東京メトロは近年、少し離れた名称の違う駅同士を乗換駅に設定。背景には、ネットワーク全体の視点や、有楽町線の課題解決といった目的がみえます。また従来から乗換駅だった駅と、新しくそうなった駅には、大きな違いがありました。

別名駅の乗換駅化を進めている東京メトロ

 2020年6月6日(土)、東京メトロ日比谷線に新駅「虎ノ門ヒルズ」が開業します。その名の通り、複合施設である虎ノ門ヒルズと直結したこの駅は、連絡通路を介して銀座線の虎ノ門駅とも接続し、両駅は開業当日から乗換駅になります。

 また東京メトロは同じく6月6日から、銀座線・丸ノ内線・日比谷線の銀座駅と有楽町線の銀座一丁目駅を「乗換駅」として設定、あわせて、改札をいったん出てから乗り換えまでの制限時間を、現在の30分から60分に延長し、余裕をもって乗り換えができるようにします。


永田町駅と赤坂見附駅は、名称こそ違うものの乗り換え可能(画像:写真AC)。

 銀座駅と銀座一丁目駅は、2018年4月に乗換駅として追加設定された「日比谷線の築地駅と有楽町線の新富町駅」「日比谷線の人形町駅と半蔵門線の水天宮前駅」と同様、いったん改札を出て、地上を経由して乗り換えなければなりません。

 なぜ東京メトロは近年、このような駅を乗換駅に追加設定しているのでしょうか。

新「乗換駅」の先駆けは日比谷線の秋葉原駅と都営新宿線の岩本町駅

 同じ東京メトロの駅ながら、異なる名前の駅が乗換駅となっている例は、都営地下鉄の駅を介して接続している新御茶ノ水駅と淡路町駅、上野広小路駅と仲御徒町駅のほか、赤坂見附駅と永田町駅、有楽町駅と日比谷駅、溜池山王駅と国会議事堂前駅などがあり、路線によっては500m以上の長い地下通路で接続されています。

 一方、距離は近いながらも連絡通路が設置されていない駅の場合は、乗り換えの際、公道を経由する必要があり、案内が十分に行えず迷う可能性があることや、乗り換え中の安全を確保できないという理由から従来、乗換駅として設定をしていませんでした。

 その流れが変わったのは2013(平成25)年3月、東京メトロと都営地下鉄のサービス改善を目的として、日比谷線の秋葉原駅と都営新宿線の岩本町駅が乗換駅に追加設定されてからのことです。神田川を挟んで設置された両駅は駅構内がつながっていないため、開業以来、至近距離にありながら乗換駅に設定されず、同駅で乗り換えても乗り継ぎ割引が適用されない状況が続いていました。


有楽町線の新富町駅と日比谷線の築地駅は、2018年3月に乗換駅になった(国土地理院の地図を加工)。

 こうしたサービスの壁を解消すべく、東京メトロと東京都で協議が行われた結果、両駅が歩道で結ばれており、安全な乗り換えが可能であることから乗換駅として認められることになり、その後の乗換駅の拡大に向けた第一歩となりました。

 東京メトロは2016年に発表した中期経営計画のなかで、築地駅と新富町駅、人形町駅と水天宮前駅の乗換駅化を、また2019年に発表した2021年度を目標年次とする中期経営計画のなかで、虎ノ門駅と虎ノ門ヒルズ駅、銀座駅と銀座一丁目駅の乗換駅化を発表し、乗換駅の追加に乗り出します。その目的は地下鉄ネットワークの利便性向上にありました。

有楽町線の課題解決が目的の場合も 乗換駅は今後も増えるか?

 典型的なのは、人形町駅と水天宮前駅の事例です。これまで日比谷線と半蔵門線には乗換駅が存在しませんでしたが、両駅が乗換駅化することで、地下鉄のネットワークが新たに広がり、利便性が向上しました。


半蔵門線水天宮前駅の乗り換え案内。地上経由で日比谷線人形町駅へ乗り換えられる(2020年3月、大藤碩哉撮影)。

 もうひとつの狙いが、有楽町線の利便性向上です。有楽町線は湾岸方面の再開発にともない利用者が急激に増加しており、2019年度の1日当たりの利用者数は、2009(平成21)年度と比較して28.5%増の116万人でした。これは増加率で見ると、東京メトロ9路線のうち、開業年度の新しい副都心線、南北線に次いで3番目に高い数字です。

 しかし有楽町線の都心東部方面は、有楽町駅で日比谷線・千代田線の日比谷駅と接続したのち、終点の新木場まで東京メトロ線と乗り換えできる駅がありませんでした。そこで、銀座一丁目駅で銀座駅と、新富町駅で築地駅と乗り換えできるようにすることで、都心東部の乗り換え利便性を改善する、というわけです。

 2020年3月の現時点では、上述したほかに乗換駅が追加される予定は発表されていませんが、これらの各駅の利用状況によっては、さらなる検討がなされる可能性もあるでしょう。