白血病を患う少女からもらった“生きる力” 「同じ立場であるはずなのに…」

 アルビレックス新潟のDF早川史哉は12日、都内で自著『そして歩き出す サッカーと白血病と僕の日常』(徳間書店)の刊行記念トークショーを開催。

 白血病との闘病生活を振り返り、入院中にもらった“生きる力”を「今度は僕が届けていきたい」と決意を新たにした。

 U-17日本代表の一員として、2011年のU-17ワールドカップに出場した早川は、16年に新潟に加入。ルーキーイヤーの開幕戦でJリーグデビューを果たし、プロキャリアをスタートさせたが、同年に急性白血病を患い、戦線離脱を余儀なくされた。その後、過酷な闘病生活を乗り越え、2019年10月5日のJ2リーグ鹿児島ユナイテッドFC戦(6-0)で、約3年7カ月ぶりの公式戦復帰を果たした。

「病気からは逃げられない。向き合わなければならない。理不尽に、立ち向かわなければならない」

 マイクを手に言葉に力を込めた早川だったが、入院中に出会った、同じ白血病を患う1人の少女から“生きる力”をもらったという。

「同じ立場であるはずなのに、『頑張ってください』なんて到底言えない。だからこそ、彼女の言葉には心がこもっていた。こんな辛いのに、周りの人の力になれるんだと」

 復帰戦を迎えた日、不安にかられるなかで、少女の作ってくれたアルビレックスカラーのアクセサリーが「背中をそっと押してくれた」と振り返った。恩人でもある少女はすでに亡くなっている。ピッチに帰ってきた早川は、「今度は僕が力を届けていきたい」と自身に誓った。

「病気で孤独を感じたからこそ、今、様々な人と話せる幸せを実感している。サッカー選手としては、もちろん病気にならないほうがいいに決まっている。でも、人として、このような経験が、ゆくゆくは自分になくてはならないものだったと言えるように、生きていきたい」

 今季J2リーグで8試合に出場した早川の来季の目標は「初ゴールを記録すること」であり、「それでみんなの笑顔が見られたらいいな」と口にした。早川のプロサッカー選手としてのキャリアは、まだ始まったばかりだ。(Football ZONE web編集部・城福達也 / Tatsuya Jofuku)