像を理解している才能のある人が生き残ります」とMills氏は語ります。業界がどのような形で進化しても「ブランド」としてのスタジオ撮影はなくならず、収益や人気をブーストさせたい女優にとってスタジオ撮影は有益なものです。パフォーマーである女優がこれまで以上に力を発揮するようになれば、スタジオ撮影はコンテンツの内容から支払いまで、多くのことを再考する必要があるかもしれませんが、それでも、うまくいけばスタジオ撮影のムービーの人気は今以上のものになる可能性があるとのことです。