取り扱いディーラー数では遜色ない

 普段路上を見ていても意識しないと気付きにくいが、商用1BOXバンを中心に10人乗りワゴンや14人乗りマイクロバスのコミューターもあるトヨタ・ハイエースは頻繁に見かける1台である。対してハイエースとまったく同じジャンルとなる日産キャラバンを路上で見る頻度は、ハイエースに比べると格段に少ない。

 2018年の販売台数を見てもハイエースバン5万7893台、キャラバンバン2万3713台とハイエースバンはキャラバンバンの2倍以上売れており、路上で見る頻度が反映されている。ではなぜキャラバンはハイエースの半分も売れないのだろうか?

 販売ディーラーはキャラバンが日産全店なのに対し、ハイエースはトヨペット店、ハイエースの兄弟車となるレジアスエースがネッツ店とディーラーの数はそれほど変わらないだろう。

 過去には商用ユースで過酷な使い方をするとキャラバンはスライドドアなどの耐久性が低い、2001年から2012年まで販売されていたキャラバンの4代目モデルではハイエースのほうが圧倒的にスタイリッシュだったなど、決定的な問題がある時期もあった。しかしキャラバンが2012年6月に現行型の5代目モデルになってからはそのあたりもハイエースと遜色なくなっている。つまり現在のハイエースとキャラバンは販売台数が倍も違うほどの差があるクルマとも思えないのだ。

商用車は固定客が多く過去の汚名を払拭するのは難しい

 しかし決定的なものかは別にして、ハイエースのアドバンテージを探すと

・パワートレインはそれぞれATだと、ハイエースは2リッターと2.7リッターのガソリン、3リッターディーゼルターボにすべて6速AT、キャラバンは2リッターと2.5リッターのガソリン、2.5リッターディーゼルターボにすべて5速ATと、排気量とATを総合すると動力性能はハイエースが優勢

・4WDはハイエースがフルタイムなのに対し、キャラバンは切り替えが必要なパートタイム4WD

・自動ブレーキはキャラバンが先に装備したが、未だ歩行者は検知できないミリ波レーダーのみを使ったものとなる。ハイエースは時期こそ遅れたものの、歩行者も検知するミリ波レーダー+単眼カメラを使ったものを装備

・バリエーションを見るとハイエースには側面後方のガラスを鉄板にしたルートバンがあるが、キャラバンにはない

 などと、少なくない。

 商用車は固定客が多いだけに、過去のネガティブなイメージを払拭するのはなかなか難しいためハイエースからキャラバンへの乗り換えは少ない。さらに現在のハイエースのアドバンテージが積み重なれば、ハイエースがキャラバンに圧勝するのもよくわかる。

 さらにハイエースは人気なだけにアフターパーツも非常に多く、輸出を含め処分する時のリセールバリューも高いと、好循環するばかりだ。そう考えると原稿を書きながら、「キャラバンがハイエースの4割くらい売れているのは健闘していると言えるのかもしれない」とも思ってくる。

 つまりキャラバンがハイエースに勝てないのは「キャラバンは過去の汚名に加え、ハイエースのほうが顧客を見た改良も行っているから」というごく単純な結論になる。

 キャラバンがハイエースに勝つためには時間を掛けて信頼を積み重ねるか、ハイエースを圧勝するような革新的な1BOXカーとなるしか方法はないのではないだろうか。