カラフルで美しく、味わいも新しいー。洒落た「おはぎ」を扱う店舗が、ここ最近増えている。

昔なつかしい、おばあちゃんが作ってくれたおやつは、いま大きな進化を遂げている。

しかしなぜ、いま「おはぎ」なのか。このブームを牽引する『アトリエフジタのおはぎ』『タケノとおはぎ』『OHAGI3』の3店に話を聞いた。




「個性を出しやすいおはぎは、様々なチャレンジがしやすいお菓子です」(『アトリエフジタのおはぎ』店主 藤田善平さん談)

『アトリエフジタのおはぎ』上段左から「レモンと小豆」「生姜とあんず」「味噌とそばの実」「抹茶と海藻」「ぶどうと小豆」「バラとライチ」6個入り2000円(税込)

『アトリエフジタのおはぎ』は、人気カジュアルフレンチ『アトリエフジタ』が2019年8月に開いた、昼限定のおはぎ専門店だ。

上質な旬の食材だけを使い、アーティスティックな盛り付けで料理を提供する人気レストランが、なぜ「おはぎ」を作ることになったのか?

オープンの経緯を聞くと、「面白く、独自の物販ができればと思い、おはぎにたどり着きました」と、店主の藤田善平さんが教えてくれた。




「おはぎは、作る人や家庭によって形や大きさ、味わいに違いがあるナチュラルで自由なお菓子なんです。そのため、おはぎはそれぞれの個性を出しやすい。そこで、和と洋をミックスした自由な料理を提供する『アトリエフジタ』の良さを、おはぎなら表現できるのでは考え、作り始めました」(藤田さん)。

その想いは、確かに『アトリエフジタのおはぎ』のおはぎに表れているように感じた。

「バラとライチ」、「抹茶と海藻」など意外な素材同士の組み合わせの妙や、コントラストの美しい色合い、トッピングの面白さ。これら全てが斬新で、『アトリエフジタ』らしい表現となっている。



『アトリエフジタのおはぎ』「バラとライチ」350円(税込)


「『ピエールエルメ』のマカロンのような、華やかさをイメージして作った」という「バラとライチ」はとりわけ美しさを放つ一品。

バラの香りと相性の良いライチを使い、味に膨らみを持たせ、同じくバラ科のラズベリーパウダーのほどよい酸味がバランスを整える。

おはぎとバラ…。このミスマッチにも思える組みあわせに興味をそそられずにはいられない。



『アトリエフジタのおはぎ』「レモンと小豆」350円(税込)


定番のあんこのおはぎも、『アトリエフジタ』の手にかかればこうなる。

白ワイン、レモンピール、カルダモンを使用した、爽やかでスッキリしたあんこが特徴の、キレの良い味わいが楽しめる。

「もう一種のあんこを使ったおはぎ≪ぶどうと小豆≫は赤ワインを使った、まったりとした仕上がりです。あんこを食べ比べるのもおすすめです」(藤田さん)




かわいらしい木箱も人気のひとつ。受け取った人をワクワクさせる。

紐を解いて、箱を開けると従来のおはぎの概念を覆す宝石のようなおはぎに、思わず誰もが笑顔になってしまいそう。


この「おはぎ」はココで買える!


『アトリエフジタのおはぎ』

代々木上原駅前の北欧風のお洒落な空間で、日本酒とともに食事を楽しむことができる『アトリエフジタ』。

おはぎは10時から販売開始し、なくなり次第終了となる。(4月は水、木曜日定休。10:00〜17:00の営業に変更。詳しくは店舗にお問い合わせを)


伝統と革新!おはぎは新旧ハイブリットの美味しさが楽しめるお菓子だった!


「伝統と革新。この両極が叶う!おはぎを作り続ける理由はココにあります」(『タケノとおはぎ』店主小川寛貴さん)


ワインに合うデリカテッセンを経営していた小川寛貴さんが、お祖母様の作るおはぎの美味しさを伝えようと2016年@月にオープンした「タケノとおはぎ」。おはぎブームの原点となった店と言っても過言ではないだろう。

小川さんが総菜作りで学んだ食材の知識をおはぎに活かし、ドライフルーツやハーブ、スパイスなどさまざまな食材と掛け合わせた"進化系おはぎ”を生み出す。

「”祖母の美味しいおはぎを食べてもらいたい”という思いが原点となりました。おはぎは、時期の花や季語になりうるものが表現できるお菓子です。日替わり定食のように1日1日の旬や季節を楽しんで頂きたいです」(小川さん)



『タケノとおはぎ』「つぶあん」180円(税込)


北海道産大納言小豆を使用し、かなり甘さ控えめの「つぶあん」は、オープンのきっかけになったお祖母様のレシピ。

「小豆本来の美味しさを味わえるように、毎朝炊き上げたあんこを使用しています」(小川さん)

シンプルなおはぎは必食だが、趣向を凝らした日替わりのおはぎも美しい。

リピーターの絶えない『タケノとおはぎ』は、なんとレパートリーが80種以上ある。どんなおはぎに出会えるかは一期一会の出会いだ。



『タケノとおはぎ』「ミモザ」310円(税込)


お花のような美しいビジュアルで人気を博すのはカクテルのミモザから発想を得た「ミモザ」。

「オレンジのシャンパン煮を中にしたため、オレンジピューレを練りこんだ白あんでデコレーションしています」(小川さん)




3個、5個、7個と奇数個購入すると、愛らしい曲げわっぱに入れてもらえる。蓋を止めるマスキングテープも選べるため、自分好みのパッケージを楽しむことが出来るのも嬉しい。

最高に見栄えするおはぎは、SNSでの発信ゴコロをくすぐられるだろう。


この「おはぎ」はココで買える!

『タケノとおはぎ』

購入できるのは桜新町と学芸大学の2店。

定番の「つぶあん」と「こしあん」の他、日替わりで異なる5種のおはぎを加えた7種販売。


おはぎブームはインバウンド需要?ワールドワイドな発想に至った理由とは?


「伝統と新しさを融合したOHAGIは、外国の方にも興味を持ってもらえると考えました」(『OHAGI3』浅草店 店主 舘林智さん談)

『OHAGI3』左奥から時計回りに「暁月」「満月」「半月」「新月」各220円(税込)


名古屋で人気を博し、2019年8月に東京進出を果たした『OHAGI3』。

可愛らしい見た目ながら味も本格派、そして、おはぎのパフェなど新しいスイーツを発信することも注目されている。なぜ、そこまでおはぎを愛すのだろうか?

浅草店店主の舘林智さんは、「おはぎは、日本伝統のお菓子でありながら、販売しているお店が意外と少ないように感じていました。私たちは、おはぎが美味しいのに、手に入りにくいことをもどかしく感じていたんです。

また、日本人のみならず、外国人の方にも興味を持っていただき、気軽に日常の中で召し上がっていただきたいと思い、店名を英字表記しました」と、おはぎに懸ける思いを語ってくれた。

全て無添加にこだわりぬき、手作りの温かみを大切にしたおはぎ。定番8種に加えて、毎月1種、季節限定が登場し、季節感も重視している。



『OHAGI3』「暁月」220円(税込)


中心部の赤米や黒米などを混ぜて炊いた雑穀ご飯は、雑穀のプチプチ感とふんわりほどけるようなお米の存在感が楽しめる。

「あんこは甘さ控えめに仕上げていますので、小豆本来の風味を味わえますよ」と、舘林さん。つぶあんの「暁月」は『OHAGI3』の中でも一番人気の定番商品だ。



『OHAGI3』「半月」220円


つぶあんと、白いんげんから作った白あんを半々に使った「半月」は、ちょっと贅沢なおはぎ。

『OHAGI3』のお膝元・愛知県は西尾産の抹茶が彩と豊かな香りを添えてくれる。一口ごとに変化する味で、ついつい無言で食べてしまう一品だ。

「おはぎはお米の食感が楽しめるように軽めにつぶし、やさしく握られています。手作りの温かみもご賞味いただけたら」(館林さん)




おはぎは3個から購入可能。箱から色とりどりのおはぎが登場すると、歓声が上がる。

4個入り、6個入りの箱は、取っ手部分に割り箸が使われていて、取り分ける時にも使えるアイデアが素敵。持ち運ぶ時もおはぎの水平を保ちやすい。


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『OHAGI3』

都内では浅草店で購入できる。店舗ではおはぎに合わせてブレンドしたプレミアムコーヒーや、抹茶ラテなどのドリンクも提供している。



見栄え良し、味良し、食感良し!なじみ深さと新しさを兼ね備えた進化系スイーツ

日本人の生活に長らく根付いた、庶民のごちそう「おはぎ」。

今回お話を伺った3店は、いずれも伝統を大切にしながら、新しい要素を取り入れてより魅力的にしようというスタイルが垣間見えた。

大きさも、色も、味もそれぞれ。形式張らずに、これからも進化していくお洒落なおはぎにまだまだ目が離せない。