by Nick Morales

2018年に行われた調査によると、飛行機の乗客の94%が「飛行機内でインターネットに接続できることで旅行体験が向上する」と答え、30%がフライトの予約理由に「機内W-Fiが使えるから」と答えたそうです。高度1万メートル近くを時速900kmで飛ぶ飛行機でどうやってインターネットの接続環境を整えているのか、ライターのSarvesh Mathi氏が説明しています。

The Magical Science of Wi-Fi on Airplanes - OneZero

https://onezero.medium.com/what-makes-it-possible-to-browse-the-internet-at-35-000-feet-1afaea83eb5

Mathi氏によると、飛行機がインターネットに接続する方法には主に2種類あるとのこと。

◆1:Air To Ground(ATG)システム

ATGシステムでは「Air To Ground(空対地)」という名前の通り、地上に設置された電波塔と飛行機の間で無線周波数信号をやりとりして通信を行うというもの。

例えば、機内インターネット提供サービス企業のGogoがリリースしているATG-4システムでは、地上からの無線をキャッチするためのアンテナが飛行機の腹の下に2基、側面に2基とりつけられます。また、機内にはサーバーがあり、乗客が接続するためのWi-Fiのアンテナが機内にいくつもとりつけられており、システム自体は一晩で飛行機に導入できるとのこと。そして、ATG-4システム用の電波塔は北アメリカ大陸全域に、全部で200基以上設置されているそうです。



ただし、Mathi氏によれば、ATGシステムは800MHzという低周波の電波で通信を行うため、フライト中の通信速度はせいぜい10Mbpsに制限されるのが欠点だとのこと。この速度では、メールのチェック程度であれば十分ですが、快適なインターネットサーフィンは期待できません。また、砂漠や海といった電波塔がほとんど存在しないエリアの上を飛ぶ場合は、インターネットに接続することができなくなってしまいます。そのため、ATGシステムは国内便によく使われるものの、国際便ではほとんど採用されていないそうです。

◆2:衛星システム

飛行機内のインターネットを実現するための方法には、ATGシステムの他に人工衛星を使ったシステムも存在します。このシステムに対応した飛行機は上部にアンテナを搭載しており、地球を周回する人工衛星を中継して地上のデータセンターと通信することが可能。衛星システムは北極と南極以外であればどこでも通信できます。



Gogoが提供する衛星システムでは、12GHzから18GHzという帯域のKuバンドと、26.5GHzから40GHzという帯域のKaバンドの電波が利用されています。そのため、30Mbpsから100Mbpsという地上とそれほど変わらない速度での通信が可能というのが衛星システムの大きなポイントです。

ただし、衛星からの信号を受信するため、飛行機に搭載されたアンテナは常に衛星の方向を向くように回転する必要があります。飛行機と通信を行う人工衛星は秒速7.9kmという第一宇宙速度で移動しており、高い精度で複雑なアンテナ制御を行う必要があるため、ATGシステムよりも圧倒的にメンテナンスにコストがかかるのが欠点となります。以下の画像が衛星と信号をやりとりするアンテナ。



また、データの通信距離が大きくなるため、どうしても通信ラグが大きくなるのも衛星システムのデメリットです。さらに、衛星システム用のアンテナは飛行機の外側に装着するため、形状によって飛行機の空気抵抗が増し、燃費の悪化につながるとMathi氏は指摘しています。

Mathi氏によれば、多くの航空会社が飛行機内でのインターネット接続に収益性を見出しており、1フライトあたり15ドル(約1600円)〜20ドル(約2200円)というような有料のインターネット接続プランを提供するプランも増えているとのこと。また、Gogoは第5世代移動通信システム(5G)を2021年までにアメリカとカナダのATGシステム搭載機に提供する計画を推進しています。

Mathi氏は、「より優れた衛星、より優れたアンテナが登場し、より多くのインターネットサービスプロバイダが参加することで、家でインターネットをするのと同じように飛行機の中で快適にインターネットへ接続することが可能になるでしょう。これは悲しいことに、『飛行機に乗ってたからメールに返信できなかった』という言い訳も通用しなくなることを意味します」と述べました。