ロッテの福田秀平、ソフトバンクの岩嵜翔のトレーナーとして自主トレで指導

 2007年に最多セーブのタイトルに輝き、2006年、2009年のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)の代表メンバーとして2大会連続金メダルに貢献。ソフトバンク、オリックスで活躍した馬原孝浩氏がトレーナーとして第2の人生をスタートさせている。

 右肩の故障もあって2015年に現役を引退すると、その後、国家資格を取得するために専門学校生に。ほぼ毎日、往復4時間近くかけて自宅のある福岡・糸島市から学校へと通い続ける過酷なスケジュールを続け、2019年3月、国家試験に合格した。

 その馬原氏は現在、ソフトバンクの岩嵜翔投手、そしてソフトバンクからFA権を行使してロッテへ移籍した福田秀平外野手の自主トレで個人トレーナーを務め、トレーニング方法やケアの方法などを指導している。

「自分がこういうトレーナーがいればいいな、というのをずっと思っていた。現役の感覚を知っていて、実績があって、そして国家資格、知識を持っているという人がいなかった」。現役時代から感じていた理想のトレーナー像を今、追い求めて活動している。

 目指しているのは球団のトレーナーや広くイメージされるトレーナーではなく、アスリートの感覚が分かる“アスリートのための”トレーナー。そして、この“アスリートのための”トレーナーを数多く育てていくことだという馬原氏。そこには、球界の一線級で活躍してきた馬原氏だからこそ分かることがあるという。

 トレーナーとして「本物を伝えるというコンセプトでやっていこうと思っている」という馬原氏。どれだけ勉強してもトップアスリートの感覚というものは、その領域に手を届かせた人にしか分からない。だからこそ、馬原氏は「本物の感覚を知ってて、本物の知識を持っていて、本物の実績を持っていて、という人がいないんです。そういったものをちゃんと伝えていく」ということを目指している。

 それは将来のある子供たちのためでもある。「今は情報があふれている。Youtubeとかで情報が簡単に手に入る。子供でも見れるようになった」。今ではインターネットなどで簡単にトレーニング方法やケアの方法が手に入る。馬原氏は「それはすごい良さもあれば、間違った視点もあるんです」と、必ずしも、その全てが正しい訳ではないという。

「本物の知識、本物の感覚を伝えていくというのが本当の教育」

「野球経験がない人には、そういった感覚がない。それは分かるけども……というのもあるんです。アスリートに関しても、分かるけど、違うよな、というのがすごく多いんです。でも、子供たちはそれは分からないんです。確かな、本物の知識、本物の感覚を伝えていくというのが本当の教育だと、成長過程で大事なことだと思うんです」

 現役時代からトレーナーたちの話や手技に疑問を感じることもあった馬原氏。「現役の時からトレーナーには『教科書を忘れてくれ』と言っていました」。その一方で、専門学校で学ぶようになって分かったこともあったという。

「『あ、なるほどな』と思うこともありました。あの時トレーナーに言って悪かったな、と思いますけど、やっぱり違うよなということがすごくありましたね。だからこうやって考えていたのか、だからトレーナーたちは怖さがあるんだ、と思いましたね」

 教科書や授業で人体構造などを学んでも、それはあくまでも“一般論”に過ぎない。各競技のトップで戦うアスリートたちの肉体は鍛えられ、一般の人たちとは違うところが多々ある。可動域も、柔軟性も違えば、痛みを感じるポイント、ありとあらゆるものが異なる。だからこそ、トップ選手を知る”感覚”が必要なのだという。

 体の可動域について、1つの例を挙げた馬原氏。筋肉や関節の可動域を出すためにストレッチなどを行うが、馬原氏によると「パフォーマンスで大事なのが関節包とか、体の中の方なんです。中の方の可動域を出さないといけないんです。ただストレッチをしても、そういう中の方の可動域は出ないんです」。その関節包や体の中の可動域を出すトレーニングも今、福田や岩嵜たちと行っている。

「自分でトレーナーになって、どんどん育成していって、この先自分が野球界に戻るんじゃなくて、どんどん輩出していきたい」と将来像を語る馬原氏。アスリートのため、そして未来のある子供たちのため。新たなトレーナーとしての姿を見据えながら、これから活動を続けていく。(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)