新車購入プランと正式な見積書には大きな違いはない

 新車購入商談で値引き交渉を進める、“たたき”となるのが見積書。ふらりと新車ディーラーを訪れ、セールスマンと立ち話程度で気になる新車について話をしていると、セールスマンから「見積りをお作りしましょうか」と言われた経験のあるひとも多いはず。

 しかし、われわれが一般的に“見積書”と呼んでいるものには見積書との表記がなく、“新車購入プラン”などと記された(以下新車購入プラン)、正式な見積書ではないケースがほとんどとなる。個人客向けでは新車購入プランで商談を進めるが、相手が法人ユーザーとなると購入に際して相手方社内での決裁も必要となるため、法人客との商談では購入条件の調整、つまり値引き交渉などは新車購入プランで進め、最終的に条件が固まった時点で正式な書式での見積書が作成されるとのことである。

 しかし新車購入プランと正式な見積書では、諸費用項目などが若干異なる程度で大きな違いはない。ただ正式な見積書ではディーラーの社判捺印がされたりもする正式な書面扱いとなるようだ。

 いま新車購入プランはパソコン端末で作成され、プリンターで印字されたものがほとんどとなっているが、以前は手書きだった。昔のセールスマンはまず新人時代に自動車税や重量税、自賠責保険など諸費用額を覚え、お客の目の前でスラスラと金額を記入し、電卓で素早く計算できるように訓練していた。そして、短時間で手計算により新車購入プランを仕上げるセールスマンの姿に引き込まれるお客も多かった。

 また、ファンシー文具店などで巨大な電卓を購入して、お客の前でおもむろにセールスかばんから巨大な電卓を取り出し、お客が一緒に連れていた子どもを驚かすなどの演出の工夫をするセールスマンもいたようだ。

 しかし、いま一部のメーカー系ディーラーでは、個々のセールスマンレベルでパソコン端末が支給され、商談テーブルでお客の目の前にて入力してプリントアウトまでできるケースもあるが、商談テーブルで希望車種や希望グレード、希望オプションなどを聞いたあとに、客を残して事務所へ行き入力作業を行うディーラーも目立っている。ある意味待ちぼうけをくらうような形となるので、これでは“新車が欲しい”というテンションも急激に下がってしまう。

 新車購入プランは何枚でも惜しみなく作成しなさいとセールスマンは教育を受けているので、複数の希望車種やグレードがあったり、オプション装着で迷っていたら、いくつかのパターンでの複数の新車購入プランの作成は遠慮なくセールスマンに頼んでほしい。

値引きの内容などを手書きで欄外に書き加えられた時は注意!

 また商談の過程で、用品無料サービスなど値引き条件拡大が、セールスマンの手書きで新車購入プランの欄外に記入されることもよくある。そんな時には、“手書き部分を反映して作り直してください”と是非伝えて欲しい。端末入力してデータとして残っていないものは、セールスマンの口約束レベルなど、“私的”なものであることも多く、ディーラー社内で正式に決裁を受けていないケースも目立つ。

 最近は激減しているとされているが、仮に欄外に“カーナビ値引き装着”などと書かれていれば、社員割引でセールスマンが本体を購入し、ディーラーのメカニックにバイト代を払って非公式に装着してもらっているケースもある。こうなると、取り付け時の不具合に対する保証が受けられなくなるなどといったことにもなりかねない。また、“フロアマット無料サービス”と手書きされていて、納車のときに確かにフロアマットはあったが、純正品ではなく用品店で売っているような汎用品であったということも過去にはあったようだ。

 ほかにも、下取り車があるのに新車購入プランや注文書に下取り査定額が印字されない、つまり下取り車がない扱いで商談をまとめようとするセールスマンもいる。このケースでは、セールスマンが下取り車を会社に通さず、個人的に売却して現金化していることが多い。

「下取り査定額相当分は現金でお渡しします」などと言われたら注意してもらいたい。仮に条件は良いのかもしれないが、たいていはセールスマンが業者から受け取った現金から“中抜き”して渡しているケースが大半となる。売却先が悪質業者といったケースでは、名義変更されずに次のオーナーが乗り回しているといったケースの発生も否定できないので、是非注意してもらいたい。

 確実にリスクの少ない値引き条件にするためには、新車購入プランだけでなく注文書でも欄外への手書きでの記入は許さずに、必ず端末入力してもらうように商談を進めていただきたい。端末入力できない条件はディーラーが会社として認めた値引きではないケースが多い。

 それでも構わないという場合にはできるだけリスク回避できるように、例えば「このフロアマットは純正品だよね」と念を押して、“純正品”と手書きさせるようにしてもらいたい。そして、くれぐれも口約束では終わらせないこと。口約束にセールスマンがこだわったら、名刺の裏に用品サービス内容を明記させ捺印させるなどするのも有効。ただ繰り返すが、手書き記入のない、獲得した値引きや用品サービス内容がすべて機械印字されているのがベストであると言っておきたい。