上空の飛行機はおもに操縦桿で行きたい高度や方向に向かいますが、一方地上で操縦桿はほぼ使わずに、専用の操縦装置で動かすそうです。どこにあってどうやって動かすのか、フライトシミュレーター施設に聞いてみました。

クルマのハンドルに相当する装置「ティラー」とは

 飛んでいる飛行機はおもに操縦桿を使って、上昇降下や左右の傾きを変えていますが、では地上ではどうしているのでしょうか。


JALのボーイング777型機。前輪の方向が変わっている(2019年12月、乗りものニュース編集部撮影)。

 航空会社で使われている多くの旅客機は、地上走行の時、実はほとんど操縦桿を使いません。

 操縦桿の操作によって連動するのは翼の一部分です。上空では操縦桿でそれらを動かすことにより揚力をコントロールし、行きたい高度や方向に向かいます。一方で、多くの旅客機において、車輪の向きは操縦桿で動かせません。

 ところが、空港の地上走行ではクルマのように前輪の方向を変えて曲がる様子が見られます。現代における多くの旅客機には、地上走行で使う「ティラー」と呼ばれるステアリング装置が備わっており、これはクルマのハンドルに相当し、車輪の向きを変えることができます。ティラーはコクピット左右両端の壁側、窓の下あたりに設置されていることが多いです。

 羽田空港近辺や中部国際空港セントレア内の複合商業施設「フライト オブ ドリームズ」に展開しているフライトシミュレーター体験店「LUXURY FLIGHT(ラグジュアリー フライト)」に、ティラーについて聞いてみました。同店は元パイロットなどの利用者も多いといいます。

――ティラーはどのように操作するのでしょうか?

 ティラーは、コクピット左右両端の壁にくっつけられたクルマのハンドルを動かす、というイメージで操作します。機長が座る左席の場合は、前に倒すと前輪が右向き、手前に引くと左向きになります。一方で副操縦士が座る右席の場合は、その逆です。

機種により微妙に違うティラー でも最も大事な部分は共通

――飛行機の製造メーカーによって操作方法や形に違いはあるのでしょうか?

 形はメーカーや製造時期によって、スティック型やハンドル型などの種類がありますが、操作方法はメーカーが違ってもおおむね同じです。ステアリングの操作感は機種により多少異なりますが、クルマを運転するとき「ハンドルを何度傾けるとこれくらい曲がる」と意識しないように、操縦する人がそれらを意識することは少ないでしょう。


ボーイング787型機のコクピット。赤枠で囲っているのがテイラー(2019年10月、乗りものニュース編集部撮影)。

――ティラーは、どのような機種に備わっているのでしょうか?

 7人から8人乗りの小型機などは除きますが、JAL(日本航空)やANA(全日空)などで使われている機種は、おおむね標準装備されているといえるでしょう。またジェット旅客機だけでなく、ANAグループが運航するボンバルディアDHC8-Q400型機などのターボプロップ機にもティラーはあります。

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 なお、たいていの旅客機は地上走行時に、車輪の向きを変えられるものがティラー以外に備わっています。上空では垂直尾翼の一部分(ラダー)を動かし、操縦桿と組み合わせて左右の方向操作に用いられるラダーペダルです。ただし、車輪の向きを左右へ最大90度近くまで変えられるティラーに対し、ラダーペダルは7度から8度程度。このためラダーペダルは飛行機が滑走路などの中心に来るよう調節に使われる程度だそうです。

 これらのほか飛行機の車輪にはブレーキがついており、左右の車輪ブレーキを組み合わせることで、地上で方向を転換する方法もあります。