何年も婚活をしているのに結婚に結び付いていない場合は、やり方を見直したほうがいいかもしれません(写真:Kazpon/PIXTA)

「もう何年も婚活をしているのに、結婚できる相手に巡り合えない」。そう思っている人たちは、本当に正しいやり方で婚活をしているのか?

仲人として婚活現場に関わる筆者が、毎回1人の婚活者に焦点を当てて、苦悩や成功体験をリアルな声とともにお届けしていく連載。今回は、「脳内婚活は卒業。リアルに活動していくことが結婚への近道」について記す。

7年間の婚活、いまだ独身

林田智也(37歳、仮名)が、婚活相談にやってきた。身長は181センチあり、サラサラ髪の清潔感ある青年だった。

「30歳を過ぎてから婚活を始めて7年になります。活動しているのに、まったく成果が出ません。どうしてなんでしょうか?」


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そこで、どんな婚活をしてきたのかを聞いてみた。

「まず、都内の結婚相談所に入りました。あと、先輩が人を紹介したり、出会いをサポートしたりするNPO法人を立ち上げているので、2年くらい前に、そこにも入って活動をしています」

2つの婚活ポータルサイトを利用しているというのに、どうして成果が上がらないのか。今まで、何人の女性たちに出会ってきたのか。

「まあ、最初はあまり焦っていなかったので、年に、1人とか2人とかお会いしていました。でも、去年は、“まじめに婚活に取り組もう”と決めて、結婚相談所で5人、NPOのほうでは2人と会いました」

その言葉を聞いて、「えっ、まじめに取り組んで、1年間に7人ですか? それが7年間のうちで、婚活を一番まじめにやった期間なの?」と、私は思わず聞き直してしまった。

「そうです。婚活がなぜ苦戦しているか、その原因を知りたいんです」

まずは1年間で7人と見合いし、それが“婚活を一番必死でやった記録”という意識を変えなくてはならない。他の婚活者に比べて、あまりにも数が少ないからだ。

ただ、見合いを組めるか組めないかは、その人の持ち合わせている条件によっても違ってくる。本人が持ち合わせている条件に対して、理想の高すぎる相手にばかり申し込んでいれば、お見合いは当然受諾されない。

見た目は悪くない。どちらかといえば、背も高いしスレンダーでモテる部類だろう。ほかに何か決定的な問題があるのか? 面談シートの学歴の欄に“大卒”と書かれていたので、どこの大学だったかを聞いてみた。すると、卒業大学は、誰もが知る一流大学だった。

では、年収が驚くほど低いのか? 年収を聞くと、「790万です」と答えた。

ここまでのヒアリングでは、お見合いが組めない要素が何一つとして、見当たらなかった。

ならば、これまで恋愛らしい恋愛をしないままに年を重ねてしまったのか? 会ってもどう交際を進めていっていいのかわからないのではないか。

そこで今度は、恋愛経験を聞いた。

「大学3年から卒業前までの2年間、付き合っている彼女がいました。でも、卒業してお互い就職し、時間がすれ違うようになって別れてしまった。そこからしばらく彼女はいなかったんですけど、29歳のときに1年付き合った人がいました。その人と別れたので、相談所に入って婚活を始めたんです」

しかし、入ってはいるものの、サイトは見たり見なかったり。35歳のときに、生活圏内で出会った女性と1年付き合ったが、その女性とも結婚まではたどり着けずに自然消滅的に関係が終わってしまったという。

これまで、3人の女性とお付き合いしてきたのなら、決して恋愛経験は多くないが、ごく普通に恋愛をしてきた37歳だろう。

「ただ生活をしていて自然に出会った女性とは付き合えるんですけど、婚活で出会った女性とは、2回とか3回会うと終わってしまうんですよね」

智也の話を聞いているうちに、なぜ結婚できなかったのか、その理由がだんだんと見えてきた。

生活圏内の出会いと「婚活」の違いとは?

私は、智也に言った。

「まずはね、生活圏内での出会いと婚活での出会いは、そもそも性質が違うし、関係の育み方も違うんですよ」

何がどう違うかといえば、生活圏内での出会いというのは、出会った時点で、“この相手と恋愛しよう”とは思っていない。気持ちが構えていないのだ。

「大学時代の彼女も、大学に行けばいつも顔を合わせる。ゼミが同じ。サークルが同じ。いつも顔を合わせて話をしているうちに、お互いに人間性がわかってきて、“この子といると楽しいな”“面白いな”“居心地がいいな”という気持ちが育っていったでしょう? 女性側もそれと同じ感情を抱くようになっていたから、“じゃあ、俺たち付き合おうか”という話になった。

社会人になってから、お付き合いをした人たちもそうだったと思うんですよ。出会ったときは何も感じていなかったのに、時間を重ねていくことで気持ちが育って、恋愛につながった」

しかし、婚活での出会いは違うのだ。

「婚活って、結婚相手を見つけるという目的のもとに2人が出会うんです。生活圏内のように気持ちが重なっていないのに、いきなり“結婚”というところにピンを打って出会う。つまりこれって、付き合うという箱はできたけれど、中身は空っぽの状態。この空洞をいかに埋めていくかが大切なカギになっていくんですよ」

お見合いが終わって、お互いに交際希望を出す。連絡先の交換をすると、まずはその日の夜か翌日の夜に、男性が女性にファーストコールをするのが通例だ。そこで、お付き合いしていくという箱ができる。

ファーストコールで、週末に食事に行く約束をする。ところがそこからお互いに何の連絡も取らず、会う前日になって、『明日は、7時に渋谷の〇〇というレストランです。よろしくお願いします』という業務連絡のようなLINEを入れて、1週間ぶりに会ったとしても、お互いのテンションはすでに下がっている。

その食事から、次に会うのが2週間後。また、会う前日に、『明日は、6時に銀座の〇〇というイタリアンです。よろしくお願いします』という業務連絡メールが来て、2週間ぶりに会う。

こうした流れをたどるカップルは、2回目の食事で、だいたい交際終了となる。

「婚活においてLINEや電話は、連絡ツールではないの。コミュニケーションツールなんです。だから毎日連絡を取り合って、お互いのことを知って、気持ちを重ねていく。箱の空洞を少しずつ埋めていく作業をするんです」

こう言う私に、智也が言った。

「でも、こちらがLINEしても、相手から返信が来るのが2日後とか3日後で。そうなると毎日LINEを入れるのも悪いかなと思ってしまいますよね。結局返信が来るのを待って、またLINEを入れる。そんなのが多かったので、頻繁にLINEでやり取りできる人は、これまでいませんでした」

LINEのレスが遅い相手の真意は?

LINEのレスが遅い相手については、2通りだろう。交際にはなってみたものの、相手をそんなに気に入ってはいない。または、毎日のLINEは面倒。2日か3日に一度のやり取りで十分だと考えている。

どちらにしろ、そうした相手との結婚はないと思ったほうがいい。人間にはインスピレーションがあり、“この相手と合うか、合わないか”は、理屈ではなく直感で感じ取る。いわゆる生理的に合うか、合わないかというヤツだ。交際に入ってみたけれど、“やっぱりこの相手は違う”と思えば、LINEの返信も遅くなる。

また、“人を好きになる力”“恋しく思う力”というのは、人それぞれに持ち合わせている大きさが違う。“毎日のLINEは面倒”だと思っている人は、その力が弱い。つまりは“結婚をしたい”という気持ちも弱い。

“結婚してこそ一人前”と、結婚が人生の中に義務教育のように組み込まれていたのは昔のことで、今や結婚は、するもしないも個人が自由に選択する時代だ。“いい人がいれば結婚したい”“周りに既婚者が増えてきたから、やっぱり結婚したほうがいいのかな”とぼんやり考えている人たちは、婚活を始めても前に進めていくエネルギーに欠ける。

こんな説明をしていると、智也が言った。

「ただ僕の場合は、自分が前のめりになる女性ほど、うまくいかないんですよね」

こればかりは致し方ない。相性もあるし、どんなに努力をしても手に入らないのが人の気持ちなのだ。

「どうしても好きで諦めきれないというのなら、納得いくまで頑張るしかない。愛は無償だと思ってね。でも反応の悪い女性は、いつまでも交際を続けていないで、交際終了にしたほうがいいんですよ。そうしないと時間がムダになる。

あと、“仕事が忙しい”というのは、本当に忙しいかもしれないけれど、会いたくない言い訳の場合も多い。どんなに忙しくたって、“会いたい”と思えば、1時間でも会う時間を作るはずですから。また、それをできない人は、結婚をしたいという気持ちが弱いんですよ」

減点法で見てしまうのが婚活の出会いの特徴

また、婚活での出会いのもう1つの特徴を智也に話した。

「なぜ婚活をするか? それは、“1日も早く結婚したいから”ですよね。その焦りが、相手をチェックする目を厳しくしてしまうんです。“この人はこういう物の言い方をするから、結婚したら口うるさい奥さんになりそうだな”“服やバッグにブランド品が多いから、金遣いが荒いかもしれない”。ここが変、あそこが嫌、と、チェックシートを作って、いちいちチェックをしていく。

でも、生活圏内の出会いだと、そんなチェックはしないでしょう? そもそも恋愛や結婚をするつもりで時間を過ごしていたわけではなく、付き合うのは、好きになった結果だから。ところが、結婚できるかどうかにピンを打ってしまうと、その空洞を早く埋めようとして、どうしてもチェックの目が厳しくなるんです」

“減点法ではなく、加点法で相手を見なさい”とは、婚活するときによく言われることだ。しかし、婚活の出会いの特性からすると、これはなかなか難しい。

「だからね、結婚相談所には、“仮交際”と“真剣交際”の区分があるけれど、“仮交際”のときには“まずはお人柄をみよう”と肩の力を抜いて、どんどんお会いしていくことが大切なんです。

結婚できるかできないかではなく、一緒にいて心地いいかどうかを、見ていく。住居や会社が近かったら、週の真ん中で1回会って、その週末も会うとか。週に2回、最低でも1週間に1回会うようにしているカップルは、スムーズに成婚に向かっていくことが多いんですよ」

さらに、私は智也に言った。

「智也さんの婚活が苦戦している最初の原因は、まずはお会いしている人数が圧倒的に少ないというところにあると思います。まじめに婚活をしていた昨年が、1年間に7人でしょう? お見合いを積極的にやっている人たちは、1カ月に7人と会っていますよ」

また仮交際の時期を、“人柄をみる時間”として、できれば2人、3人と仮交際をするといい。何人かと付き合ってみると、比較もできるし、それぞれのよさが見えてくる。さらには自分の中で、執着が分散されるので、冷静にもなれる。

「ただそうは言っても、“自分は性格的に2人も3人も付き合えないから、1人ずつ付き合っていきます”という人もいる。そこは、人それぞれに性格が違うので、その人のやり方でいいと思うけれど、1人としか付き合っていないと、その方がダメになったら、ゼロからやり直しになるので、時間はかかってしまいますよね」

結婚できない人は「脳内婚活」をしている

最後に、智也にこう告げた。

「相談所入っています、アプリに登録しています、友達に『紹介して』と頼んであります。それで婚活している気になっていて、実際は何の行動も起こしてもしていない。私はこれを“脳内婚活”と呼んでいるの。脳みその中には、婚活しているという意識はあるんだけれど、行動が伴っていない。

『じゃあ、この1年間、どんなふうに婚活をしてきたか、紙に書き出してください』というと、書き出した内容はスカスカなんですよ。智也さんもこのタイプじゃないですか? まずは、行動を起こすことから始めてください」

出会いの絶対量を増やす。そして、出会ったら、密にコミュニケーションを取っていく。反応の悪い相手、打っても響かない相手、行動が遅い相手は、交際終了にしていく。

「確かに今までの僕は、脳内婚活でした。これからは積極的に動いていきます」

リアルに動く婚活をしてこそ、それが結婚につながるのだ。