図書館に行って本を探す際、「本のタイトルがよくわからない」「うろおぼえだ」となった経験はないだろうか。

そんな時は一度こちらを見てほしい。福井県立図書館(福井市)では、カウンターのスタッフが実際に遭遇した、覚え違いかもしれない本のタイトルなどをリスト化。「覚え違いタイトル集」として公式サイトで公開している。


覚え違いタイトル集(画像は福井県立図書館公式サイトより)

覚え違いタイトル集のリストには「覚え違い?」と「こうかも!」の欄がある。

たとえば、「寿命図鑑 生き物から宇宙まで万物の寿命をあつめた図鑑」(いろは出版)の場合。覚え違い?の欄には、

「『人と物の寿命...』といった感じのタイトルで子ども向けの本」

とある。本の名前が思い出せず、図書館スタッフにこのように尋ねた利用者が過去にいたということだ。こうかも!の欄には正しい名称が記載されており、出版社や著者名などの詳細も記されている。

男の子の名前で「なんとかのカバン」?

「覚え違いタイトル集」は2020年1月23日現在で、684例が紹介されており、ツイッターなどでも、たびたび話題となっている。

いったいどんな「覚え違い」があったのか。ここでいくつかの事例を見ていこう。

まずは、「おい桐島、お前部活やめるのか?」。聞き覚えはあるが、何かがおかしい...。


画像はAmazonより

正解は「桐島、部活やめるってよ」(朝井リョウ著、集英社)。惜しい。だが何となくこの本かなと想像はできる。

続いてはちょっと難問。「男の子の名前で『なんとかのカバン』」。みなさんはこれが何の本かわかるだろうか。


画像はAmazonより

正解は「ハリー・ポッターとアズカバンの囚人」(J.K.ローリング作、静山社)。カバンは合っているが、そこだけ抜き取ると全く別の本を想像してしまう。この本だと気づいたスタッフに拍手だ。

他にも、覚え違いの事例にはこんなものが。

【覚え違い?】カフカの「ヘンタイ」
→【こうかも!】「変身」(カフカ著、光文社)
【覚え違い?】村上春樹「とんでもなくクリスタル」
→【こうかも!】「限りなく透明に近いブルー」(村上龍著、講談社)
似たタイトルで「なんとなく、クリスタル」(田中康夫著、河出書房新社)
【覚え違い?】ホリエモンさんの本で「大きな家事」
→【こうかも!】「すごい家事」(松橋周太呂著、ワニブックス)
※著者のニックネームが「家事えもん」

......と、まあ、きりがない。だが見ているだけで癒されるというか、思わず笑ってしまう。

ツイッターではあるユーザーの投稿によって、この覚え違いタイトル集が話題となり、さまざまな感想が寄せられている。

「これはやばい、読みながら吹き出した」
「このシリーズ化ぜひ書籍化してほしいぐらい、笑ってしまいました。ツボリます」
「こんなのでちゃんと目的の本をみつけるなんて図書館司書ってすごいですね」

レファレンスサービスの普及が目的


福井県立図書館(Asturio Cantabrioさん撮影、Wikimedia Commonsより

Jタウンネット編集部は、2020年1月21日、福井県立図書館に詳しい話を聞いてみた。

覚え違いタイトル集の目的について、担当者は次のように話している。

「OPACというオンライン蔵書目録があるのですが、多くのお客様は検索しても見つからない方が多いのです。そんなとき、ヒントとして活用していただきたいと思ったのが、主な目的です」

また、図書館にはスタッフが利用者の図書探しなどを手助けする「レファレンスサービス」があるが、まだほとんど知られていないとのこと。レファレンスサービスの広報に努めるというのも、覚え違いタイトル集の重要な目的の一つだという。

「福井県立図書館のWebコンテンツを見ていただくためにはそこに『エンターテインメント性』、すなわち『面白さ』が必要だと思います。『覚え違いタイトル集』は、福井県立図書館のエンターテインメントコンテンツであり、図書館を知っていただく、訪れていただくための仕掛けなのです」(福井県立図書館担当者)

覚え違いタイトル集が「面白そうだから」と図書館に行ってみようというきっかけになれば、と担当者は語る。覚え違いはむしろウェルカムのようで「なにかヒントをくだされば探しますよ。探させてください」とのことだった。

担当者は、最後にこう力説した。

「レファレンスサービスというのは、実はどこの図書館でもやっていることなのです。福井県立図書館ではとくに積極的にPRしていますが、他の図書館でも同様に行っています。ぜひ、お近くの図書館のカウンターで本を探すときに、相談してみてください」

なるほど、久しぶりに図書館に行ってみるか。読者の皆様も訪れてみてはどうだろう。