この冬の記録的な雪不足で、雪解け水が足りなくなり、今年の水田農業に影響が出る恐れが出てきた。異例の暖冬の影響。稲作農家からは「代かきができるかどうか、危機的な状況」との悲鳴も上がり始めた。農業用ダムやため池の貯水量を調べる県もある。水不足になるかどうかは4月以降の雨量次第だが、過去にない“災害級”といえる少雪だっただけに、水田地帯の農家は不安を募らせている。

対策、工夫も限界 長野県飯山市


 日本有数の豪雪地帯、長野県飯山市。平年ならば3月末でも深さが1メートル近く残っている水田の雪が、今年は全くない。水稲を40ヘクタールで栽培する金崎和昭さん(72)は険しい表情を浮かべる。「この地域の米作りは雪解け水が頼りだが、誰も経験したことのない少雪。水不足が心配。雨が降らなければ、代かきすらできないかもしれない」

 金崎さんは例年、4月半ばから苗作りを始め、5月には代かきを行い、同月半ばに田植えをする。農作業には、ため池に貯留した雪解け水を活用する。しかし今年は、地元の100歳近い農家でも「記憶にない」と言うほどの少雪だ。米作り50年のベテランで、地域の水田農業を担う金崎さんも、今後の営農計画を見通せないという。

 金崎さんは受益面積1140ヘクタール、組合員1975人を抱える下水内中部土地改良区の理事長だ。過去の水不足では、ポンプを貸し出して河川から水をくむ、順番に限られた時間だけかんがいする「番水」をする、といった地域ぐるみの対策で何とか乗り越えてきた。しかし、水不足で取れる対策や工夫には限界がある。

 毎年のように暖冬や極暑が続き、金崎さんは「豊富な雪解け水を当たり前に使っておいしい米を消費者に届けてきたが、水は限られた資源だということをつくづく痛感する。これからの農業は水を巡る大変な時代になるのではないか」と危機感を吐露する。

過去92年で最も少なく


 飯山市の久保田秀和さん(68)は飯山観測所や飯山アメダスの情報を基に、毎年11月1日〜4月30日の同市の積雪データを記録し、営農などに役立ててきた。期間は1927年からの昭和、平成、令和にまたがる。

 これまでに、32年や72年、2007年などの少雪の年はあるが、過去92年で19年度が最も積雪が少ない。グラフにすると、異常に少ないことが一目瞭然だ。


久保田さんが作成した昭和、平成、令和の積雪量に関するグラフ。一目で今シーズンの積雪量が分かる

 代かきや田植えの時期に水が足りなくなるかどうかは、今後の降雨量に左右されるため、「まだ分からない」と久保田さんは冷静に見通す。

 しかし、「今年は災害に匹敵する雪不足で、影響は大きいと考えられる」と警鐘を鳴らす。

ダム貯水量を警戒


 雪解け水を農作業に活用してきた地域では、今後の水不足に不安を募らせている。関東甲信地方では3月末にまとまった雪が降ったものの、雪不足の解消には程遠い。

 組合員3600人の富山市の常西用水土地改良区の理事長、中川忠昭さん(70)は「水稲が主体の産地で、農業用水の確保は欠かせない。4月半ばから大量に必要になるが、山に雪がないので心配している」と懸念する。

 新潟県は2月、「少雪に伴う営農対策に関する情報連絡会議」を開いた。気象台などの関係機関と情報共有を綿密にしており、農業用のダムやため池の貯水状況を調査し続けている。県によると、貯水が目立って足りない状況にはないが、河川の流量が減れば、河川から取水する農家に影響が及ぶという。県は、水漏れしないように用水路や畦畔(けいはん)の亀裂の修繕や、水を使う時期を分散させるために代かきを早めに行うなどの注意喚起を強化していく。

 新潟市の亀田郷土地改良区は「近年では、水不足が農家の話題になることが増えてきた。万が一の場合の対応を役員と話している」と説明する。

降雨当てにできず 気象庁1カ月予報


 気象庁によると、昨年12月以降、本州付近への寒気の南下が弱く、冬型の気圧配置が続かなかったため、全国各地で雪が少なかった。2019年11月から3月末までの累積降雪量は、新潟市で平年比2%、富山市9%、鳥取市9%など少雪となった。全国の広い範囲で平年比5割以下の記録的な雪不足だ。 同庁が2日に発表した1カ月予報では、5月3日まで降水量は全国的に平年並みの見通し。気温は高くなる。同庁は「雪解け水不足を解消するほど雨が降る可能性は見通せない。各地域で厳重に貯水を注意してほしい」と呼び掛ける。