2013年にソウルで開催された東アジアカップ(現・E-1選手権)第3戦で、優勝を賭けて男子の日本と韓国が対戦した。この際、韓国の応援団はハングルの横断幕、日本と対立した歴史上の人物の肖像画の幕などを掲出し、対立ムードを煽っていた。

ところが今回は、現在国際関係的に問題を抱える香港vs中国、韓国vs日本の男子が最終日に対戦したものの、横断幕などの掲出はなく、政治的メッセージはほぼ出されることがなかった。

唯一、香港vs中国で香港応援団がメッセージを出そうとしたところすぐに係員が駆けつけ下ろさせ、その後は香港応援団の周りを10人以上の係員が囲んで監視を続け、同じ騒動を起こさせなかった。

また、大会期間中にスタジアムの電光掲示板には「政治的行為と表現」「政治的意思表示のための設置物の搬入」「差別的な言行と行動」を規制するメッセージが表示されることもあった。そしてスタジアムへの入場の際に行われる所持品チェックは厳しく行われていた。

この点について、東アジアサッカー連盟の副会長も務める日本サッカー協会の田嶋幸三会長はこう説明した。

「政治的にいろんなことが起こってたわけですが、サッカーの中でそういうことは絶対に起こさせたくない。そういうことで韓国サッカー協会、日本サッカー協会ともにそこはしっかり準備をしてやりました。政治的なものが入ってこなかったのは素晴らしかったと思うし、ピッチの場でサッカーをとおして戦えたというのはよかったと思います」

かつてサッカーは政治的に利用されてしまった過去があり、国際サッカー連盟は応援の際の政治的主張を禁止している。今回、東アジアサッカー連盟はうまく対応できたと言えるだろう。そしてこういう対応が、今後の標準になってしまったのは間違いない。


【取材・文・写真:森雅史/日本蹴球合同会社】