(高雄中央社)蔡英文総統とのコラボレーション動画を公開した台湾のユーチューバー(Youtuber)、波特王(ポッターキング)が、中国の提携先企業から契約を解除されたことが分かった。提携先が15日、中国の短文投稿サイト「ウェイボー」(微博)で発表した。波特王は同日、フェイスブックで、中国側からの映像削除要求に応じなかったことを明かし、「毎月の損失は小さくないけれど、土下座は本当にできない」と圧力に屈しない姿勢を示した。

動画は14日に公開された。波特王が甘い言葉で蔡総統を口説くという内容で、再生回数は16日午後2時現在、53万回を超えている。波特王は映像の中で「総統」という呼称を使用した。

波特王はフェイスブックで、中国企業側とのやり取りのスクリーンショットを公開。「総統」の2文字が問題視されたことを明かし、「完全に受け入れられない。ばかげている」と不満をあらわにした。さらに、フォロワー数100万人を誇るウェイボーのアカウントのパスワードが勝手に変更されたことにも言及。その上で、「自分の国の元首を『総統』と呼べないなら、こんなお金は稼げなくてもいい」とつづった。文末には「#很多台湾人覚得民主很正常(多くの台湾人は民主主義は普通だと思っている)」「#実際上民主真他媽可貴(実際は民主主義は本当にくそ貴重)」とハッシュタグ(検索目印)を付け、中国側への反発を示した。

中国の提携先、パピチューブ(徐州自由自在網絡科技)は声明で、「波特王がSNS上で発表/行った不当な言動に強い非難を表明する。パピチューブは実に受け入れがたく、契約解除を決めた」と説明。一方で、同社が問題視する具体的な内容への言及はなかった。

波特王が在籍する映像会社の責任者は16日、高雄市内のオフィスで取材に応じ、今回の騒動による損失が数百万台湾元に上ることを明らかにした。中国市場での展開が難しくなる可能性については「問題ない」と述べ、マレーシアや米国市場で展開していく方針を示した。(1台湾元=約3.6円)

▽蔡総統「台湾社会は受け入れがたい」

蔡総統は16日、台北市内で取材に応じ、自身と共演したユーチューバーが中国からの圧力を受けたことについて、「とても遺憾」だとし、「台湾社会は受け入れがたい」と述べた。さらに、「この出来事から、民主主義と国家の安全を守ってこそ、経済や創作の各方面における自由を有することができるということが証明された」とし、民主主義の重要性を訴えた。

(王淑芬、葉素萍、汪淑芬/編集:名切千絵)