2012年から続く人気シリーズの新作、ミュージカル『薄桜鬼 真改』相馬主計 篇で初主演に抜擢された俳優・梅津瑞樹、27歳。

2019年6月から上演された舞台『刀剣乱舞』慈伝 日日の葉よ散るらむ の出演を皮切りに、多くの2.5次元舞台でその名を目にする機会が増えた。彗星のごとく現れた彼は、2.5次元作品における、新たな注目俳優と言えるだろう。

しかし、話を聞いてみると、当の本人はいまひとつその実感がないようだ。劇団員として小劇場での公演経験を持つ彼にとって、「2.5次元舞台」とはどんな存在なのだろうか。

俳優を目指したきっかけから現在にかけて、自身の足跡を語る横顔からは、繊細で思慮深い人柄が垣間見えた。

撮影/ヨシダヤスシ 取材・文/遠藤圭子 制作/iD inc.

自己表現のひとつとして、今は俳優業を選んでいる

ライブドアニュースでのインタビューは初登場となりますので、まずは、俳優になろうと思ったきっかけから教えてください。
きっかけは、自分の中でもはっきりしていないんですよね。

中学・高校では演劇部だったんですが、大学では文芸学科を専攻しました。ただ、じつは第1志望は東京藝術大学の先端芸術表現科だったんですよ。メディアアートやインスタレーション(展示場所や空間の全体を作品とする芸術)、そういった表現が好きだったんです。

いわゆるアート、自己表現というものと向き合っていくうえで、ひとつの選択肢として現在は演劇を選んでいるような感じですね。僕の中では演劇というものを自己表現の一環として捉えているんです。
「俳優になりたい」というわけではなく、「自己表現の手段として今は俳優をやっている」というイメージでしょうか?
そうですね。大学生のとき、友人に「小劇場で演劇をやるんだけど、出演しない?」と誘われたことがあって、せっかくだからと久しぶりに芝居をしたら楽しかったんですよね。それも俳優を選ぶひと押しになったのかもしれません。

でもどちらかといえば、就職活動が差し迫り、自分が持っている自己表現の手段の中から「今は演劇をやってみるのもおもしろいかな」と思って、「虚構の劇団」(梅津さんが所属している劇団)を受けたという流れになります。
では、俳優以外でやってみたいこともありそうですね。
ひとつの目標として、個展を開きたいと考えています。ただ、個展に来てくださる方がいないと作品は成り立たないという思いもあるんです。

作って終わりでなく、それを見に来てくださる方を増やすには、こうやって公の場に立つことがとても大切だと感じていて。そのためにも、まずは役者かな、と思ったのもありますね。
まずは「自分」を知ってもらう、ということですね。就職先として虚構の劇団に入られたわけですが、劇団に入っていかがですか?
おもしろいです。劇団は、たとえば衣装や楽屋周りのこと、細かなところからみんなで支え合っていかなければならないんです。決して役者が「ただ演技をしているだけ」でいいわけではなく、一から作業に関わって、みんなで作っていくのが劇団の舞台の醍醐味だなって思いました。

もちろん2.5次元舞台にもそういった面はありますが、劇団のほうがより身近な感じはありますね。

2.5次元俳優は、たとえるなら「スターバックスコーヒー」

2017年から2.5次元舞台でも活動されています。2.5次元というジャンルに触れてどんなことを感じましたか?
2.5次元の舞台では、世界観の共有がとても重要なので、そこがとても新鮮でした。もちろん劇団でのお芝居でもそれはあるのですが、お客さんが想定している、求めているであろう“像”に入り込んでいくという意味ではやはり熱量が違うというか。

あと、メインキャストの方たちって…キラキラしてるなって(笑)。

たとえるならスターバックスコーヒーというか。スターバックスで働いていたり、そこにいるお客さんって「自分はスターバックスで働いているんだ」「スターバックスにいるんだ」という自負があるじゃないですか。そういう雰囲気に近しいものを感じます。

だからこそ、最初は本当に気圧されました。なかなかその空気感に入れないというか、うまく突入していくことができなかったです。
とはいえ、梅津さん自身も舞台『刀剣乱舞』では、重要な役どころとなる山姥切長義を演じられていました。
出演が決まってからシリーズをすべて拝見したんですが、まっきーさん(荒牧慶彦)演じる山姥切国広を主軸として話が進んでいく中で、彼にとって重要な存在である三日月宗近(演/鈴木拡樹)がいなくなってしまう。そういうあまりにもしんどいところに、山姥切国広にとって縁の深い山姥切長義が圧をかけていくなんて、すごく大変な作業だなと思いました。

稽古に入る前は、山姥切国広に圧をかけるキャラクターというぼんやりした認識があったんですが、もちろんそれだけが彼ではないので。「こういう解釈があってもいいんじゃないか?」というところを舞台で表現できるように心がけていました。

だから、「山姥切長義が苦手だ」とおっしゃっていた方が、「公演を見て、少し好きになれました」と言ってくださったとき、すごくうれしかったです。
2.5次元舞台の人気作に出たことで、得たものはありましたか?
テクニカルな話なんですが、大きな規模の劇場での演技技法みたいなものがちょっと掴めた気がします。今まで自分が参加していた小劇場のスタイルとは全然違うものがありましたね。
具体的にはどういった違いがあるのでしょうか?
お客さんとの物理的な距離は小劇場のほうが近いので、役者の表情や演技の変化にも気づきやすいと思うんですが、大劇場ではお客さんが取りこぼしてしまうものが多い。じゃあその距離をどうやって埋められるか。それってすごく難しいことだなと思うんです。

「2.5次元舞台の役者は顔がいいだけ」という意見を聞いたことがあるんですが、決してそんなことはないと思っていて、むしろ難しいことを求められるほうが多いと思うんですよね。
単純に、これだけ長い公演期間というのもなかなかないですしね。
公演期間が長いと、どんどん進化していけるんですよね。回を重ねるごとに成長するし、もっとこうしたいという欲も出てくる。舞台として、ひとつの演目で変化を作りすぎるのは、あまりよくないことでもあるんですが。

舞台『刀剣乱舞』に関しては、座組のみんなが貪欲で、日々、「ここはもっとこうしたい」とか「こういう挑戦をしたらどうなるんだろう」とか、そういう探り合いがあってとても楽しかったです。

2.5次元も、劇団も変わらない。荒牧慶彦からの言葉

多くの2.5次元舞台で活躍されている荒牧さんからは、どんなことを学ばれましたか?
舞台『刀剣乱舞』のときは、まっきーさんに演劇という場を使って遊んでいただいた感じです。本当、おんぶに抱っこで甘えてしまいました。

座長を長く務められてきた経験もあるので、とても冷静に周りを見ていて、困っている人やうまくいかないなと感じている人がいると、すかさず見つけて声をかけてくださるんです。なぜ今うまくいかないと思っているのか、どうしたいのか、冷静にあたたかく相談に乗ってくださって。ただでさえ座長という大役を担いながら、他人のことまで気を配れるなんて、本当にスゴい方だと思いました。

大阪公演のときに、お酒を飲みに連れていってもらったことがあって。まっきーさんとふたりでナッツをかじりながら(笑)、僕から「2.5次元舞台の最前線で戦うってどんな感じですか」って質問をさせていただきました。

僕は、劇団と2.5次元の違いについて聞かれることが多いので、それに関していろいろと悩んでしまうんですけど…そのことをまっきーさんにご相談したら、「演劇という観点から見ればどちらも一緒で、どちらもいいところがあるし、そこを自分なりに楽しめばいい。そこに貴賤はないよ」と言ってくださって、勇気をもらいました。
なかなかこういう話は、おおっぴらにはしにくいですものね。
大きな座組に入れていただくと、自分とは違うキラキラとした人たちと関わらせてもらっている、という感覚が強くて。さっきのスタバじゃないですけど…それって、自分の中で無意識に貴賤を感じているから、そう思うのかもしれないと気づかされました。

それでもやっぱり自分からすると周りの人はみんなまぶしくて。考え方や生き方がそもそも違うんだろうと思っていろいろ聞いてしまったんですが…まっきーさんは、最前線で活躍されているからこそ、冷静に、俯瞰で見ていらっしゃっている。まっきーさんのような方が、演劇に対してフラットな考えであることに安心を感じました。

相馬主計として、きちんと“しんどく”なりたい

4月から公演がスタートするミュージカル『薄桜鬼 真改』相馬主計 篇では、主演を務められます。
お話をいただいて、ぜひって感じだったんですけど…なぜ僕が選ばれたのかは、むしろこちらが知りたいです(笑)。
今回は『真改』という、新しいシリーズの第1弾になります。
もともとゲームが好きなので、ゲームの『薄桜鬼』は知っていたんですね。プレイ自体はしたことはないんですが、ショップに行けば必ず目にする作品ですし。舞台も、過去にまっきーさんや(和田)雅成さんが出演されていますし。

そんなスゴい作品の、「いざ新章突入!」という舞台で主演をさせていただくのは、本当に光栄ですし、重圧も感じます。
キャストの方々をご覧になっていかがですか?
井俣太良(近藤勇役)さんは、舞台『GOZEN -狂乱の剣-』で共演したばかりで、川上将大(原田左之助役)さんともご一緒したことがありますし、この方たちから徐々にみんなと仲良くなっていければなと思っています。井俣さんはずっと局長(近藤勇)としてミュージカル『薄桜鬼』に出られているので、むしろ引っ張ってもらいたいくらいです(笑)。
公演に向けて準備していることはありますか?
僕、歌はそんなに自信がないんですよ。先日、舞台『極上文學』でご一緒した荒健さん(荒木健太朗)に「歌ってどうすればうまくなりますか?」と聞いたんですけど、「自分は歌がうまい」という心持ちで変わってくるよと言われたので、その心持ちでカラオケに通っております(笑)。

「歌は数だ」とも言いますし、今はいっぱい歌って、自信を持てるようにしたいです。
相馬主計というキャラクターをどのように演じたいですか?
立ち位置がどんどん変わっていく人物なんですよ、彼。最初は新選組の一隊士で、周囲の人がどんどん亡くなっていく渦中にある「新選組最後の局長」でもある。

ファンの方々の中の“相馬主計”というキャラクター像に最大限沿うのはもちろんなんですが、なんていうんでしょうね…“消耗したい”というのがあって。
“消耗”ですか?
泥臭く演じる、魂をすり減らすと言うと、言葉としては美徳としてひとくくりにされてしまうと思うんですけど。そうでなく、真の意味で、相馬主計としてこの動乱の中にありたい。それってとても心がぐちゃぐちゃするような体験だと思うんです。

歴史を調べただけでも、彼は大変な人生を歩んでいて、すごくしんどい思いをしていて。相馬主計はとても愚直に頑張るキャラクターだということなので、僕も、ちゃんと“しんどく”なりたいです。
最後に、俳優としての今後の目標を教えてください。
目標像みたいなものはないんですが、応援してくださる方に、新しい一面をいっぱいお見せできたらうれしいです。というか、飽きられないようにしたいです(笑)。「こういう演技しかできないんでしょ」と思われないように。

今年と言わず、ずっと長いスパンの話ですが、舞台のあとに「これ梅津だったのか」と気づかせられるような、そんな役者になりたいですね。

1億円が手に入ったらどうする? 素顔に迫る一問一答!

現場では「梅ちゃん」、「梅」、「梅くん」とか。幼なじみからは「みーくん」と呼ばれています。
父、母、僕の3人です。
いっぱいありますが、人生にいちばん影響を与えたのはフランツ・カフカの『城』です。
知らない駅で降りて散策するか、家に引きこもるかです。キャンプとかアウトドアもわりと好きですね。そういうときも、ひとり孤独に山にこもることが多いです。
「やはり」とか?(笑)
自分にないものを持っている人。
僕、あんまりご飯食べないんですよね。「自分、今頑張っているな」と思ったら“肉”を摂取します。
僕、古民家が欲しくて。田舎暮らしとか憧れるんですよね。開墾がしたいです。
もう一度、僕がいいです。今は俳優の道を選んでいますが、ほかの表現を選んでいたらどうなるかを見てみたいです。
消しゴム…のカス。練り消しとして文字も消せるし、そんな感じでどんどん形を変えていける存在でありたいので。
梅津瑞樹(うめつ・みずき)
1992年12月8日生まれ。千葉県出身。O型。虚構の劇団所属。2015年に舞台俳優デビュー。主な出演作は舞台『刀剣乱舞』慈伝 日日の葉よ散るらむ(山姥切長義役)、舞台『GOZEN -狂乱の剣-』(土御門月暗役)、ミラクル☆ステージ『サンリオ男子』〜ハーモニーの魔法〜(梅崎慎矢役)など。2月9日からは舞台「27 -7ORDER-」にも出演する。

公演情報

ミュージカル『薄桜鬼 真改』相馬主計 篇
東京公演:2020年4月2日(木)〜4月5日(日) 明治座(特別公演)
大阪公演:2020年4月9日(木)〜4月12日(日) サンケイホールブリーゼ
https://www.marv.jp/special/m-hakuoki/

サイン入りポラプレゼント

今回インタビューをさせていただいた、梅津瑞樹さんのサイン入りポラを抽選で3名様にプレゼント。ご希望の方は、下記の項目をご確認いただいたうえ、奮ってご応募ください。

応募方法
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受付期間
2020年1月16日(木)12:00〜1月22日(水)12:00
当選者確定フロー
  • 当選者発表日/1月23日(木)
  • 当選者発表方法/応募受付終了後、厳正なる抽選を行い、個人情報の安全な受け渡しのため、運営スタッフから個別にご連絡をさせていただく形で発表とさせていただきます。
  • 当選者発表後の流れ/当選者様にはライブドアニュース運営スタッフから1月23日(木)中に、ダイレクトメッセージでご連絡させていただき1月26日(日)までに当選者様からのお返事が確認できない場合は、当選の権利を無効とさせていただきます。
キャンペーン規約
  • 複数回応募されても当選確率は上がりません。
  • 賞品発送先は日本国内のみです。
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