毎月、新たに発売されるビジネス書は約500冊。いったいどの本を読めばいいのか。読書家が集まる本の要約サイト「flier(フライヤー)」で、11月にアクセス数の多かったベスト20冊を紹介しよう--。
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第1位:『すごい準備』(栗原甚著、アスコム)
第2位:『たった1分で仕事も人生も変える 自己紹介2.0』(横石崇著、KADOKAWA)
第3位:『時間術大全』(ジェイク・ナップ/ジョン・ゼラツキー著、櫻井祐子訳、ダイヤモンド社)
第4位:『時間革命』(堀江貴文著、朝日新聞出版)
第5位:『改訂新版 書く技術・伝える技術』(倉島保美著、あさ出版)
第6位:『会社では教えてもらえない 集中力がある人のストレス管理のキホン』(川野泰周著、すばる舎)
第7位:『新しい経営学』(三谷宏治著、ディスカヴァー・トゥエンティワン)
第8位:『奇跡の経済教室【基礎知識編】』(中野剛志著、KKベストセラーズ)
第9位:『未来の地図帳』(河合雅司著、講談社)
第10位:『読みたいことを、書けばいい。』(田中泰延著、ダイヤモンド社)
第11位:『成功する日本企業には「共通の本質」がある』(菊澤研宗著、朝日新聞出版)
第12位:『諸葛孔明 人間力を伸ばす7つの教え』(姚磊/金光国/李夢軍著、高崎由理訳、日本産能協会マネジメントセンター)
第13位:『秋本治の仕事術』(秋本治著、集英社)
第14位:『五輪書 わが道をひらく』(前田信弘編訳、日本能率協会マネジメントセンター)
第15位:『カスタマーサクセスとは何か』(弘子ラザヴィ著、英治出版)
第16位:『「戦争と平和」の世界史』(茂木誠著、TAC出版)
第17位:『本業転換』(山田英夫/手嶋友希著、KADOKAWA)
第18位:『オリジン・ストーリー』(デイヴィッド・クリスチャン著、柴田裕之訳、筑摩書房)
第19位:『ニューヨークのアートディレクターがいま、日本のビジネスリーダーに伝えたいこと』(小山田育/渡邊デルーカ瞳著、クロスメディア・パブリッシング)
第20位:『ラグビー知的観戦のすすめ』(廣瀬俊朗著、KADOKAWA)

※本の要約サイト「flier」の有料会員を対象にした、2019年11月の閲覧数ランキング

■相手の心を動かす「準備」のコツ

栗原甚『すごい準備』(アスコム)

11月の第1位は『すごい準備』でした。究極の準備とは、「相手の心を動かす技術」。準備のコツさえつかめれば、「最高の結果」が手に入ります。

「ぐるナイ」「行列のできる法律相談所」「¥マネーの虎」など、数々の人気番組を手がけてきた敏腕プロデューサーである著者の栗原甚氏は、「準備が9割」と断言します。本書は栗原氏が生み出した、相手の心を動かす伝え方、交渉の本質やそのノウハウなど、あらゆる「すごい準備」が公開されています。

交渉と聞くと、「取引先と価格や納期の交渉をする」「プロジェクトを遂行する上で他部門と交渉する」など、仕事のことを想像するかもしれません。しかし「好きな相手に思いを伝える」「妻にお小遣いアップをお願いする」など、恋愛や家庭の場面でも交渉は行われます。

仕事でも恋愛でも家庭でも、準備のコツをつかみ、最高の結果を手に入れる。戦略思考をお持ちの方には、とりわけ刺さる一冊です。

■「自己紹介」から人生を変える

第2位は『たった1分で仕事も人生も変える 自己紹介2.0』です。これからは「組織の時代」ではなく「個の時代」。そして「個の時代」だからこそ、人とのつながり、人からの信頼を得ることが、ますます重要になります。

横石崇『たった1分で仕事も人生も変える 自己紹介2.0』(KADOKAWA)

「自己紹介」のハウツー本だと思って本書を手に取ると、良い意味で予想を裏切られるでしょう。今の時代に必要とされる「自己紹介」とは何かを問い直すとともに、自分の生き方そのものについても考えさせられるからです。

会社組織が疲弊している今、もはや「1つの企業、1つの人生」という時代は終わりました。こうした社会では、コミュニティーや業種、分野などを「越境」することが、新しい価値を創造するカギとなります。そして越境において重要なのは人と人をつなぐツール、すなわち「自己紹介」というわけです。

本書には自己分析のための書きこみ式のワークシートも収録されているので、腰を据えて自分を見つめ直したい人は、ぜひこちらのワークに挑戦を。自己紹介のアップデートに役立つでしょう。

■「時間がない」本当の原因

ジェイク・ナップ/ジョン・ゼラツキー著、櫻井祐子訳『時間術大全』(ダイヤモンド社)

第3位は『時間術大全』でした。GoogleやYouTube出身の「時間オタク」たちのメソッドが一挙公開されています。

現代人は常に時間に追われており、「時間がない」という言葉が至るところで飛び交っています。それはなぜでしょうか。実はやることが多いからでも、生産性が低いからでもありません。忙しいのをよしとする「多忙中毒」がはびこるとともに、スマホのアプリなどコンテンツが絶えず補充される「無限の泉」に主導権を奪われてしまっているからです。

本書が多くの読者の心をとらえ、世界的なベストセラーとなったのは、「時間を主体的にデザインできているか」という課題に対し、本質的かつ実践的な考え方や戦術を提案しているからと言えます。読み終えたそばから、スマホのアプリをどんどん削除したくなる衝動に駆られるはず。まさに日々の行動を変える力を秘めた、新時代の時間術決定版です。読み逃しのないように。

■経営学の入門書に挫折した人向けの1冊

ここからは4位以下の書籍から、注目の書籍をご紹介します。

三谷宏治『新しい経営学』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)

第7位の『新しい経営学』は、これまでの経営学の入門書に挫折してしまった方におすすめの一冊。『経営戦略全史』や『ビジネスモデル全史』などでおなじみの三谷宏治氏による、新時代の「ビジネスの教科書」です。

MBA(経営学修士)では、マーケティングやアカウンティングなど、さまざまな分野の基礎知識を学びます。各分野の専門家が、それぞれ専門別のテキストを使って教えるのが一般的でしたが、本書は、経営に必要なあまたの基礎知識を、横串を通すようにして読者に提供するという、まったく新しい試みに挑戦しています。

さらには理解の助けとなるよう、豊富な事例や各トピックの理解度を試すオリジナル演習問題まで掲載されているという充実ぶり。本書を通じて身につけた知識は、一生使える武器になるでしょう。経営視点を身につけたい方、起業したい方はもちろん、経営学を敬遠してしまっている方にこそ、ぜひともおすすめしたい一冊です。

■「MMTがわからない」とは言えない人へ

中野剛志『奇跡の経済教室【基礎知識編】』(KKベストセラーズ)

第8位にランクインした『奇跡の経済教室【基礎知識編】』は、いま注目を集めるMMT(現代貨幣理論)をわかりやすく解説したものです。なぜ日本はデフレに苦しめられているのか、そしてデフレを解消するためにはどうすればいいのか。MMTでは主流派の経済学では考えられないような主張が、次々と登場します。「デフレ下ではいくら財政赤字を拡大しても大丈夫」「日本の財政破綻はあり得ない」「財政健全化はやっても無駄」……こうした主張を頭ごなしに否定するのは簡単です。しかし既存の理論がこの国の経済動向をうまく説明し、望ましい方向へ導けているかどうか、いま一度考えるべきではないでしょうか。

貨幣への正しい理解が欠如している限り、デフレ脱却は望めません。日本経済の再生は、貨幣を正しく理解することから始まります。貨幣の理解について総点検するうえで、本書ほど適したものはありません。MMTの基礎知識がしっかり身につく良書です。

■『こち亀』作者が40年書き続けられた理由

第13位『秋本治の仕事術』も注目です。著者の秋本治氏は、マンガ『こちら葛飾区亀有公園前派出所』(以下、こち亀)を200巻まで描き上げ、芸術・文化の分野で活躍した人に贈られる紫綬褒章を受章しました。なぜ『こち亀』を40年休むことなく描くことができたのか? この本の中で、秋本氏みずからがその秘訣を語っています。

秋本治『秋本治の仕事術』(集英社)

秋本氏の仕事術は、働き方が多様化する現代において、自身をマネジメントしていく際にも大いに役立ちます。また40年間にわたってマンガのアイデアを出し続けてきた発想術も公開されており、クリエーティブな仕事にも活用できます。なにより「目の前にあることをこなし、ひとつひとつ積み重ねる」という長期的な持続力の大切さを、これほど説得力をもって語っている本はなかなかありません。

『こち亀』を読んだことがある人にはもちろんのこと、『こち亀』を読んだことがなくてもも、秋本治氏の仕事哲学が伝わってくる一冊です。

先月から続けてランクインしたのは、『時間術大全』(第5位→第3位)でした。2カ月連続で多くの方に読まれており、現代人の抱える問題意識が反映されていると言えます。来月のランキングはどうなるのか、引き続き注目です。

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(flier編集部)