外交関係の予定が目白押しの、安倍晋三内閣総理大臣(65)。目玉は、12月23日〜25日の訪中だ。「桜を見る会」をめぐる問題が紛糾するなか、“得意” の外交で、失地回復を狙っているのだろうが、じつはこれまで、安倍外交は成果らしい成果を挙げていない。

 今回は、アメリカとの外交がうまくいっていない理由を、東京大学教授の鈴木宣弘氏に解説してもらった。

「『日米貿易協定』は、日本にとって不公平な内容です。特に牛肉。現状38.5%の関税を、9%まで急激に下げるばかりか、低関税で輸入する枠が追加されて、TPPを超える水準になっている。

 カナダなどからの牛肉輸入が急増するなか、日本の畜産農家は悲鳴を上げています。トウモロコシも275万トン、誰もいらないのに、無理やり買わされる。逆に、日本からの牛肉に対する関税撤廃は、反故にされていますから。

 日本にはTPP以上に譲らせておいて、アメリカは『TPPで約束していた関税撤廃すらやらない』ということは明らかです。しかも、日本にとって唯一のメリットといわれていた『自動車輸出』は、関税撤廃の対象から除外されています。

 日本にとって非常に片務的な、トランプ大統領の選挙対策のためだけの『つまみ食い』協定なのです。そもそもこの協定は、WTO違反なんです。

 自動車の完成品と部品だけで、日本からアメリカへの輸出額の4割を占めています。今回のような、それを含まない形の協定は、2国間協定に関する『実質的に、すべての貿易について関税引き下げとなるものでなければいけない』とするルールに、明確に違反しているんです。

 それを勝手に、『貿易の6割くらいを対象にした協定でいいじゃないか』としてしまえば、世界の貿易ルールが崩壊しますよ」

(週刊FLASH 2019年12月31日号)