キハ261系「スーパー北斗」。3月のダイヤ改正で「北斗」に(写真:Jun Kaida/PIXTA)

2020年3月14日、JRグループでダイヤ改正が行われる。このダイヤ改正で引退する車両は1月8日付記事「3月ダイヤ改正、JRのどんな車両が引退するのか」で紹介したが、JR北海道ではこのダイヤ改正に合わせて特急列車の名前を見直し、「スーパー◯◯」という列車名を取りやめることを発表している。

具体的には「スーパー北斗」「スーパーおおぞら」「スーパーとかち」の「スーパー」を外し、「北斗」「おおぞら」「とかち」に改めるというものだ。JR東日本でも「スーパービュー踊り子」の引退で、偶然ながらJR東日本の特急列車からも「スーパー」が消えるが、そもそも「スーパー北斗」などの「スーパー」にはどんな意味があったのだろうか。

JRの特急ばかりの「スーパー◯◯」

「スーパー◯◯」と付く列車の名前は、消えたものを合わせると20あまりあり、大半がJRの特急列車ばかりだ。先のJR北海道のほか、JR東日本の「スーパービュー踊り子」やJR西日本にも「スーパーはくと」のように「スーパー◯◯」と名乗る列車があり、かつてはJR九州にもあった。

JRの特急列車の中で、最初に「スーパー」と名乗った列車はJR九州の「スーパー有明」としてよいだろう。1988年3月のダイヤ改正で、おもに博多から熊本・鹿児島方面を結ぶ列車だった「有明」のうち、停車駅の少ない速達列車に「スーパー有明」と命名し、ほかの「有明」と差別化を図ったものだ。

続いて1989年にJR東日本で「スーパーひたち」が登場したが、これは常磐線の特急「ひたち」に新型車両(651系)を投入してスピードアップを図ったので、651系を使用する列車に対して「スーパーひたち」と命名し、ほかの「ひたち」と区別した。同じタイミングでJR西日本では北陸方面の特急「スーパー雷鳥」が登場、車両(485系)のグレードアップと列車のスピードアップを図ったものだ。また、JR北海道では1990年に「スーパーホワイトアロー」が登場、新型車両(785系)の投入とスピードアップを図ったものだ。

JRでは、新型車両やグレードアップ車両を導入した際に「スーパー◯◯」と命名するケースが圧倒的に多く、例として常磐線では「スーパーひたち」と「ひたち」、中央線では「スーパーあずさ」と「あずさ」、伊豆方面では「スーパービュー踊り子」と「踊り子」、北陸方面では「スーパー雷鳥」と「雷鳥」があった。同じ路線を走る特急でも車両やスピードが異なっていたので、車両やスピードが上位の列車に「スーパー◯◯」命名して違いを明確にしたわけだ。

現在、常磐線の特急では速達型の「ひたち」と主要駅停車型の「ときわ」が走っているのだが、速達型の列車を「スーパーひたち」とすれば、名前を聞いただけで「スーパーひたち」の方が速いと直感的にわかるのかもしれない。昔の話をすると、常磐線の特急が「ひたち」で、特急より格下の急行が「ときわ」だったから、昔のことを知っていると「ひたち」と「ときわ」の違いが明確で、オジサンな筆者は「スーパーひたち」よりもなじみのある「ひたち」と「ときわ」を選んでしまう。

このほか、JR北海道の「ホワイトアロー」(現在の「カムイ」に相当する列車)がすべて「スーパーホワイトアロー」となったり、JR西日本の「おき」が「スーパーおき」になったりしたケースでは、車両の置き換えとスピードアップが伴っていて、新しくなった・スピードアップを行ったことを明確にしていた。

だんだん厄介になる「スーパー◯◯」

ところが、時代が進むにつれ、列車名が表すものと実態が合わなくなった。JR北海道では車両とスピードの違いで「北斗」と「スーパー北斗」を使い分けていたが、車両の置き換えで全列車が「スーパー北斗」になってしまったほか、「スーパーとかち」は個室車両を連結してグレードアップした列車に命名したものが、2001年に振子気動車を投入して速達列車が「スーパーとかち」と名乗るようになり、車両の置き換えが進んだ後に「スーパーおおぞら」とともに全列車が「スーパーとかち」でそろってしまった。

JR東日本の「スーパーあずさ」でも、車両を中央線の特急車両をE353系に統一したことで「あずさ」と変わらなくなってしまい、車両の統一に合わせて2019年3月のダイヤ改正で「スーパー」を外している。

JR西日本では、グレードアップ・リニューアルを施した列車に「スーパー雷鳥」や「スーパーくろしお」と命名したものが、後に新型車両を投入したことで、新型車両の使用列車に対して「スーパー雷鳥(サンダーバード)」「スーパーくろしお(オーシャンアロー)」という、長くて舌をかみそうな名前になってしまった。1997年のダイヤ改正で「サンダーバード」と「オーシャンアロー」に改めたが、今度は「雷鳥」「スーパー雷鳥」「サンダーバード」と「くろしお」「スーパーくろしお」「オーシャンアロー」の3つずつに増えた。車両の置き換えの進行で2001年に「スーパー雷鳥」が消え、2011年に「雷鳥」が消えて「サンダーバード」への統一を見たが、「くろしお」の方は車両の置き換えと合わせつつ、2012年のダイヤ改正で「くろしお」に統一して元に戻している。

いずれのケースも「スーパー」と呼び分ける必要性が薄れたもので、「スーパー」を外してシンプルな名前に戻したほうが正解であろう。

「スーパー◯◯」がないJR東海とJR四国

JR東海とJR四国では「スーパー◯◯」と名乗る列車がないほか、JR九州でも短期間で「スーパー」をやめてしまったが、国鉄が分割民営化されて会社ごとの個性が出た結果だろうか?

JR東海では、車両の置き換えに際して「(ワイドビュー)ひだ」など、列車名に「ワイドビュー」をカッコ書きで加えているが、切符の方は「ひだ」のままで、こうすることで切符を用意する側の手間を省いているところが手堅い。

JR四国では車両の置き換えやスピードアップを行ったものの、列車名には手を付けていない。岡山・高松―徳島間を走る「うずしお」では4種類の車両が使用されているうえに速達型の列車もあるのだが、列車名を分けていない。

JR九州では1990年3月のダイヤ改正で「スーパー」の使用をやめ、当時の新型車両783系の使用列車に対して「ハイパー有明」のように「ハイパー」を付けて区別した。現在では「ゆふいんの森」のような観光列車を除き、車両によって列車名を使い分けるやり方をやめている。

JRの特急列車以外でも「スーパー◯◯」と名乗る列車があるので、参考として紹介しておく。小田急電鉄では、特急ロマンスカーの列車名として1996(平成8)年3月のダイヤ改正で「スーパーはこね」が登場したが、これは特急ロマンスカーの停車駅見直しと合わせて小田急線内ノンストップの列車を「スーパーはこね」としたものだ。

JRでは特急列車以外にも「スーパー◯◯」と名乗る列車があり、2013年のダイヤ改正まで大船渡線を走っていた快速「スーパードラゴン」がその1つだが、九州の第三セクター鉄道肥薩おれんじ鉄道にある快速「スーパーおれんじ」とともに、ネーミングの意図が異なるのかもしれない。

また、JR貨物では佐川急便による貨物電車の「スーパーレールカーゴ」のほか、過去にはコンテナ列車の「スーパーライナー」や石油輸送列車の「スーパーオイルエクスプレス」といった名前もあったが、旅客列車の列車名とは性格が異なると言ってよいだろう。実は、「スーパーライナー」という名前が国鉄末期の1986年11月のダイヤ改正から使われているので、貨物列車を含めれば「スーパー◯◯」という列車名がJR発足以前からあった、ということになるだろうか?

新幹線にもあった「スーパー◯◯」

最後に、新幹線では「スーパーこまち」という列車名があったことを紹介しておきたい。これは秋田新幹線で車両の置き換えを行った際、新型のE6系を使用した列車に対して「スーパーこまち」と命名したもので、既存のE3系を使用した「こまち」とE6系を使用した「スーパーこまち」の2種類があった。E3系とE6系では設備や速度に違いが大きかったので、列車名を呼び分けて違いを明確にしていたわけだ。

「スーパーこまち」という名前は、2013年3月のダイヤ改正からE3系の置き換えが完了するまでの1年だけ使用され、2014年のダイヤ改正で「こまち」に戻されている。なお、秋田新幹線用のE3系は「こまち」から退いたものの、東北新幹線の「やまびこ」などで運用されているものが少しだけ残っていて、たまに遭遇して驚かされることがある。

思えば「スーパーこまち」は、「スーパー」が付く列車名が整理されて減る傾向の中で登場した最も新しい列車名でもあったが、「スーパーくろしお(オーシャンアロー)」が7カ月強で消えたのに次いで短命な列車名だった。

山手線の新駅「高輪ゲートウェイ」の命名が騒動になったように、モノやサービスに対して直感的にわかりやすく、しかもインパクトがあって覚えられやすい名前を付けるというのは困難が伴う。しかも、一度決めたものを変えるにも大変な手間がかかるのは列車でも同じことで、ネーミングというものは難しい。


(筆者作成)