軽や国産のコンパクトカーにはよく利用されているCVT

 ベルト式CVT(無段変速機)は、効率(燃費)が良いと軽自動車や国産の小型車でよく利用されている。一方で、中型〜大型の車種や、高出力なクルマにはほぼ使われていない。また海外でも、大小に関わらずあまり利用されていない。

 無段変速については1900年ごろに考えられていたが、実用化されるのは20世紀半ばになってからとなる。そして1970年に、オランダで今日に通じる金属ベルトを使った無段変速機が発明された。それが、80年代に日欧の小型車を中心に利用されるようになる。日本では、87年にスバル・ジャスティに搭載された。日産は、92年の2代目マーチではじめてCVTを採用した。

 金属ベルトを使ったCVTは、二つのプーリーを金属ベルトで結び、動力を伝達する。二つのプーリーがそれぞれ幅を調整することで回転半径を変え、それによって変速する。その際、金属ベルトを滑らせることなく回転力を伝えるには、ベルトを挟み込むプーリーの円錐形をした円盤で左右から圧を掛け、金属ベルトを力で押さえつけておかなければならない。ここに、油圧を必要とする。

馬力の大きなエンジンではCVTを採用してもメリットが得られない

 CVTの利点は、エンジンでもっとも効率の良い回転数を維持しながら、無段階で速度を上げていくことができるところにある。それによって燃費がよくなる仕組みだ。

 エンジン回転が低いうちは、使う燃料は少なくても、ポンピング損失といって、スロットルバルブが開き切らないことによりエンジン内へ吸気を吸い込みにくくする抵抗により効率が落ちる。エンジン回転が高くなると、シリンダーとピストンとの摩擦による損失が大きくなる。その中間的な数千回転付近が、もっとも効率の良いエンジン回転数とされる。

 軽自動車や、マーチのような小型車で普及が進んだCVTはその利点を生かし、国産車で普及した。一方、より排気量の大きい、すなわち馬力の大きいエンジンでは、回転力(トルク)が大きくなるので、金属ベルトを滑らせず力を伝達するにはベルトを押さえるプーリーの押さえつけ力を高めなければならないので、油圧ポンプの性能を高めなければならず、その動力で消費される分、クルマとしての燃費のよさがあまり得られなくなる懸念がある。

 それでも、排気量2リッターくらいまでのエンジンにはCVTを利用することが国内では広がったが、それ以上の排気量へは難しいとされてきた。

 日産だけは、排気量3.5リッターのV6エンジン用ベルト式CVTを開発した。対応できるエンジントルクは、350N・mとした。その実現のため、トルクコンバーターを使った通常のオートマチックに比べ油圧ポンプに求められる圧は約3倍、そのための容量は1.5〜1.8倍ともなり、同時に、搭載性のためポンプの小型化も果たさなければならなかったといわれる。

 日産はほかにも、後輪駆動用として金属ベルトではなく、円盤状のディスクとパワーローラーを使ったトロイダルCVTも開発し、スカイラインやセドリック/グロリアの排気量3リッターガソリンターボエンジン車に搭載した。それらは90年代のことである。

 しかし他社で大排気量エンジン車のCVT開発に追従するメーカーはなく、また、ツインクラッチをマニュアルトランスミッションと組み合わせるDCT(デュアル・クラッチ・トランスミッション)や、トルクコンバーターと遊星歯車を使う従来型の自動変速機のロックアップ機構の高度化などが進み、さらにモーターを利用するハイブリッドなども加わり、ことに中型〜大型車でのCVT採用は広がらなかった。