日本の乗用車保有台数6200万台に対してEVは15万台程度

 ガソリンスタンド(給油所)が減っている。市街地を走っていると元ガソリンスタンドだったと思われる施設が中古車屋さんになっている風景は、もはや当たり前になっている。

 経済産業省・資源エネルギー庁の統計によると、2018年度末での揮発油販売事業者数は1万4160社、ガソリンスタンドは3万70カ所となっている。その5年前にはそれぞれ1万6429社、3万3510カ所だったと聞けば、かなりの勢いでガソリンスタンドが減っていることがわかる。ガソリンスタンドは民間ビジネスだが、インフラという側面もあり、揮発油販売事業者が減っていることは社会問題となりつつある。

 その理由としてEV(電気自動車)の普及を指摘する声もあるが、日本におけるEVのシェアは本当にわずかにすぎない。乗用車の保有台数がおよそ6200万台であるのに対して、EVの累計販売台数は15万台程度と聞けば、ガソリンスタンドの消滅にさほど影響を与えていないことはわかるだろう。ただし、省燃費の象徴といえるハイブリッドカーの販売台数は右肩上がりに伸びている。ちょっと古いデータになるが、2017年度の新車販売におけるハイブリッドカーの比率は31.7%となっているほどだ。また、ハイブリッドカーでなくともエンジン車の燃費も改善している。つまり燃料消費が減っている。

 メディアなどでは「クルマ離れ」という言葉が当たり前のように使われているが、じつはクルマの保有台数自体は減っておらず、微増している。一方で、ハイブリッドカーの普及など燃費性能は確実に向上している。つまり、同じように使っている限り、燃費の消費量は減ってしまうのだ。ガソリンや軽油の売上は減る方向にある。

 もちろん、エリアによっては新規にガソリンスタンドを開設してもペイできることもあるが、メインの商材が売れなくなっているのだから全体としてはガソリンスタンドというビジネスモデルがシュリンクしていくのは自明だ。

減少傾向は今後も続いていく可能性が高い

 日本ではエンジン車の販売禁止という政策は出てきていないが、世界的にみると将来的なエンジン車の販売禁止を謳っている国や地域は少なくない。最近ではイギリスが2035年に乗用車においてエンジン車を販売禁止にすると宣言したことが話題だ。

 このようにエンジン車が減っていく流れにあっては、ガソリンスタンドというビジネスの将来が明るいとはいえない。ビジネス的には現在の設備の減価償却が終わったら、新規投資をせずに徐々に終了させていくという判断がなされることになるだろう。そうしてガソリンスタンドが減って、燃料インフラが間引かれていくと、家庭で充電できるEVの利便性が評価されることになる。そうしてEVなどプラグイン車の販売が増えていけば、ますますガソリンスタンドは減っていくという負のサイクルが見えてくる。

 ただし、希望がないわけではない。現在は、CO2の排出量を減らすことに躍起になっているが、CO2を回収して再利用するというテクノロジーの開発も進められている。そのなかにはCO2から炭化水素を生み出そうというものもある。つまり人工燃料の生成だ。再生可能エネルギーなどを使い、エネルギー収支比として成立する人工ガソリンが実現すれば、CO2排出的にいえばカーボンフリーとなる。そうなればエンジン車は消えないであろうし、人工ガソリンを販売するガソリンスタンドが増えていくという未来も考えられる。

 もっとも、欧州におけるエンジン車の販売禁止についてはCO2排出だけでなく、都市部における大気汚染対策という側面もある。いくら人工ガソリンを使ってカーボンフリーを実現しても、NOxやPMによる大気汚染の課題が残ると考えると、やはりエンジン車に明るい未来は見えない。すなわちガソリンスタンド・ビジネスが盛り上がることも考えづらいのだ。