廃線の危機を「ぬれ煎餅」などで乗り越えてきた銚子電鉄が、新型コロナウイルスの感染拡大で「鯖威張るな状況」になっています。ダジャレのようですが、そこには「日本一のエンタメ鉄道」を目指す銚子電鉄の夢がありました。

銚子電鉄は「鯖威張るな状況」

 廃線の危機を、名物「ぬれ煎餅」で乗り越えてきたことなどで知られる千葉県の銚子電鉄が2020年4月、そのFacebookページで「まずい棒が在庫の山・・・本当にまずい。ポチっと一袋お願いします(涙)」「経営状況がまずか・・・(涙)まずかちゃん」と投稿。新型コロナウイルスの感染拡大で銚子に来てもらうことが難しいなか、ネット通販での商品購入を呼びかけました。

「まずい棒」は、銚子電鉄がその駅などで2018年から販売する棒状の菓子。商品名は、ぬれ煎餅の売上減少などによって「銚子電鉄の経営状況がマズい」ことに由来します。


銚子電鉄2000形電車。元京王電鉄の車両(2020年2月、恵 知仁撮影)。

 そんな、経営状況がマズかったという銚子電鉄がいま、新型コロナウイルスの感染拡大によって大きな影響を受けています。同社の竹本勝紀社長によると、その乗客は7割が観光客。緊急事態宣言で外出自粛が求められるなか、銚子電鉄が計画運休を開始した4月11日(土)、その乗客はほとんどいなかったそうです。

 同じく4月11日(土)、銚子電鉄は新たにサバを使った「鯖威張るカレー(サバイバルカレー)」を発売。この「鯖威張るな状況」において「絶対にあきらめない!」と、その公式サイトで強い意志を表明しました。

銚子電鉄 ダジャレのような商品名の背景とは? 夢は「タモリ社長」

「まずい棒」や「鯖威張るカレー」、2018年発売の「鯖威張る弁当」といったダジャレのような銚子電鉄の商品名には、ある思いが背景にあります。

 同社の竹本社長は、乗客の7割が観光客であるため、「日本一のエンタメ鉄道」を目指して「イルミネーション電車」や「バルーン電車」の運転、社長みずから「DJ」になって電車を運転する、UFO召喚イベントを開催するなど、「来てもらう」ことに努力してきたそうです。


銚子電鉄の「まずい棒」。キャラクターは日野日出志さんによる「まずえもん」(2020年2月、恵 知仁撮影)。

「まずい棒」「鯖威張るカレー」といったネーミングには、そんな「エンタメ」の心で銚子に来た人をもてなし、笑顔で帰ってもらい、また銚子に来てもらう、そして自虐であれば誰も傷つかない――そんな思いがあると、そして銚子電鉄が銚子に人をどんどん呼び込み、お金を落としてもらい、地域への恩返しをしたいと、竹本社長は話します。

 そんな「日本一のエンタメ鉄道」を目指す竹本社長には、「ぜひタモリさんに、銚子電鉄の社長になっていただけたら……」という夢があるそうです。