現在のリヴァプールで、欧州5大リーグでの優勝経験を持つ選手はジェイムズ・ミルナー(マンチェスター・C時代)、ファビーニョ(モナコ時代)、ジェルダン・シャキリ(バイエルン時代)の3人だけだ。では、セルティックで2度のスコットランドリーグ制覇を達成したファン・ダイクの経験は、どれほど生きるのだろうか?

「セルティック時代とはちょっと状況が違うけど、リーグで優勝すると自分自身とチームをより誇りに思えるようになる。タイトルは、シーズンを通じて続けてきたハードワークの証だ。モチベーションが高まるし、プレミアリーグのタイトルを勝ち取れば歴史の1ページに名を残すことになる。それこそがフットボールをする理由だよ。選手なら誰だってレジェンドになりたいものだ」

 クロップのチームにあって強力な壁となっているファン・ダイクは、すでにその域に達しているという声もあるだろう。このDFは、リヴァプールに鉄のような強さをもたらした。2018年1月、DFとしては破格の7500万ポンド(約109億円)で彼を獲得するまで、リヴァプールは1試合平均1.2失点を許していた。しかし、彼がチームに加わった17−18シーズンの後半戦から数えると、失点は1試合平均「0.8」にまで減っている。今シーズンは前半戦の19試合でわずか7失点だった。

 彼がアンフィールドにもたらしたのは守備力の高さだけではない。「リーダーシップだ」。我々の質問を彼は強い言葉でさえぎった。

「“リーダーシップ”という言葉は、僕そのものを表している。僕のポジションはみんなをリードして模範を示さなきゃいけない。自分でもそうしたいと思っているし、おとなしくしていたことなんてない。気づいたことがあれば、必ず口を開いてそれを伝えている。バスケットボールのレブロン・ジェイムズ(ロサンゼルス・レイカーズ)や、アメフトのトム・ブレイディ(ニューイングランド・ペイトリオッツのクォーターバック)を見てほしい。彼らは生まれついてのリーダーであり、スポーツ界の“オールタイム・ベスト”だ。彼らは日々とてつもないプレッシャーにさらされているだろうけど、チームメートに達成すべきものを示し続け、より高い目標へと駆り立てている。僕は自分自身のベストを尽くすと同時に、周りの選手の力を引き出すための手助けをしているつもりだ」

 だからこそ、彼が今シーズンの初めにチーム投票でリヴァプールの第3キャプテンに選ばれたことに驚きはなかった。実際に、ヘンダーソンとミルナーが欠場した試合では腕章を巻いてプレーしている。

「キャプテンという責任ある役割も好きだよ。オランダのU−18チームでキャプテンをやっていてそう感じた。チームに何が起こっているかを常に察知して選手に語りかける。リヴァプールのようなビッグクラブに来て、1年足らずでキャプテンを任されたのはとても誇らしい瞬間だった」

「ピッチに入って最初の1秒目から彼は素晴らしかった」とクロップは言う。「だけど私は彼がサインするずっと前から、傑出した存在だと分かっていた。プレーのクオリティとリーダーシップの両方がある。それが彼を特別な選手にしているんだ」

リヴァプールの背番号「4」は特別なもの
 ファン・ダイクと対戦したプレミアリーグのフロントマンたちは、彼こそがDFの枠を超えたベストプレーヤーだと思い知らされる。選手だけではない。シティのジョゼップ・グアルディオラもファン・ダイクを絶賛している。「彼は並外れた選手だ。時にはコストに合った働きができない選手がいるが、価値を証明する選手もいる。彼がケガなく3日おきに一貫したプレーができるなら、7500万ポンドを払うだけの価値がある」