地震、津波、家事、台風、豪雨……。災害大国日本で自分と家族を守り生き延びるにはどうしたらいいのか。防災士でイラストレーターの草野かおるさんは「完璧な防災設備も防災マニュアルもありませんが、知識を知っているのと知らないとでは、大きな差があります」という。「防災の基本」を草野さんの4コマ漫画を交えてお伝えしよう――。(前編/全2回)

※本稿は、草野かおる『新みんなの防災ハンドブック』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)の一部を再編集したものです。

■世界の大地震の2割は日本で起きている

豊かさと残酷さは表裏一体

地球表面を移動するプレート。そのプレートが4枚集まる、世界でも珍しい地点。この地点に日本列島があるということを、知っていますか?

そのため、私たちが住む日本は、世界有数の火山国であり、地震国となりました。日本国土は、世界の大地のわずか0.25%しかありませんが、世界の大地震(マグニチュード6以上)の2割以上が、日本周辺で発生しています。

イラスト=草野 かおる(以下同)

美しい山々、温泉、豊かな漁場……。恵みと残酷さを持ちあわせているのが「自然」なのですね。

■太古の昔から、日本は災害とつき合ってきた

日本人は知恵と工夫で乗り切ってきた

日本は、「天変地異」として、昔から数限りない災害に見舞われてきており、多くの資料も残っています。

地震のほか、夏や秋にはすさまじい威力を持つ台風がやってきて、農作物も脅威にさらされてきました。そのようななかで、日本人は、知恵をしぼり、工夫で災害を乗り切ってきました。子孫に対する警告として、日本中に災害に対する言い伝えや伝説も残っています。たとえば、「井戸が枯れる」「深海魚が打ち上げられる」のは地震の前触れという言い伝えがあります。

今一度、災害予知の観点から、検証してみてもいいのではないでしょうか。

■通勤時&仕事中に災害発生! 何をすべきか何をしてはいけないか

【状況別地震対策1:会社で】凶器になるキャスター付きの重量機器に注意!

会社は比較的じょうぶな建物の中にあるはずなので、落ちついて行動しましょう。ガラスが破損する危険性があるので、窓から急いで離れるようにしましょう。書類棚やロッカー、キャスター付きコピー機などにも気をつけて。地震による大きなゆれがおさまったら、オフィス内の安全確認、火の元の確認を行います。その後、避難しましょう。

【状況別地震対策2:地下街で】地下街はパニックにならなければ意外に安全

草野かおる『新みんなの防災ハンドブック』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)

地下街はじょうぶにつくられています。あわてず、太い柱や壁に身を寄せて様子を見ましょう。もっとも怖いのは、火災とパニックです。火災が発生したら冷静にまわりの人と協力して消火活動をしましょう。避難するときは身をかがめてハンカチで口をふさぎ、壁づたいに避難しましょう。

地下街では60メートルごとに非常口が設置されています。落ちついて、すいている出口を探しましょう。また、非常口にたどり着いてもいきなり屋外には出ず、必ず周囲の状況を確かめてから外に出るようにしましょう。

■地下鉄や電車に乗車中に地震にあった時に助かる方法

【状況別地震対策3:電車で】パニックにならず車内放送に耳をすます

電車は強いゆれを感知すると緊急停車します。座席に座っている場合は、低い姿勢をとって頭をカバンなどで守りましょう。立っているときは、手すりやつり革かわをしっかり握って転ばないようにします。停車後は乗務員の指示に従いましょう。

とはいえ、北海道のトンネル脱線事故では、乗務員がマニュアルにこだわりすぎて、煙が発生しているのに火災が起きるかもしれないということを想定せず、乗客を危険にさらしてしまいました。時と場合によっては、自分で考え、助け合って行動しましょう。

【状況別地震対策4:地下鉄で】場所によっては水が流れこむ危険も

地下ということで、不安感が増す地下鉄。地下鉄が緊急停止した時は、勝手に線路に飛び出さず、乗務員の案内を待ちましょう。地下鉄のドアは非常用のドアコックで開きますが、高圧電線に接触感電したりする恐れがあります。

また、「海抜ゼロメートル地帯」や「海岸地域」などは津波や河川の水が流れ込む危険性があります。津波がくるまで、またトンネルを通じて浸水してくるまでには、それなりに時間がかかります。パニックにならず、冷静に行動すれば避難できます。

■すわ地震! パニックにならずに頭をカバンで守れ

【状況別地震対策5:駅のホームで】落下物に注意して冷静に行動する

駅のホームは、自動販売機、時刻表示板、モニター用テレビなど、地震が起きたときに危険になりうるものがたくさんあります。ホームで電車を待っているときに地震が起きたら、まず、頭をカバンなどで保護して、安全な柱のかげに避難しましょう。混雑する時間帯でホームに人があふれていたら、頭をおおってホームにうずくまり、転倒を防ぎましょう。パニックによる将棋倒しがもっとも危険です。

【状況別地震対策6:オフィス街で】空からの落下物や車に注意する

地震が起きたときのオフィス街で、空から看板や窓ガラスが落ちてくる中、人々が逃げ惑う映像をテレビで見たことがあるかもしれません。ガラスはコンクリートに落ちると粉々になり、そのかけらが四方八方に飛び散ります。また、歩道は危険だからと車道の中央に避難しても、走ってきた車が停止してくれなかったら大事故になってしまいますよね。頭上だけでなく、走っている車にも十分注意が必要です。

----------
草野 かおる(くさの・かおる)
イラストレーター/防災士
セツモードセミナーを卒業。出版社勤務の後イラストレーターとして活動。夫と2人の娘あり。雑誌を中心にカットやイラストルポなど手がける。PTA、自治会を通じて16年に渡り防災勉強会や防災訓練などで防災活動に関わったことを生かし、東日本大震災の数日後、ブログにて発信を始め、現在はツイッターでも多くのアクセスを集める。2018年には防災士の資格を取得する。著書・共著に「おかあさんと子どものための防災&非常時ごはんブック」「「食事」を正せば、病気、不調知らずのからだになれる ふるさと村のからだを整える「食養術」」(どちらもディスカヴァー・トゥエンティワン刊)「伊豆の山奥に住む仙人から教わったからだがよみがえる「食養術」: ダメなボクのからだを変えた 秋山先生の食養ごはん」(徳間書店)がある。
----------

(イラストレーター/防災士 草野 かおる)