年収から年間総労働時間を割って、「計算時給」を算出。時給が高い企業の特徴とは (写真:freeangle/PIXTA)

『CSR企業総覧』という分厚い本をご存じだろうか? 大手上場企業を中心に1593社のCSR(企業の社会的責任)情報を「雇用・人材活用編」「ESG編」の2冊に分けて掲載。合計3672ページにびっしり情報が詰まっている。


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CSRというと一般には社会貢献や環境活動のイメージが強いかもしれないが、本来はもっと広い概念だ。最近、国連が提唱し話題になっているSDGs(持続可能な開発目標)や、コーポレートガバナンス、サプライチェーンなどもその範疇に入る。さらに、各社の賃金・各種諸制度、女性活用・ダイバーシティー、有給休暇や家庭と仕事の両立支援といった雇用関係も守備範囲だ。

実は就活生に役立つ有望情報は、CSRやESG(環境・社会・ガバナンス)という形で企業から開示されていることが多い。

就活生に役立つ情報はCSRやESGからわかる

『CSR企業総覧(雇用・人材活用編)』『CSR企業総覧(ESG編)』にはアンケートで収集したCSRやESGに関する大量の情報を掲載している。就活が本格化するこのタイミングで、役立つ情報をご提供していきたい。

就職選びではやはり賃金の多さは気になるところだろう。ただ、いくら高収入でも働き詰めでは疲弊してしまうだけだ。いい仕事をするにはゆとりの時間も必要。そこで、今回は平均年収を年間総労働時間で割った各社の「計算時給」を算出。この中から4000円以上の208社をランキングし、「時間当たりの収入が高い」企業をご紹介していく。

ランキング1位は前年に引き続き、総合商社の三菱商事で、計算時給額は8254.5円。2019年度の平均年収は1607.7万円で総労働時間は1947.7時間。社員の平均年齢は42.5歳なので、新卒で入社20年後にこのくらいの時給になると考えてよいだろう。

フレックスタイム制度、短時間勤務制度、半日単位の有給休暇制度、在宅勤務制度など柔軟な働き方の制度が充実。男性の育児休業は2018年度で取得率50.0%(92人)まで増加している。資格・技能検定の取得奨励制度や自由応募形式の無料講座などスキルアップの機会も数多く用意されている。

次世代ビジネスを通じた社会課題解決や低炭素社会への移行を目指し、SDGsにも積極的に取り組む。コロンビアでは年間約300世帯の小規模コーヒー生産農家に対して技術支援や教育プログラムを行い、増産や品質向上のサポートを行っている。生産されたコーヒー豆の一部を自社で購入する取り組みもしている。オランダでは洋上風力発電事業も行うなどSDGsの17の目標と結び付けて幅広い社会課題解決に取り組む。

ボランティア休暇も2018年度で年間181人が取得。社会課題を解決しようという意識の高い人材が多く在籍している。総合商社は事業活動を通じて多くの貢献ができる。会社の力を使ってビジネスで社会課題を実現したいと考えている人にとって、魅力的な職場と言えるだろう。

働き方改革進む

2位は不動産業のヒューリックで7751.3円。平均年収は1636.1万円で総労働時間は2110.7時間。週1回以上の「ノー残業デー」の設定や非効率業務や会議の削減を行うなど働き方改革を進めている。

3位は総合商社の伊藤忠商事で7382.4円。平均年収1520.8万円、総労働時間2060.0時間だった。CSR活動の目標の1つに「働きがいのある職場環境の整備」を掲げる。20時以降の勤務は原則禁止。8時前に始業する社員に対して軽食を支給するなど朝型勤務を推奨している。評価制度に時間管理に関する項目を追加するなど働き方改革への本気度は高い。

4位も総合商社で、三井物産が7304.5円という数字に。平均年収は1430.0万円、総労働時間1957.7時間だった。同社は社員一人ひとりが生産性や効率性を高くメリハリをもって働くことにより企業競争力の向上につながる「働き方改革」を推進。個人単位の時差出勤、時間単位の有給休暇、モバイルワークなどを導入し、多様な働き方が行えるよう従業員をバックアップしている。

以下、5位住友商事6880.7円、6位丸紅6864.3円、7位JXTGホールディングス6523.5円、8位東京エレクトロン6486.7円、9位三井不動産6215.7円、10位第一三共6096.2円と続く。

計算時給が6000円を超えるのは14位アステラス製薬6010.8円まで。同じく5000円を超えるのは40位塩野義製薬5031.8円までだった。

今回の208社には誰もが知っている超有名企業が多いが、中には学生の皆さんが知らない社名もあるかもしれない。だが、賃金が高い会社はその業界ではトップシェアを誇るような優良企業が多い。初めて聞いた社名はさらに調べておけば、就職活動での有望候補企業を増やせるだろう。

さて、ランキング対象716社の計算時給の平均値は3579円だった。国税庁「平成30年分民間給与実態統計調査」によると2018年の正規雇用の平均給与(年収)は503.5万円。年間総労働時間を上記716社の平均労働時間1991.2時間で計算すると時給は2528.6円になる。これを見ると今回対象の時給4000円以上はかなり高い水準であることがわかる。

高時給企業は教育や福利厚生も充実

従業員に高い時給計算の給料を払えるのは高付加価値のビジネスが行えている証拠とも言える。事業活動で高い付加価値が得られるため、一般的に教育システムや福利厚生も充実している。さまざまな社内制度が利用でき、能力を高めるチャンスも多いので魅力的な職場の可能性は高い。

ただ、こうしたランキングはあくまで会社の一面を知るための参考データとして見てほしい。これらを基本としてさらに多くの情報にあたり自分にとって本当にあう会社かどうかを判断していくとよいだろう。

その際、東洋経済新報社が発行する就活のバイブルと言われる『就職四季報』をじっくり見ていくことが基本となる。そしてより詳しい情報が知りたい方は『CSR企業総覧』を使ってほしい。

多くの大学で図書館に置いてあるはずだが、中にはWebから閲覧できる東洋経済デジタルコンテンツ・ライブラリーが導入されている場合もある。検索機能も使えるので一度確認してみるとよいだろう。