新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、くしゃみ・せきなどによる飛沫感染や接触感染で感染が広がる病気です。それゆえ世界の保健機関は、感染の拡大を防ぐために社会的距離を2メートル以上に広げるべきと強く推奨しています。しかし、マサチューセッツ工科大学(MIT)の研究者は「2メートルでは不十分。8メートル以上離れる必要がある」という研究結果を発表しました。

Turbulent Gas Clouds and Respiratory Pathogen Emissions: Potential Implications for Reducing Transmission of COVID-19 | Infectious Diseases | JAMA | JAMA Network

https://jamanetwork.com/journals/jama/fullarticle/2763852

Coronavirus germs can travel up to 27 feet, MIT researcher says

https://www.usatoday.com/story/news/health/2020/03/30/coronavirus-social-distancing-mit-researcher-lydia-bourouiba-27-feet/5091526002/

MITのLydia Bourouiba氏は長年にわたって呼気(くしゃみ・せき)の運動力学を研究してきた人物です。Bourouiba氏が新たに発表した研究によると、くしゃみに際して口から放たれる液滴は「ガス状の雲」となり、最大で秒速10メートル〜100メートルに達し、8メートル先まで届く可能性があります。

以下のムービーを見ると、人の口から放たれる液滴の勢いがよくわかります。

くしゃみをした直後、口から50cmの範囲にこれだけの液滴が飛散します。



この液滴はガス状の雲に変化して110cm以内に拡散し……



最終的には8メートルの距離にまで達します。



Bourouiba氏は、世界保健機関(WHO)とアメリカ疾病予防管理センターなどのガイドラインが「ウイルスが『大きな液滴』のみを介して拡散し、『大きな液滴』は拡散距離に限界がある」という考えに基づいていると指摘。「大きな液滴がガス状の雲に変化して8メートル先まで届く」という今回の結果が医療用個人保護具(PPE)の必要性に関するガイドラインの改訂をすぐにでも行う必要があることを示したと主張しています。

一方、感染症の専門家であるワシントン大学医学部のポール・ポッティンガー教授は、問題はあくまで大きな液滴だという見方を示しています。ポッティンガー教授は「新型コロナウイルスの最大の脅威は大きな液滴、誰かがくしゃみをしたときに口から放たれる雨粒のような飛沫だと考えられます。このサイズの液滴は大きさゆえに重力の影響を受けやすく、通常の飛距離は6フィート(1.8メートル)内にとどまります。WHOなどのルールはこのことを論拠にしています」とコメントしました。