COVID-19(いわゆる新型コロナウイルス)の流行は世界的に留まることを知らず、我が国でも4月7日に安倍晋三内閣総理大臣が会見を行い、4月8日より7都道府県に対して緊急事態宣言が発出された。日本だけでなく世界中で多くのオフィスワーカーが在宅勤務になるなど、社会構造にも変化をもたらす大きな影響が出ている。

そうした中で、これまでアメリカ、台湾、欧州などでIT系イベントを取材して記事を書くというビジネスモデルだった筆者の仕事も大きく影響を受けている。2月末に開催予定だったMWC 2020が中止になり、それ以降は自宅でのリモート取材が中心に。多くのオフィスワーカーの皆さんよりもひと足先に「巣ごもり」生活となっていた。

この空き時間に何をするかと考えた末、筆者が選んだのが「自宅発掘活動」だ。筆者自宅の一部屋は倉庫になっており、あまり使わないモノなどを詰め込み続けていた結果、倉庫はいつの間にか「魔窟」と化していた。そこで、この魔窟を発掘、整理していらないモノを捨てることに。その結果、想像もしなかったモノが発掘されたので、その記録ではないが、いくつか出てきたものを紹介していきたいと思う。

陸に上がったカッパとなった取材記者が自宅の掃除に取りかかるまで

......と、その前にこれまでの経緯を簡単にまとめておこう。

筆者の仕事は「テクニカルライター」ということで、IT関連のデバイスメーカーや、サービス事業者などにインタビュー取材したり、イベントや発表会などを取材してその模様を記事にしたり、というのが仕事の中心となる。特に筆者の場合は国内よりも海外、特にグローバルで事業を展開しているベンダーを取材することが多く、どうしても海外のイベントや発表会に出向いて記事を書くことが多くなっていた。このため、出張に次ぐ出張という形で、一番酷かった昨年は200日以上家を空けている(つまりホテル暮らし)。このため、正直、家をメンテナンスするどころではなく、片付けもしている暇がないというままここ数年が過ぎている状況だったのだ。

だが、そんな状況も一変。MWC 2020が出発の一週間前に中止となり、関連する取材もなしに。それに合わせてフライトやらホテルやらをキャンセルする作業に終われることになった。この時点では「2週間ぐらいの予定がぶっ飛んだな」ぐらいに考えていたのだが、その後欧米で流行が広がると状況は一変する。まず、3月の上旬に予定していた取材がなくなり、同月下旬に予定していたIT関連のイベントが次々とデジタルカンファレンスになっていき、最終的にはそのデジタルイベントさえも中止される状況に。まるでドミノ倒しのように予定がなくなっていく、そんな状況となっていった。

そんなこんなで取材は電話会議へと移行していき、自宅からという形に切り替わっていった。多くのオフィスワーカーの皆さんは3月末や4月頭から徐々にテレワークで巣ごもりという状況かと思うが、筆者の場合は2月の末から「巣ごもり」が始まっている

出張がなくなったことによる悪い面でのインパクトは、もちろん仕事がなくなることにより収入が減ることだが、かといって悪いことばかりではない。良い面はアメリカや欧州へ出張する必要がなくなったため、移動時間のロスがなくなり、その分を自分のための時間として使えることだ。

「せっかく時間があるのだから、自宅の掃除にチャレンジしよう」、前置きが長くなったがこれが今回のきっかけである。また、いまのところ筆者宅では平日、家人が仕事で出かけるため日中は筆者一人がいるだけだが、世の中がよりテレワークという風潮になれば、当然家人も自宅でテレワークになる可能性がある。ならば、少しでも掃除していらないモノを処分し、家を広くすることが必要だと感じたのも理由のひとつと言えよう。

倉庫から出てきた段ボールの山、中にはマザーボードなど。都市鉱山か!


▲筆者宅の魔窟こと倉庫から発掘された段ボールの山。この中身のほとんどがマザーボードやビデオカードなど

そんな感じで掃除を始めたのだが、自称「倉庫」は本当に魔窟だった。とてもお見せできるようなものではないため全貌の写真はないのだが、途中で中にあったものを出した時の写真はある。それが上の写真だ。

今の自宅に引っ越してきて16年が経過しており、たまに大きなモノを捨ててはいたものの、そもそも存在すら忘れていたモノが多数あった。上の写真は片付けの途中で撮影した、PC用のマザーボード(主基板)やビデオカードの段ボールだ。昔PCパーツのベンチマークの仕事をしていた頃に買いそろえたマザーボードだけでも数えたら数十枚あったが、保存しておくと場所を取るだけなので処分することにした。ちなみに魔窟にあったマザーボードの箱はこれで半分(もはや都市鉱山という他ない......)。

処分方法は簡単だ。まずは内輪だけのSNS(例えば投稿範囲が制限できるFacebookなど)にこんなの発掘しました! と写真を掲載し、欲しいと言ってきた人にあげるという方法。シンプルだが、これは結構効いた。かなりモノがもらわれていった。写真のマザーボードも、後で記事にしようというモノだけを残し、残りは友人のマニア氏に全部引き取られていった。

残りの必要のないものは、外出自粛になる前(3月中の平日)に、デジタルデバイスなどの引き取りを行なっているリサイクル業者に車で持って行った(法律的な契約行為としては無償での譲渡ということになる。つまり友人にあげるのと同じということだ)。こうしたリサイクル事業者はPC、ディスプレイなどのIT機器を無料で引き取り、中古で売れる物は売り、金属を取り出してリサイクルするため、必要のない機器やケーブルを引き取ってくれる。筆者は車で2回往復するほどの機器や山のようなケーブルなどを引き取ってもらったが、いずれもコストは自分の車のガソリン代と高速道路の料金だけだった。


▲捨てるHDDは段ボールに一杯。基本的には外す前にデータを消去しているが、安全性を考えると破壊がベストだ。気がつけば破壊待ちが30個に......貯め込まないで捨てるのが本当は良い

ただ、そのままでは譲渡できないものもある。例えば、ストレージなどのデータが入っているデバイスがその代表だ。筆者は基本的にデジタルデバイスを処分するときは、HDDを抜いておくことにしている。もちろん、最近のPCはSSDが基板に直付けになっていることもあるので、その場合、電源が入るならばデータ消去ツールを利用し、データを消去してから捨てるようにしている。

とはいえ、2000年代後半以降に使っていたWindows PCはみな、Bitlockerの暗号化を有効にしており、その暗号化解除鍵を捨ててしまえばデータを消去したのと同じになるので、データ消去ができない場合はそれで消去という扱いにしている。もちろん消せるなら消した方がいいのは言うまでもない。

そんなわけでHDDは1つ1つ物理的に破壊して捨てるように心がけているが、現状は箱に入れて処分待ちとした。なぜなら、数えたら3.5インチのHDDが21台、2.5インチのHDDが10台あったので、それら全てを破壊するのはかなり面倒だからだ。外出自粛が解除されてから有料もしくは、引き渡しを条件に無料で破壊してくれる業者を利用しようと考えている。

発掘されたPDA、スマートフォンの数々......そのなかで個人的に懐かしかったベスト10を紹介


▲ソニーのCLIE PEG-NR70

魔窟の発掘を続けていると懐かしい製品の数々が続々と出てくる事態に。その度にFacebookに投稿していたのだが、それを見ていた本誌の矢崎編集長から「記事書いてよ!」と言われて、この記事を書き始めたというのが序章となる(前置きが長くてごめんなさい!)。

さて、気になる出土品だが、PC、スマートフォン、PDA、ノベルティなど多数に渡っていたのだが、今回はスマートフォン / PDAを紹介していきたい。率直にいって、筆者はさほど熱心にスマートフォンやPDAなどを集めていた訳ではないので、たぶんマニアの皆さんから見たら「なんだその程度のコレクションか」と怒られるかもしれない。まあ、そこはご容赦いただくとして、以下発掘されたスマートフォン / PDAの中から10個を選んでみた。

(1)ソニー「CLIE PEG-NR70」



ソニーのCLIE(クリエ)はソニーがかつて提供していたPalm OSベースのPDA。PDAは今のスマートフォンのご先祖様みたいなものだ。1990年代後半に当初は英語版のみの提供だったPalm OSは日本でも雄志による日本語化が行われ、1999年にはIBMからWorkPadとして最初から日本語化されたバージョンが発売され、日本でも本格的に普及が進んでいった。

CLIEシリーズは、2000年にニューヨークのジャビッツ・コンベンションセンターで行なわれたPC EXPOで初公開された製品。のちに複数のモデルが発売されていった。このPEG-NR70は、2002年発表のPalm OS4を搭載した折りたたみ型モデルで、片側にディスプレイ、片側にキーボードというユニークなデザインが特徴になっており、「デザインのソニー」といわれていた当時の勢いを象徴しているような製品だ。



ドックに置いて、試しに電源を入れてみたら、とりあえず起動はした。イマドキのスマートフォンでこんなの出してみたら、結構買ってくれる人がいると思うんですけど、筆者のようなマニアが。台数の保証はしませんので、間違っても本気にされないでください>メーカーの方(笑)

(2)NTTドコモ「FOMA M1000」



NTTドコモのFOMA M1000は、Motorolaが開発してNTTドコモが自社ブランドとして2005年から販売した3G携帯電話だ。当時のPDAや携帯電話などで多く採用されていたSymbian OSを搭載、Webブラウザや電子メールソフトなどを備えており、PCの代わりに使えるという触れ込みの端末だった。このため、ターゲットとされていたのは一般消費者ではなく、ビジネスユーザー。主にビジネス向けの販路で販売されていた。



なお、NTTドコモが2014年に出したリリースによれば、総務省が定める「無線設備のスプリアス発射強度の許容値に係る技術基準の改正」が施行されたことにより2015年12月1日以降使用禁止となっているので、現在はフライトモードなどにした状態でしか電源を入れることができない。

(3)イーモバイル「 EM・ONE」



EM・ONEは、当時イーモバイル(現ソフトバンク傘下のワイモバイル)が販売していたシャープ製PDAだ。4.1型ワイドVGA(800×480ドット)の(当時としては)高解像度ディスプレイを搭載しており、Windows Mobile 6 ClassicというWindowsのPDA向けOSを採用していた。通信機能はHSDPAで下り最大3.6Mbps。1Gbpsを軽く超えてくる5Gとかから見ると超絶低速回線だが、当時のカタログには「3.6Mbps高速データ通信」の謳い文句が......。

これを使っていた当時は、Google Mapを見たり、電子メールを見たり、Skypeでチャットしたりといった用途で使っていた記憶がある。結局スマホで今やっていることとあまり変わらないじゃん! と言えばその通り(笑)。スライド式のキーボードが便利でした。当時はフリック入力がなく、タッチの入力の効率が悪くて辛すぎだったので。

(4)Google「Nexus S」



Google自社ブランドのAndroidスマートフォンが「Nexus」シリーズ。2010年の11月に発表された2世代目となる製品がこの「Nexus S」だ。ちなみに1世代目はNexus OneでHTC製、Nexus Sはサムスン電子製。

2011年のCESへ出かけたときに、アメリカのBestBuyで海外用のスマートフォンとして購入したモノで、当時はSIMフリースマートフォンがあまりなく、世界各地で現地のプリペイドSIMカードを利用するのに重宝していた。



今のスマートフォンではもはや考えられないが、バッテリーが取り外しできて交換可能。個人的には多少厚くなってもいいので、今のスマートフォンでもそうして欲しい。これはマジで歴史的な遺産なのかもしれない......。

(5)Apple「iPhone 5c」





あくまで筆者の私見だが、ベストオブiPhoneを1つ選べと言われたら、このiPhone 5cだと考えている。最大の理由はそのポップなデザインだ。落としても大丈夫そうなプラスチックのデザインが筆者としては好みで、ガラスはどうも割れそうというのがあって、iPhone 5はパスしてこちらを買った記憶がある。ただし、その後後継が出ていないことを考えれば、市場には支持されなかった、ということは否定できないだろう(苦笑)。

(6)NTTドコモ「Xperia SO-01B」





日本で初めて公式に販売されたXperia初号機となるのがこのSO-01Bだ。現在はソニーモバイルコミュニケーションズ(通称ソニーモバイル)となるソニーのスマートフォン事業子会社(当時はスウェーデンのEricssonとの合弁会社としてソニー・エリクソン・モバイルコミュニケーションズとして通称「ソニー・エリクソン」)が製造し、NTTドコモのブランドで販売されていた製品となる。発売当初はAndroid 1.6が搭載されており、最終的にはAndroid 2.1にバージョンアップできた。日本のAndroidデバイス史を綴ることがあれば、絶対に取り上げなければならない一台だと思ったのでここで紹介した。

(7)NTTドコモ「Xperia acro SO-02C」



Xperia acro SO-02Cは4.2型液晶を採用したスマートフォンで、Android 2.3が搭載されていた。元々Xperia arcとして販売された製品がベースになっており、そこへおサイフケータイやワンセグ、赤外線通信などの機能を追加した日本市場特化型モデルだ。筆者はフィーチャーフォン時代からおサイフケータイユーザーで、おサイフケータイがないと生きていけない(既にこの時期から基本財布はカバンの中に入れて、できるだけ使わないようにしていた)ので、当時はこうした日本独自モデルを買っていた記憶がある。

そしてもう1つ覚えているのは、Android 4などがでてもNTTドコモさんは全くアップグレードしてくれず、結局諦めて買い換えた記憶がある......青のカバーが好きだったんですが(苦笑)。

(8)Motorola「RAZR i XT890」





IntelのMedfieldことAtom Z2460というスマートフォン向けSoCを搭載したMotorola RAZRブランドのスマートフォン。2012年に販売開始された製品で、欧州にて購入し海外用のスマートフォンとして利用していた。4.3型OLEDなどの先進的なスペックなのだったが、なぜか内蔵ストレージが8GBというちぐはぐな仕様だったのをよく覚えている。この製品を出すに当たってIntelは「Motorolaと複数年にわたる複数世代の製品を出すという契約をした」と大々的に発表したのだが、結局日の目を見たのはこのRAZR iだけ......その数年後にひっそりとIntelはスマートフォン向けSoCからの撤退を発表したのだった。

(9)マウスコンピューター「MADOSMA Q501」





マウスコンピューターがSIMフリーのWindows Phoneとして日本市場で発売したのがこのMADOSMA Q501。当初はWindows Phone 8.1が搭載されており、後にWindows 10 Mobileへとアップグレードすることができた。この後、FREETELやVAIO、HPなど各社がWindows Phoneを発売したが、プラットフォーマーであるMicrosoft自身がWindows 10 Mobileの終了をアナウンスし、はしごを外してしまうというまさかの展開で夢は夢に終わったのだった、諸行無常。

(10)UQコミュニケーションズ「WiMAX UD01NA」



冒頭の写真にも写っているように、スマートフォン以外にも実に多数のルーターが発掘された。基本的にPCガイな筆者は、PCを持ち歩かないという選択肢はないので、いつでもどんな時でも持ち歩いて仕事をしている。そのため、PCのインターネット回線を確保することがいつでも重要なのだ。ルーターは定期的に買い換えていて、日本ではWiMAXそしてWiMAX2を使うことが多かったが、近年はLTEでの接続が多い。



で、UQコミュニケーションズが日本で初めてWiMAXサービスを展開するときに、モニター期間中に配布された端末がこのUD01NA(NECアクセステクニカ製で、NEC側の型番はD01NAA)。今で言えば楽天モバイルの試用期間みたいなのもので、モニターに申し込んで当選したらこの端末が送られてきた。そのモニター期間中は通信量無料で利用することができ、実際にサービスが始まっても、そのまま利用できたので本契約に移行した記憶がある。ただし、当初はエリアが狭く、使える場所に限りがあった。とはいえ、つながってしまえば大容量の通信ができたので重宝したのを覚えている。


▲今回紹介しきらなかったスマートフォン、フィーチャーフォンやWi-Fiルーターなどなど