飯田線には長距離列車が多い(写真:ともっち/PIXTA)

3月にJRのダイヤ改正が実施されるが、今年もさまざまな変更がある。主立ったものを見ていくと、快速「エアポート」の増発(JR北海道)、特急「サフィール踊り子」が登場(JR東日本)、「のぞみ」が1時間に最大12本(JR東海)、特急「はるか」が全列車の9両編成化(JR西日本)、特急「南風」が全列車宇多津駅に停車(JR四国)、大村線に新型ハイブリッド車両登場(JR九州)などがある。個人的に気になったのはJR東海のリリースにあった、こちらの文言だ。

東京―博多間の定期「のぞみ」全列車を5時間以内で運転します。

世の中の大多数、いや、ほぼすべての人にとって、このニュースは「いいこと」だ。だが東京―新大阪間の移動の際、「長い時間電車に乗っていたほうが楽しい」という理由で「こだま」を選択するような自分にとって、長時間運転の列車が減ることは非常に残念だ。

3月に長距離列車の半分が姿を消す

昭和の時代は5時間どころか、夜行列車でもないのに10時間以上走る列車が各地で走っていたが、現在はどれだけ走っているのか。そこで「5時間以上走る列車」はいま、どのくらい走っているのかを時刻表で調べてみた。

ちなみにデータは、2020年1月号の時刻表で調査。ピックアップするのは毎日運転されている定期列車のみで、夜行列車(サンライズ瀬戸、サンライズ出雲)は除外した。

まずは運転本数を調べてみた。

昼間に走る列車で5時間以上走るのは74本あった。意外と多い数字だが、このうち、東京―博多間を走る「のぞみ」が34本。つまり3月ダイヤ改正から5時間以上走らない列車が大幅に減ってしまうのだ。また、JR東日本のリリースで触れられていた、千葉―南小谷間を5時間強で結ぶ特急「あずさ」1本が千葉―松本間に運転区間が短縮され、5時間を切る。74分の35。新たに5時間以上走る列車を設定する可能性がほぼ皆無なことから、5時間以上走る列車のほぼ半分が今度の春に姿を消す。

正確な時刻で運転を行いたい鉄道会社にとって、長時間走る列車はあまり走らせたくないものだ。

もし、東京から大阪に向かう在来線列車があったとして、東海道本線経由の普通列車が走っていたとしたら、東京近郊で起こったドアの戸袋に傘が挟まれたトラブルで、この長距離列車が遅延、遅れたまま大阪へ向かうと13時間後に東京で起きたトラブルが原因で大阪近郊の電車の時間が乱れる可能性がある。そのためか、ダイヤ改正のたびに長時間運転の列車が減っていった。

では、3月以降も生き残る長時間列車はどこを走っているのか。

JR北海道で5時間以上走っているのは9本。うち6本が特急で、札幌と稚内を結ぶ「宗谷」と、札幌と網走を結ぶ「オホーツク」だ。普通列車は3本で、旭川発稚内行は6時間越えの道内最長時間運行列車。新得発釧路行の列車2本は、帯広で30分以上停車することもあり、運行区間が172.1kmにもかかわらず5時間以上かかる列車となっていた。

あの500系ものんびり走る

JR東日本、JR東海は飯田線に列車が集中。JR東海の飯田線内を走る列車や、辰野から岡谷、上諏訪へJR東日本の中央本線に乗り入れる列車など、飯田線を走る列車に9本の長時間列車があった。

また東京と広島を結ぶ「ひかり」が京都―広島間の各駅に停車する効果もあってか、5時間以上のロングラン運行だ(東京―新大阪間がJR東海、新大阪―広島間がJR西日本)。

JR西日本は新大阪と博多を結ぶ山陽新幹線の「こだま」に5時間以上走る列車が集中。7本の列車が5時間以上かけて走っていた。7本の中でいちばん気になる列車は博多発新大阪行の「こだま742号」。この区間を走る「こだま」の中で最も鈍足で所要時間は5時間13分だ。

特筆すべきは使用されている車両が500系ということ。新幹線で初めて時速300kmの営業運転を行い、東京と博多を結ぶ「のぞみ」として初めて5時間の壁を破った500系電車が、東京―博多間のおよそ半分の距離を5時間以上かけて走る。

かつての俊足ぶりを知っている者からすると非常に残念。いや、そんなことはない。トンネルの多い山陽新幹線で、景色をチラチラ眺めながらトンネルの中でそんな思いにふける。そんな旅は楽しいものだ。

JR西日本の在来線は鳥取と新山口を結ぶ特急「スーパーおき」3本が5時間越え。伯備線の倉敷発西出雲行き、西出雲発岡山行きの2本も大台を突破する運行時間となっていた。昭和の時代、東京都中野区や杉並区あたりで暮らしていた人にとって、この普通列車で使われている車両は、一瞬JR中央・総武線の各駅停車の103系電車や、西武新宿線の401系電車に見えて、懐かしく感じるかもしれない。

JR四国は予讃線の高松と松山を結ぶ2本の列車が該当した。このうち1本は、高松12時13分発の快速「サンポート南風リレー号」。JR四国のリリースによると、高松駅を10〜16時台に発車する列車の時刻をパターン化するとのこと。この列車のようなイレギュラーな長距離列車は時刻をパターン化するのに邪魔な存在となるので、12時13分発の列車はいずれ消える可能性がある。

最も長い時間をかけて走る特急列車は?

JR九州は、日豊本線を走る特急「にちりん」「にちりんシーガイア」の計4本が5時間越え。そのうち宮崎空港発博多行きの「にちりんシーガイア24号」が6時間6分と、昼間の特急では日本最長時間を走る列車となっている。

この区間を走る多くの特急は、博多―大分間の「ソニック」と大分―宮崎空港間の「にちりん」に分割されているので、2020年以降も残るのか注目していたが、JR九州のリリースに3月以降の運転が明記され所要時間も6時間6分と変更されていなかった。

普通列車では宮崎発、吉都線、肥薩線経由の隼人行が九州唯一の5時間オーバー。わずか149.0kmの距離を5時間2分かけてのんびり走るので、一般的な感覚をお持ちの方にとっては苦行となりそうな列車だが、筆者のようなタイプにとっては、1度は乗ってみたい垂涎物の列車だ。

今後のダイヤの変更具合によっては、5時間以上走る長時間列車は20本を切ってしまうかもしれない。私のような「特急『白鳥』って、景色を眺めているうちに、あっという間に終点に着くよね。八戸? 違う違う。大阪」(注)というタイプにとっては、3月までの間に時間とフトコロ具合が許す限り乗ってみたい列車ばかりだ。

編集部注:特急「白鳥」には八戸―函館間を2〜3時間で結んでいたものと、大阪―青森間を約13時間で結んでいたものがある。


(出所)筆者作成