0−2というスコア以上に手も足も出ず惨敗した11月のコロンビア戦後に「A代表とはコミュニケーションの質に明らかな違いがある」と嘆いていたキャプテンの中山を中心に、今回は選手だけのミーティングを率先して企画した。

 中山はジャマイカ戦が終わった後に「少なくとも試合前のロッカールームや、アップの雰囲気も多分変わっていると思った。個々にまだ確認はしていないですけど、僕自身の望みもありつつ、手応えを感じていてほしいなと思います」と言っていたが、実際に他の選手のコメントを聞けば、揃ってポジティブな意見を話している。
「選手として自分の意見も出して、周りの意見も聞いて、充実したものになった。練習しながら守備のところを少し。奪われた瞬間に前に走るのが大事だと思っている。後ろに下がるのは厳しいので。前の3人とボランチと再度も共通意識ができていないとああいう守備はできないので。監督も含め突き詰めてやれたと思う。みんな同じ意識でやれたのが良かった」(安部)

「選手ミーティングでは自分のやりたいことを伝えるというか、例えば裕葵がプレスのことを言ったりとか、逆に自分は『いってもいいけど、ここのスペースは埋めてほしい』とか『スライドの時にここが空いちゃうから、そこだけポジションを取ってほしい』とかって。そういう話をみんなでして。そんなに深い話はできていないと思うんですけど、それでも多分みんな、“ここを行ったらこうしたほうがいい”というのが、なんとなくの共通認識として持てたのは大きかったと思います」(岡崎慎)

「1試合を通して前からいこうと。取られてもいいし、取られたらみんなで切り替えればいい、ということを全員で話していたので、それができて良かったかなと思います」(前田)
 こうした選手のコメントからは、今回の活動の充実ぶりが伝わってくる。そうした選手同士のイメージの共有がジャマイカ戦の9−0というスコアに表われたのである。

 約7か月後には東京五輪の本大会を迎える今、限られた時間でもやりようによっては、チームとして仕上がるということを知れたことこそが、今回の活動のなによりの収穫だった。

 もちろん勝って浮かれるような相手ではなかったかもしれないが、来年につながるという意味では、いい締め括りになった一戦――、ジャマイカ戦は、そう評してもいいだろう。

取材・文●多田哲平(サッカーダイジェスト編集部)