“キムチの本家”といわれる韓国で、2019年のキムチ輸入量が過去最高となった。輸入量は約31万トンと、韓国国内の生産量の約33万トンに迫る勢いだ。輸入の大半は韓国と自由貿易協定(FTA)を結ぶ中国産。原料となる韓国産ハクサイの生産量はこの20年で半減し、産地の衰退が目立つ。自由貿易の推進で、“本家”の座が危ぶまれている。

 同国関税庁によると、19年のキムチ輸入量は、前年比5%増の30万6050トンで、過去最高を更新した。輸入キムチの大半を占める中国産の輸入が増えたのは、01年に中国が世界貿易機関(WTO)に加盟したのがきっかけ。

 WTO加盟を契機に、中国産は低価格、安定供給を武器に韓国市場に進出した。輸入量は、2000年に472トンだったのが、05年には11万トンを突破。特に、同国に近い中国山東省一帯でキムチ工場が多く建設されたことが響いた。

 15年末には、韓国と中国でFTAが発効。関税は従来から0・2%削減され19・8%となり、輸入増加に拍車をかけ、19年には30万トンを超えた。

 一方、キムチ原料となる韓国産ハクサイの栽培面積は減少が続いている。韓国農村経済研究院によると、2000年の5万1801ヘクタールから19年は2万6636ヘクタールと、20年間で半分になった。

 同院シニアエコノミストの金泰坤氏は「自由貿易の推進や価格競争力の低下で、韓国はもうキムチの本家と言えない」と指摘する。自由貿易の推進で、韓国農業が衰退し、“ソウルフード”といえるキムチが中国産に取って代わった現状を嘆く。

 輸入増加による韓国農業の停滞で、韓国のキムチの輸出量も減っている。輸出先の中心である日本への輸出量は、04年にはピークの3万4828トンに達したが、19年は1万5947トンまで落ち込んでいる。