日本と欧州ではミニバンに対する需要の在り方が異なる

 まさか、日本でこれほど注目されるとは!? プジョー・シトロエン・ジャポン(現グループPSAジャパン)は昨年(2019年)10月19日、ミニバンのベルランゴのオンライン先行予約を行ったところ、たった5時間半で予定数を超えてしまった。

 11月には、二子玉川駅に隣接する特設会場にシトロエン本社のリンダ・ジャクソン社長自らがシトロエンの新戦略についてプレゼン。もちろん、ベルランゴはイチオシだった。

 一方、欧州で日本の売れ筋であるトヨタ・アルファード/ヴェルファイアや日産セレナが大々的に売り出されて人気ということにはなっていない。なぜならば、日本と欧州ではミニバンに対する需要の在り方が根本的に違う。

 ベルランゴにしても、ルノー・カングーにしても出発点は商用車。これをファミリーでも活用しようという流れだ。日本では80年代にハイエースやタウンエースなどの商用車が乗用化していったような感じである。日本では90年代以降、ミニバンの多種多様化が進み、いまのような状況になっているが、欧州では日本のようなミニバン進化が起こっていない。

 成熟した日本ミニバン文化のなかで、日本車にはない機能性やデザインを持つベルランゴやカングーに対して、日本人は新鮮さを感じるのだと思う。逆に、日本の最新ミニバンを欧州で普及させようと思っても、欧州各国の社会のトレンドに上手くマッチしない。

アメリカでは「できれば乗りたくないクルマ」とされている

 アメリカでのミニバンといえば、サッカーマムのクルマと言われることが多い。子どものサッカークラブや学校の送り迎えのために使うことが重視される、まさに家族送迎車だ。

 子どもから見れば、ミニバンで迎えにくるよりシボレー・サバーバンやBMW・X5など上級SUVのほうが、友達たちに対して自慢できる。ご主人の立場でも「送迎車や商用車っぽくて……」「できれば、運転したくない」という人が多い。要するに、アメリカ人にとってミニバンは「ダサいクルマ」なのだ。こうした意識は、古くはダッジ・キャラバンでアメリカ人のなかに深く浸透した印象がある。

 このほか中国や東南アジアでも、ミニバンは送迎車や商用車の意識が強い。一部には、アルファード・ヴェルファイアを好む人がいて、そのためレクサスLMが登場したが、こちらはあくまでも、運転手付きのショーファーカーだ。

 日系自動車メーカーの役員が以前、こう話していた。「日本のミニバンが、世界のなかで極めて特殊な存在」だと。さらに「日本人は家族との大切な空間そのものを、ミニバンのなかで再現しようとする」とも言った。社会学的、また歴史的な背景が日本のミニバン文化を築いた。日本独特のミニバン文化は、世界には通用しない。