大学受験を控えた高校3年生の夏からコツコツと――。

歴史上の哲学者をキャラクター化した倫理のノートが、ツイッターで注目を集めている。


くりくり髪のカントが!(画像はOZ(@Oz01_)さんから)

こちらのアンニュイな顔をした美少年は「純粋理性批判」、「実践理性批判」、「判断力批判」などの三批判書で知られるドイツの哲学者イマヌエル・カントである。ノートには、教科書や資料集から書き起こされた美少年のプロフィールともとれる書き込みがビッシリと。

「教科書や資料集を読み倒して、哲学者1人1人を自分のド偏見でキャラクター化させて遊んでいました。愛着湧いて脳に入りやすいです」

そう述べる投稿者のノートは、いったいなぜ生まれたのだろうか。気になってしかたがないので、Jタウンネットは投稿者に詳しい話を聞いてみた。

書籍化の話も舞い込んだ


古典期ギリシアを代表する哲学者「ソクラテス」

「このノートを作り始めたのは、高校3年生の夏休み後半(8月)からだった気がします。正直サボった日もあったのでノートが完成(?)したのは冬休み(12月末)に入ってからだったと思います笑」

2019年12月13日、Jタウンネットの取材にこう答えるのは、ツイッターユーザーのOz(@Oz01_)さんだ。受験勉強がとにかく苦痛で仕方なく、その期間に趣味の絵をどうしても描きたかったと話す。

「『キャラブックを作る感覚で勉強すれば楽しいんじゃないか?』と思って、教科書や資料集を読んで哲学者を勝手にキャラ立てし、絵を描いていました。この落書きなら親も先生も許してくれるだろうと」


クラウンが載るホッブス

キャラクターは、該当する哲学者の思想や実際の写真を元に描いている。偏見も多いと話すが、例えば、近代的な国家観を提示した「リヴァイアサン」の著者と知られるイギリスの政治思想家「ホッブス」には、「国王を主権者とした人」として王冠を載せたと話す。


左には、ニーチェ。右にはキルケゴールが

教科書や資料集を読み込み、その哲学者の経歴や実績、考え方をキャラに落とし込んでいく。

「ニーチェやカントは、写真をもとに描いています。横顔に手を添え、そして怖い顔をしています。カントは耳の横の髪の毛がくるくるだったり...」

こう語る彼女は現在20歳。なんと芸術系の大学に現在通っているという。「倫理」から「芸術」へ。芸術の道は、豊かな発想力が必要なのかもしれない。倫理のノートは反響が大きく、「書籍化してほしい」「欲しいです!!」といった声も寄せられた。

「書籍化して欲しいとの声が多く、とても嬉しいです。ただ、今回や最初にノートをツイートしたとき(2018年2月頃)も、何件か書籍化のお声がけをいただいておりますが、お断りさせていただいています」

その理由は、なぜなのだろうか。彼女は、まるで哲学者のように口を開き、話し出す。

「(知識と言うものは)教科書や資料集を読み、頭の中で整理しつつノートに書くことで、初めて脳に定着していくものだと考えます。たしかにこういった受験科目のキャラクター本が書籍化すれば、興味を持たれやすいかもしれませんが、それでは『参考書を買って読む』だけになってしまいます。

私が言いたいのは、『自分で本を作り上げていたら脳に入りやすかったよ。そのためには教科書や資料集を読み倒すことが必須』ということです。だってキャラクターとかは『私』が思想を解釈して作ったんですもの。ですので、ぜひ自分のキャラクター本をつくっていただけたらなと思います」


「国家」の著者プラトンは「哲人王」かのごとく拳を握る


アリストテレスはキリっとした流し目でプラトンの「イデア論」批判をしたのだろうか

自分で教科書や資料集を読み込んだからこそ、「私」だけの倫理のノートが出来上がったのだ。

彼女は最後にこう述べた。

「私は受験をきっかけに、倫理や哲学を学びましたが、誰しも一度は触れて欲しい科目です。これからどう生きればいいのか、誰を、何を信じればいいのかわからない学生さんとかは特に!これを機に『倫理』に興味を持っていただけたらとても嬉しいです」

彼女の倫理のノートは、「私」の人生の指針なのだ。