依存症の専門治療を行う国立病院機構久里浜医療センター(神奈川県横須賀市)は27日、全国初となるゲーム使用状況などに関する全国規模の実態調査の結果を発表した。

●「ネット・ゲーム使用と生活習慣についてのアンケート結果(概要)」
 https://www.ncasa-japan.jp/pdf/document15.pdf

「ネット・ゲーム使用と生活習慣に関するアンケート調査」

調査は今年1〜3月に全国の男女9千人を対象として実施され、5096人が回答。全国の10〜29歳の約33%が1日当たり2時間以上オンラインゲームなどをしており、うち2.8%は「6時間以上」と回答した。ゲームによる影響に関する回答からは、プレイ時間が長い人ほど学業・仕事への悪影響だけでなく心身の問題も起きやすいことが明らかになった。

1963年に国内初のアルコール依存症専門病棟を設立した同センターは、2011年にやはり国内初となるネット依存専門外来を開設。世界保健機関(WHO)による「ゲーム障害(Gaming Disorder)」の疾患認定にも深く関わった、日本における依存症治療の草分け的存在だ。同センターは、厚生労働省の依存症対策全国拠点機関設置運営事業に基づき、依存症全国拠点機関(依存症対策全国センター)に指定されている。

今回公表された調査はあくまでもゲームの使用状況や生活への影響に関する実態調査。ゲーム障害・依存症の診断基準や治療ガイドラインの確立までの道のりは長いが、初の全国規模の調査として重要なステップだ。

折しも26日、ゲーム業界4団体(一般社団法人コンピュータエンターテインメント協会、一般社団法人日本オンラインゲーム協会、一般社団法人モバイル・コンテンツ・フォーラム、一般社団法人日本eスポーツ連合)は、ゲーム障害に関する独自の調査・研究の実施概要を公表した。調査・研究は公正中立で専門性を持つ外部有識者による研究会(委員長:坂元章/お茶の水女子大学教授)が担当する。今年度は全国調査の際に使用する測定尺度を決定するための「尺度調査」を実施し、2020年度に全国調査を実施するという。

「ゲーム障害」とは

「ゲーム障害」とは、日常生活よりもゲームを優先してしまう依存症。2022年から全世界で使われるWHOの「国際疾病分類(ICD)」の最新版、通称「ICD-11」で治療が必要な病気として認定された。WHOが策定したゲーム障害の主な診断基準は以下の通りまだ概要的なもので、具体的な診断基準や有効な治療ガイドラインの確立に向け、各国の医療機関などで研究が進められている。

・ゲームをする時間や頻度などを自分で制御できない
・日常生活において他の何よりもゲームを優先させる
・日常生活に問題が生じてもなおゲームを続ける
・上記3つの条件に当てはまる状態が12ヶ月以上続き、
 社会生活に重大な支障が出ている

WHOは依存症を「精神に作用する化学物質の摂取や、快感・高揚感を伴う行為を繰り返し行った結果、さらに刺激を求める抑えがたい渇望が起こり、その刺激を追求する行為が第一優先となり、刺激がないと精神的・身体的に不快な症状を引き起こす状態」と定義している。アルコールや薬物、ギャンブルなど、個々の依存症には固有の要素や症状があるものの、依存症の本質はこの定義に集約される。

依存症対策全国センターのウェブサイトには、今回の調査に関する情報を除くとまだゲーム依存症の情報は掲載されていないが、アルコール依存症、薬物依存症、ギャンブル依存症などへの対応や対策に関して、一般向けの具体的な情報発信を行っている。

【参考】

●依存症対策全国センター
 https://www.ncasa-japan.jp/

「ゲーム行動等実態調査の概要」
 https://www.ncasa-japan.jp/pdf/document15.pdf
「ネット・ゲーム使用と生活習慣に関するアンケート調査票」
 https://www.ncasa-japan.jp/pdf/document16.pdf
「ネット・ゲーム使用と生活習慣に関するアンケート調査結果」
 https://www.ncasa-japan.jp/pdf/document17.pdf

●厚生労働省:「依存症の理解を深めるための普及啓発事業」特設サイト
 https://www.izonsho.jp/

医師・専門家が監修「Aging Style」