日本経済新聞によれば、アニメ製作で日本の2〜3倍の予算がつくこともあるNetflix。クリエイターに収益が行き渡らず、「ブラック業界」とも揶揄される日本のアニメ業界の"救世主"とも目される同社が、日本のクリエイター6名とオリジナル作品の企画・製作におけるパートナーシップを締結しました。

今回パートナーシップを締結したのはCLAMP(カードキャプターさくら等)、樹林伸氏、大田垣康男氏、乙一氏、冲方丁氏、ヤマザキマリ氏の6名です。

提携の内容としては、クリエイター側が原作を提供。Netflix側は、その原作をもとにアニメ制作会社に委託し、できあがったアニメ作品を世界190か国に配信します。作品の詳細は今後発表予定。Netflix側としては、日本の著名なクリエイターを囲い込む狙いもあります。

Netflixは2017年より、日本発アニメ作品の拡充をめざし、アニメのクリエイティブを統括する担当チームを東京に創設。その後、「攻殻機動隊」を手掛けるプロダクション・アイジーなど5社と、オリジナル作品の製作に向けて包括的契約を締結するなど、日本発のアニメ作品を強化しています。

同チームは全ての意思決定を東京で行い、外資系にありがちな「本国に確認する」というプロセス不要で、スピーディーにオリジナル作品を製作できる点も売りにします。

Netflixは『地上波より自由』『世界と直結』

発表会に登壇したクリエイターの樹林伸氏と大川七瀬(CLAMP)氏は、Netflixとの協業について次のように語りました。

「最初からグローバル発信でやれる仕事はすごく心が躍る。今の地上波はスポンサーありき、テレビ並みのコードがアニメにもつきまとう。子どもに向けたものという空気感が抜けきれていない。そういう部分を加味しながら原作を製作する必要がある。ただ、アニメに合わせて漫画を作れるかというと、それはできない。これまでは地上波テレビがアニメ業界を牽引していたが、Netflixさんのように比較的自由な環境でやらせていただき、突破していければ、まわりがついてくる。これをきっかけに業界を変えてほしい」(樹林伸氏)

「スポンサーの問題もあるが、日本のアニメビジネスは制作費をBlu-rayやDVD、グッズで回収するビジネスを展開している。そのため、なかなかその『回収』というワードから逃れられない時期が長かった。若い才能のあるクリエイターはお金を集めるところから始められないということが続いていた。今回は配信なので、Netflixさんなりの条件はあると思うが、今までと違う条件で作れるんじゃないかと期待している」(CLAMPの大川七瀬氏)

Netflix チーフアニメプロデューサーの櫻井大樹氏は「日本には素晴らしい漫画・アニメのクリエイターがいっぱいおられる。そういった方々のホームになりたいと思っている。これまでは地理的な障壁、アメリカに作品を売り込むためにわざわざハリウッドに行く必要があった。Netflixなら(日本法人のある)東京・表参道に来てもらえれば、即世界に直結で日本の良いコンテンツを輸出できる」と述べました。

「データに基づいた作品製作はしない」

なお、Netflixオリジナル作品の評価指標について櫻井氏は「どれだけの人が、どれだけの時間見てくれたか。人数が多ければ多いほどありたい。離脱率や、繰り返し視聴など、それらを総合してその作品が成功したかを判断する」と説明。



一方「分析したデータをもとにストーリーを作っているかと言うと、そんなことはない。打ち合わせで決まったらそうなる。個々の担当プロデューサーが面白いものを作っているのに近い。プロデューサーの色が作品に出る」とも述べ、ビジネスに縛られない作品作りを強調しました。