北海道のJAひがしかわは、米が主食でないロシアに、新たな米料理を提案する方法で、市場開拓を進めている。現地の日本食料理店のメニューや、日本大使館でのレセプションなどでPR。国内の競合産地が少なく距離が近いメリットを生かす販売戦略だ。2018、19年の2年間でウラジオストクに約2トンを輸出した。輸出専用の水田を設置し作業風景を伝えるなど、信頼関係を築くための工夫も凝らす。(洲見菜種)

競合なし「新販路で勢い」


 農水省によると、19年の米輸出量のうちロシアの割合はわずか1%。アジア圏など、米の需要が多い国への輸出を考える産地は多いが、JAは「米を主食とする国は競争が激しい上に、消費量は固定している」と指摘する。

 同JAは台湾にも米を輸出したが、外国産や日本の他産地との競争にさらされている。「販路拡大には、米を食べていない人の需要を掘り起こさないと消費は増えない」とロシアに目を向けた。

 しかし、同国に米を炊く習慣はなく、米だけ輸出しても消費は伸びない。販路開拓の切り札としたのが「東川ボール」だ。JAブランドの「東川米」に、ロシアで身近な食材であるイクラやハム、チーズなどを混ぜ合わせた、新しい「おにぎり」だ。

 地元住民らによる試食会などを経て今年2月、モスクワの日本大使館で開かれたレセプションで、約700人に披露した。ロシア語で特徴や米の炊き方から握り方までを紹介したリーフレットも配布。約800個を提供し好評を得たという。今後、販促ツールとしてロゴも作り、ロシアでの商標登録も目指す。

 今春からはウラジオストクの日本食料理店のメニューにもなった。お品書きには、「東川産米」のおいしさなどを書いたロシア語のちらしを挟む。

 JA管内の東川町には輸出向けの水田を設け、来日客や輸出業者を案内し、生産者が責任を持って安全・安心な米を作っていることを知ってもらう。

 JAは野菜など含めた農産物で200億円規模の輸出を目指しており、ロシア向けの米を柱の一つにする考え。将来的にはロシアの人を同町に呼び、農業に携わってもらう青写真を描く。ウラジオストクへの輸出が軌道に乗れば、首都モスクワ、欧州、そしてアフリカへと販路を広げたいとする。

 JAは「米の国内消費が落ちる中で、販路をつくれば農家もJA職員も活力が出る。時間をかけてしっかりと地域ごとに米の消費や市場をつくっていきたい」と意気込む。