「この前も朝礼で体育館に向かうとき、先生から『靴下が短すぎる』って言われて、入口で脱がされ、クラスの列に入れてもらえませんでした。ウチの学校は校則が厳しくて下着も白じゃないと先生に怒られる。1、2年生にいたってはスポーツブラでないとダメだって空気。何で白じゃなければいけないんでしょうか?」(浜松市内の女子中学生・14歳)

【写真】キーホルダーも禁止。詳細に定められた浜松市内の校則

 いま静岡県浜松市の市立中学校の校則の厳しさが話題になっている。「ポニーテール禁止」「マフラー禁止」、さらには「男女ともに下着は白限定」などの項目が、朝日新聞をはじめ全国紙に取り上げられたほか、ネット上でも議論の的となった。


「白の下着を着用」と指定された浜松市内の中学校の校則

 そもそも、これらの校則が注目されたのは、2019年12月、浜松市内の中学校の校則問題を市議会議員と市内のトランスジェンダー研究会が取り上げて、「今の時代に厳しすぎる」と声を上げたことだった。「浜松トランスジェンダー研究会」の鈴木げん代表が明かす。

「きっかけは、あるトランスジェンダーの生徒からの『学生服』についての相談でした。戸籍上は男の子のため、中学校では『学ラン』を着なくてはならず悩んでいました。それで、まずどういうルールで学生服を着なくてはいけないのかを知ろうと、市内の中学の校則を取り寄せ始めた。すると、知れば知るほどLGBTという観点だけじゃなく、市内の校則が問題だらけだと分かったんです」

 鈴木代表は、地元市議とともに、市内全48の市立中学の校則を取り寄せた。「生活のきまり」「生活の心得」と記された各校の校則には、「スマホの持込禁止」や「制服の加工、髪染め、アクセサリーなどの禁止事項」などの項目だけではなく、なぜ決められているのか理解できないような校則が多く見つかったという。

禁止の理由は「体操着」にあった?

 鈴木代表らが異論を唱えた校則の中でも、大きく議論を呼んでいるのが、「下着は白」と規定した学校が10校もあったことだ。

 この校則は、実際にどのように運用されているのか。冒頭で紹介した、浜松市内の女子中学生が語る。

「暑い季節に派手な下着が透けて見えたりすると、女の先生から注意されますね。先生の呼び出しを受けて何度か注意されているのに守らないと、親に電話を掛けられてしまいます」

 この「白下着」問題について、現地で取材を進めると、浜松市内の学生服販売店の店主が意外な理由を口にした。

「浜松市の多くの中学校では夏場、登校後に制服から白い体操服に着替えて過ごしているのです。そうすると、どうしてもブラが透けてしまう。思春期まっただ中の男子生徒が授業で集中できなかったり、ブラ紐を後ろから引っ張ってイタズラしたりする男子生徒が多いんです。その対策として、昔からスポーツブラや透けづらい色の下着を勧めています」

 実際、浜松市では市内全48校が制服で登校するが、そのうち46校が登校後「校内服」(ジャージ、体操服)に着替える規定がある。

 学校の教師側は、この問題をどのように捉えているのか。市内の中学校に30年以上勤務する現役の男性教師が打ち明ける。

「いま勤務している学校も『下着は白』と校則で決まっています。なぜダメかといえば、下着にしても靴下にしても、個性をだすと、そこで優劣がでたり、先輩に目をつけられたりして『調子にのってる』といじめになったりするから。だからこそ極力同じものにする必要がある。それに、やっぱり下着は体操服の下から透けてしまう。派手な柄だったりすると男子生徒への影響を考えてしまいますよ」

 一方で、「白下着」をめぐる校則は、学校側が積極的に残したものではないと話す。

「頑張ってこの校則を守ってきたというわけではなく、それこそ何十年もルールが残っていて従っているだけです。一応、校則は数年に一度、職員会議で議題にして話し合いをしますが、『これをやめよう』という話よりは、『こういうのを足そう』というプラスになってしまう。例えば『携帯電話の持ち込み禁止』などという類いの話です。下着の校則についていえば、実際のところ、今の時代に男子教師が女子生徒にむかって『下着が透けてるぞ』などと言えないですよ」

保護者の意見は千差万別

 いま浜松市内の中学校でも外国人の生徒が増えているという。そういった多様な生徒を迎える中で、校則も見直す時期を迎えていると、前出の鈴木代表とともに活動する鈴木恵・浜松市議が語る。

「いま公立の中学校には外国人の生徒もたくさん入学してくる。そんな多様な文化を持った生徒がいる中で、下着の色や髪型まで指定するのは良いことなのでしょうか。それに、校則の問題が改善されないのは生徒の側から声を挙げにくい事情もあるのではないでしょうか。生徒は校則に不満をもっていても、内申書に響くから何も言えず、我慢するしかないのです」

「下着は白」という校則に対して、現地で中学生の子どもを持つ保護者たちに話を聞いてみた。すると意外にも、その反応は千差万別だった。

「色まで指定される理由が分からない」「時代に合っていない」などの意見がある一方で、「厳しいままでよい。お洒落に興味ばかりもたれると、高い物に興味を持ちパパ活などされたら心配」など、賛成の声も多かった。

 浜松市教育委員会はどのように考えているのか。「週刊文春デジタル」の取材に、市教委の担当者は、今回の校則をめぐる一連の報道を受けて、次のように語った。

「一つ一つをみていくと、『今必要なのか?』という校則も確かにありました。1月中に、各校の生徒指導の教諭の意見を聞きながら、人権に配慮した、合理的な校則であるかどうか検討し、必要があれば校則を見直すように働きかけていきます」

 しかし、校則を決める権限は「あくまで校長にある」ということだった。

 1月19日(日)21時より放送の「直撃!週刊文春ライブ」では、取材担当記者が浜松市内の中学校の校則の実態について解説する。

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(「週刊文春デジタル」編集部/週刊文春デジタル)