坂本は堂上直倫の外れ1位で巨人に指名されて大活躍

 ドラフト会議のファンの醍醐味といえば、やはり1巡目指名。目玉になっている大物ルーキーは一体どの球団が指名するか、そして贔屓の球団の1巡目指名は誰になるのか。その瞬間は、静まりかえり、そして緊張感に包まれる。

 そして複数球団の競合となれば、またクジ引き独特の緊張感となる。各球団の代表者が封筒を引き、中からくじを引き出す。そのドキドキとワクワクは堪らないものだが、クジを外した際には、やはりファンにとっては落胆の瞬間となるだろう。

 ただ、ドラフト1巡目指名のクジに外れたからといって、ドラフトが失敗に終わるわけではない。そこからやって来る“外れ1位”の指名。これが結果的には“大当たり”となったケースも数多くある。

 過去の“大当たり”だった外れ1位の例を見ていこう。

 まず真っ先に思い浮かぶのが、2006年の巨人・坂本勇人内野手だろう。この年、巨人は1位で堂上直倫内野手に入札。3球団競合で外すと、同じ高卒遊撃手の坂本を指名した。ただ、それから14年。坂本は球界トップの遊撃手となり、最年少での2000本安打にも近づく、まさにスター選手となった。

 この年は斎藤佑樹投手をシンボルとする“ハンカチ世代”が高校3年生で田中将大投手らが高校生ドラフトで指名された。坂本のほか、ソフトバンクは大嶺祐太投手を外して福田秀平外野手を、西武は増渕竜義投手を外して木村文紀外野手(指名時は投手)が入団。福田はFAを行使して今季からロッテへ、木村は野手に転向して西武の主力となっている。ちなみにこの年、唯一、重複せずに単独指名したのが広島。1位指名したのは、現ツインズの前田健太投手だった。

斎藤佑樹、塩見貴洋の“外れ外れ1位”での指名だった山田哲人

 もう1人、“大当たり”だった外れ1位を挙げるならば、やはりヤクルトの山田哲人内野手だろう。この年は先に挙げた”ハンカチ世代”が大学4年生となりドラフト指名となった年。斎藤や大石達也らが注目を集め、競合も多数生まれた。ヤクルトはまず斎藤を、“外れ1位”で塩見貴洋投手を外した。“外れ外れ1位”で指名したのが高校生の山田哲人内野手だった。

 プロ入り後の成績はご存知の通り。プロ野球史上初となる3度のトリプルスリーを達成するなど好成績を残しており、結果的には、この年で指名された12人の中で最も“出世”したドラフト1位選手となった。

“外れ1位”が大豊作となったのは2018年だ。この年は藤原恭大、根尾昂、小園海斗の高校生3人に人気が集中。松本航投手を指名した西武以外の11球団はこの3人の誰かで競合した。外れ1位でも辰己涼介に4球団、上茶谷大河投手に2球団が入札する、競合が数多く発生するドラフトになった。

 そして、藤原を外した楽天は辰己、藤原と辰己を外した阪神は近本光司外野手を指名。小園を外したDeNAは上茶谷、小園と辰己を外したソフトバンクは甲斐野央投手が、根尾と辰己を外した巨人は高橋優貴投手が入団した。彼らは1年目から活躍し、それぞれチームに大きく貢献した。

 このほかにも、2005年、辻内崇伸投手の外れ1位だったオリックス岡田貴弘外野手(T-岡田)が後に本塁打王を獲得。2014年のDeNAは有原航平投手を外したが、守護神・山崎康晃投手が入団し、2017年のヤクルトは清宮幸太郎内野手を外して村上宗隆内野手が加入している。こう見ると、外した1巡目指名選手よりも外れ1位で入団した選手の方が結果的に活躍したケースも数多くある。(Full-Count編集部)