■上等なスーツより話し方や所作

結論から言おう。イケメンはブサイクな男性よりも年収が17%高く、生涯賃金では23万ドル(約2500万円)の違いになる――そんな身も蓋もないことが経済学的に解き明かされている。しかも、美女が容姿の悪い女性より年収が増える割合は12%。つまり、美醜による年収格差は男性のほうが大きい※のだ。

麻生太郎さんは外国人とのコミュニケーションの際のお手本。

「海外では、見た目に投資するという発想は珍しくありません。年収が平均より上の人たちは、自分の見た目におカネをかけています。ただし、まずは話し方や所作。服や持ち物より先に、講習会などにおカネをかけます」

そう説明するのは、国際ボディランゲージ協会代表理事の安積陽子さん。ニューヨーク州立大学でイメージコンサルティングを学び、エグゼクティブや政治家、女優などに自己演出術を指導してきたプロフェッショナルだ。

「ニューヨークのエグゼクティブが意識するのは、魅力的な表情のつくり方や信頼される話し方。あるいは、カリスマ性を醸し出す立ち居振る舞い。さまざまな人種が集まる街ですから、自らプロの威厳を演出しないと信頼されません。いくら上等な服を着ても、肝心の中身がお粗末では逆効果というものです」

※出典:ダニエル・S・ハマーメッシュ著『美貌格差』(東洋経済新報社)

■目元と口元の筋肉を意識的に大きく動かす

安積さんは、海外出張が多い日本のエグゼクティブも指導している。特に力を入れているのが表情筋の使い方。英語で話すときは、目元と口元の筋肉を意識的に大きく動かすのがポイントだという。

トヨタ自動車の豊田章男社長は、世界に対して堂々としたジェスチャーや話し方をしている。

「日本人は相手の目を見て会話しますが、欧米人は口元から表情を読み取ります。歯並びを治す人が多いのはそのため。英語でのコミュニケーションは、口の動きは派手なぐらいがちょうどいいのです。政治家でいうと麻生太郎さんは表情が豊かですね」

体の姿勢も見た目の印象を大きく左右する。日本人の多くは両肩が前のほうに出て猫背になりがち。胸を張った姿勢で話す人はほとんどいない。日本人同士なら謙虚そうに見えて好印象でも、欧米人の中に交じると貧相に映る。

「パソコンに向かう時間が長いせいか、猫背の人をよく見かけます。猫背で自信がなさそうに見えるのは損。表情、姿勢、所作、服装、持ち物のすべてをバランスよく整えるようにしましょう。経営者でいえば、トヨタ自動車の豊田章男社長は、就任時に比べて話し方や所作が格段に向上しています」

安積さんによれば、パソコンの横に鏡を置いて、仕事中に自分の姿勢と表情をときどきチェックするだけでも効果はあるという。年収アップをめざして、これまで以上に見た目を意識してみてはどうだろうか。

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安積陽子
アメリカ生まれ。ニューヨーク州立ファッション工科大学でイメージコンサルティングの資格を取得。2016年、一般社団法人国際ボディランゲージ協会を設立、非言語コミュニケーションのセミナーや研修、コンサルティングを行う。著書に『CLASSACT(クラス・アクト)世界のビジネスエリートが必ず身につける「見た目」の教養』など。

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Top Communication(トップ・コミュニケーション)
ビジネス分野を中心に、雑誌記事の執筆や単行本編集を手がけるフリーランス集団。特に経営者の著書で多く実績が認められている。
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(Top Communication)