こんにちは。
「人に物を売り込んだり、商品を営業したり…」そういう仕事とは距離を置いて、10年近い社会人生活をインターネットの片隅でひっそり目立たずに過ごしてきた井指(いさし)と申します。

仕事でプレゼンを終えて「もっと上手い伝え方があった気がするなあ…」と毎回反省している僕に、夢のような仕事が舞い込んできました。

“物を売るプロ”である実演販売士さんに「やばいくらい物が売れるプレゼン」を学べる、一日限定の弟子入りが許されたのです。
「ほらー!こっちこっち!早くーーーーー!」
「いきなりテンション高っ」
「実演販売士のナックル井上です。聞いてるよ〜!君でしょ君でしょ!プレゼン嫌いを克服したいのは」
「(クセがすごそうな人だ…)そうなんです。さっそくなんですけど、ナックルさんはどんな物でも売り込めるんですよね?」
「洗剤、チョッパー、スライサーからマイクロファイバーまで、僕に売れない物はないですね。任せてください」
「すごい…! じゃあ、形のない物でも売ることはできるんですか?」
「もちろんですよ!そうですね…形のない物……電気なんてどうですか?」
「で、電気…!それが売れたらなんでも売れそう…」
「そうです!!私に売れない物はないんですよ」
「すげえ………………で、この方は…?」
「電気をつくっている会社『J-POWER』の小森さんです。どんな商品を売るためにも最初のヒアリングは重要ですからね!呼んでおきました!」
「どうも、小森です」
「J-POWER…この前ライブドアニュースで見た!用意周到すぎるだろ!!」
※「できたての電気を求めて、秘境のダムに行ってきた」はコチラ
最後まで話を聞いてもらうコツってあるの?
「そもそもなんですけど、最後まで興味を持って話を聞いてもらうのに苦労するんです。最後まで聞いてもらうコツってありますか?」
「…実はね、絶対に話を聞いてもらえる魔法の言葉があるんですよ」
「えーー!めちゃめちゃ知りたい!!」
「それは『1分でいいから話を聞いてください!』です」
「は、どういう意味ですか?」
「結果、1分を過ぎてもいいんです。『1分ください』→『はい』という流れを作ることで、プレゼン相手と『聞く、聞いてもらう』のお約束ができる。つまり、聞いてもらう態勢作りが大事なんです。例えば、スマホの機種変する時ってすごく長い説明をされるじゃないですか」
「あーありますね」
「あれも、『これから10分だけお時間ください』などの言葉で最初に時間を区切ることで、お客さまが話を聞いてくれる確率が飛躍的に高まるんです」
「やー本当にそうだなあ…心当たりがありすぎる……」
プレゼンを構成するのに大事なことは?
「話を聞いてもらうための準備を整えたうえで、具体的にどう話していけばいいんでしょうか?」
「きましたね!どんな物を売るのにもまずは『三感』が重要です!」
「(めっちゃ顔キメてきたな…)で、その三感とは??」
「共感!実感!感動!の『三感』です。この要素を満たして、順番にプレゼンするだけで飛躍的に買ってもらえる率が高まるんです!!!!!!」
「えっと、じゃあ共感ってのは例えば?」
三感の1つ目:「共感」を作るためには?
「商品のあるあるネタ、よくある悩みなどを話して共感を得ます。そうですね…電気の場合、どんなあるあるネタがありますか?」
「うーん、『電気は当たり前にある』って思われがちな気がします」
「たしかに、電気はあって当たり前に思ってしまう存在です。どこかでつくられている物だなんて気にしたこともなかった」
「それです、それ!まずは多くの人が共感する“あるある”を客観的に話すことが大事なんです!」
「なるほど…聞き手が共感する物を最初に出してプレゼンへの関心を引くんだ!」
「『共感』でプレゼン相手から引き出したい反応としては、さっきの井指さんの反応通りで『うんうん。たしかに』とか『そうそう!私もそんな悩みある!』とかそういう感じです」
「あーもう1つ!私は『電気職』なんですが、子どもから『仕事は何をしているの?』と聞かれて、『おじさんは“電気屋”だよ』と答えると、家電量販店で働いている店員さんに間違えられるんですよ。『電気そのものを作っている』と捉えてもらえなくって…」
「なるほど!”電気屋さんあるある”なんですかね。小森さんたち電気職の苦労が伝わってくるエピソードです…」
三感の2つ目:「実感」を作るためには?
「次の『実感』は、さきほど共感してもらったあるあるネタをひっくり返すプロセスになります」
「ひっくり返す…?とは???」
「例えば、『あるのが当たり前』に思われがちな電気を安定供給するために、現場で取り組んでいることはありますか?」
「そうですねえ…まず電気はたくさん貯めることができないので、24時間・365日、必ずどこかの発電所では電気をつくっています。それに、需要に合わせて発電をしなければいけません。多すぎても少なすぎてもダメなんですよ。私の働いている水力発電所では、需要に合わせて発電機を動かしたり止めたりしているんです。そういうことって意外と知られていないですよね?」
「ですね。そんな細やかな運用がされているとは初めて知りました」
「だから発電所では、発電機を運転する人だけでなく、“保守する人”も必要なんです。要は『必要ならいつでも運転できますよ』という状態に発電機や予備の機械を保っておかなければならないんです。常日頃の点検や、何年かに一度の大きな分解点検もあります。当然、運転中・停止中に関わらずトラブルがあれば、昼夜・盆正月問わず連絡がきて、すぐに保守作業に取り掛からなければならなかったりもします」
「うわーそんなに大変なご苦労をされているんですね…いつも当たり前にある電気に感謝しなくちゃな…」
「そうそう!そういうことです!電気の安定供給のためにこんなに大変なことを毎日地道に現場の方がやっていらっしゃる!そのおかげで当たり前に電気を使えているわけじゃないですか!」
「僕らが何の生産性もないインターネットサーフィンを存分に楽しめる裏には、小森さんたちの努力があるわけですね…」
「こうして『電気はこんなにも大変な苦労の末に得られているものなのだ!』というエピソードを伝えると、“共感”を得るあるあるネタとして挙げた『電気が当たり前にある状態』がひっくり返って『実感』に繋がりますよね」
「なるほど!」
三感の3つ目:「感動」を作るためには?
「『実感』パートであるあるネタをひっくり返した上で、さらに『なるほど〜』『すごーい』と持っていきたいプロセスがここです。『感動』パートは興味を持ってくれた商品に『さらに!』『さらに!』と興味を重ねていくことが重要です」
「具体的にどんな情報を重ねていけばいいんですか?」
「今回は電気を売りたいので、もっとプレゼン相手に『なるほど〜』『すごーい』と思ってもらうための情報を打ち込んでいきたいですね」
「ふむふむ」
「小森さん、さっき教えてもらった電気の安定供給のための日々の現場の努力以外で、J-POWERさんはどんなことをしているんですか?」
「うーん実は、J-POWERは日本全国に約100ヶ所の発電所があるんです。私が担当している水力発電から、風力、火力、地熱、あとはバイオマスっていう生物由来の資源を燃やすものまで様々な形で発電をしています。『どの発電が一番いい!』ということではなく、これら諸々を組み合わせてベストな発電を目指しているわけです」
「約100ヶ所の発電所!!いいですねえ…。そういえば最近、発電所は絶景が多いと聞いたこともあります。ほかに…あー例えば海外向けの取り組みはあるんですか?」
「半世紀以上前から、海外でも電源の開発や環境保全のために技術協力をしていますよ。基本的には国内で取り組んでいる発電方法を海外でもやっていて、一番大事なのは、保守の仕方を教えることですね」
「ほう…それはまたどうして?」
「『発電所を作ってはい終わり!』ではダメなんですよ。…やはりそれでは、うまくいかないんですよね。その後どのようにメンテナンスしていくのかまでを現地のスタッフに指導し、現地でトラブルが発生してもしっかり保守・運用できるようにする。それができて初めて現地でもうまく回るようになる。そこまで持っていくのが我々の仕事だと思っています」
「なんか某職人密着型ドキュメンタリー番組みたいになってきたぞ…。小森さんかっこいい……!海外でも電力開発して、その仕組み作りまでやって…世界中で役立っているんだな…。ちょっと感動してきた……」
「よし、できましたね。今出してもらった「共感、実感、感動」の3つを順番にアピールしていくと、買う買わないは一旦別として、とにかく『話を聞かせる』ことができる確率がメチャクチャ上がるんですよ!」
「たしかに『そもそも電気は当たり前のものじゃない!』って気づきから、電気を当たり前にするために影で働いている人たちの努力の結晶みたいな話まで聞いて、どんどん引き込まれてるもんな…学びがすげえぞ…」
物を売り込む最後の一手、クロージングのポイントは?
「ここまでの流れで、最後まで話を聞いてもらう構成はすごく納得しました。ただ、ここからどのように聞き手の気持ちを『よし買おう!』『契約しよう!』という風に持っていくのでしょうか?」
「いいところに気付きましたね!通販番組の最後を思い出してほしいんですけど、よく『本日限り●%OFF!』とか『●●も付いていくら!』とか『今から30分間だけこの価格!』みたいなの見たことありますよね?」
「あーはいはい、よく見ますねー」
「あれってね、『買うべき理由』や『買う言い訳』をつくって、お客さまの背中を押してあげるためのものなんです。これでクロージングはバッチリです」
「うわーーーー!そんな効果が!なるほど。ナックルさんが使う鉄板パターンはありますか?」
「そうですねー、変な話、『このプレゼン通って御社から発注もらえたら、僕ボーナス上がるんですよー』とかでもいいんですよ。関係性にもよりますが、『しょうがねえな、発注してやるよ(笑)』みたいな空気になることもありますよね?」
「こんなに納得することないわ。うなずきが止まらん」
「三感からクロージングまでをまとめると、こういうことです」
「おおおおおお!まとめるとすごくわかりやすい!!!!!!」
「では、このポイントを踏まえつつ、電気のマメ知識も盛り込んだ通販番組風の実演販売をやってみましょうか!」
「なんかすごいのが完成してしまった…」
「ちょっとアレンジ加えすぎたかもしれません(笑)」
「ナックルさん、このようなプレゼンの型には『完成形』があるんですか?」
「売り文句の型のことを業界では「卓」と呼んでいて、これは目的や目標に応じてブラッシュアップしていくものです。ビジネスパーソンの仕事で例えると、「電話でアポを1時間10本取る」のが目標だとしたら、それを達成するまで卓を改善し続けるんです」
「すげえなあ…」
「さて、どんな仕事をする人も、プレゼンや、何らかの目標を達成するために、誰かを説得したり話を聞いてもらう機会が訪れると思います。その時には、共感!実感!感動!の『三感』を意識して話を構成してみてくださいね!」
今回の学び
ナックルさん直伝のプレゼン術は、多くの社会人に役立つ内容でした。めちゃめちゃ物を売る達人は、そのカリスマ性だけを武器にしているわけではなくて、その裏には緻密な論理と、電力開発くらい地道な日々の努力があったわけです。

なかなかアポが取れない、思うように商品を売り込めない…。僕のように日々頭を抱えているビジネスパーソンの方は、ぜひこの記事を繰り返しご覧いただき、そのエッセンスをプレゼンやセールストークに取り入れていただければと思います。

いやー…それにしても、プレゼン術が学べた上にJ-POWERさんにも興味が湧いちゃうとか、実演販売士はやっぱりすごいし、ナックルさんはさすがっすわ…。
今回お世話になったのは…
J-POWER(電源開発株式会社)
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1952年の創立以来、約70年にわたり日本と世界で電気をつくり送り届けている。水力、火力、風力、地熱などさまざまな形で全国に約100カ所の発電所を保有。また、海外でも発電事業や技術支援を積極的に行っている。