客の「ツケ払い」に悩む飲食店の店主が、弁護士ドットコムに質問を寄せました。問題の客のツケは約30万円にもなります。

どんな事情で、飲食費用がそこまで高額になったのかは不明ですが、ツケ払いの締め切りに入金はなかったそう。その後も「友達にもたせる」「父親が振り込んだ」「振り込みにエラーがあったようだ」などと、説明は二転三転しました。

最初にもうけた入金予定日から3カ月が経過したため、相談者は支払う気がないと考えるようになったといいます。この客は、罪に問われる可能性はないのでしょうか。仲田誠一弁護士に聞きました。

●「ツケ払いを申し出た時点で、支払う意思があったかどうか」

「刑法246条に定められた詐欺罪は、『人を欺いて財物を交付させた』あるいは人を欺いて『財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得された』行為に成立します。

もちろん、行為者の故意が必要です。そのため、ツケ払いを申し出た時点で行為者に支払う意思があったかどうかで、詐欺罪が成立するか否か、結論は異なります」

ツケ払いを申し出た時点で、支払う意思がない場合のみ「詐欺」に該当する、ということでしょうか。

「そうです。ツケ払いを申し出た時点で支払う意思がなければ、詐欺行為があったと評価できます。店は騙されて、商品やサービスを提供しているのですから、詐欺罪が成立します。もっとも、故意を立証することは簡単ではないのが実情です。

これに対して、ツケ払いを申し出た時点で支払う意思があったならば、人を騙す故意がありませんね。詐欺罪は成立せず、民事上の債務不履行の問題となるだけです」

なお、問題の客はさまざまな言い訳を繰り返し、支払わずにいます。このことは詐欺罪がどうか考えるにあたって影響しないのでしょうか。

「その客は、債務の弁済の一時猶予のため、説明が二転三転したのですね。事実上、債務を免れたのと同じような状態を作り出したようなケースでは、詐欺罪が成立する可能性があります」

【取材協力弁護士】
仲田 誠一(なかた・せいいち)弁護士
銀行勤務を経て、弁護士登録。破産・民事再生案件、相続、企業法務、M&Aなど幅広い案件に携わる。ほかに、認定経営革新等支援機関(中小企業庁)、広島大学大学院法務研究科客員准教授(税法、2015年度から各前期)など。
事務所名:なかた法律事務所
事務所URL:http://www.nakata-law.com/