浜松市教育委員会が市立小中高校の教職員を対象に、私用のスマホを職員室外に持ち出すことや授業・部活動中に使うことを原則、禁止するガイドラインを策定し11月18日、校長会議で周知しました。学校内外での盗撮など、スマホを使った教職員の不祥事が相次いだことを受けた措置ですが、ネット上では「機械を悪者にしている」「時代に逆行」「禁止はおかしい」などの批判が出ています。浜松市教委教職員課の人事担当者に聞きました。

SNSメッセージや盗撮などの不祥事…

Q.今回策定した「教職員のSNS利用に関するガイドライン」の概要を教えてください。

担当者「私用スマホを職員室外に持ち出すことや、授業・部活動中に使用することを原則禁止としています。SNSを使った、児童生徒や保護者との個人的なやりとりも原則禁止です。部活動の対外試合や修学旅行などの校外活動などでスマホが必要な場合は、事前に管理職(校長)の許可を得ることにしています。

誤解されている部分があるようですが、あくまで『原則』禁止であって、やみくもに全部だめだということではありません。スマホの使用を管理職が承知していることが大事なのです。お恥ずかしいですが複数の不祥事がありました。一番言いたいことは、教職員の倫理観が大事でもう一度使い方を見直し、教育公務員としての倫理・節度を守り、信頼を損なわない使い方をしてください、ということです」

Q.なぜ、ガイドラインを策定したのですか。

担当者「先述した通り、不祥事が複数あったためです。女子生徒にSNSで『好き』『会いたい』などのメッセージを送信して停職処分となった男性教諭や、校内での盗撮で懲戒免職となった教員、商業施設のエスカレーターで女性のスカート内を盗撮して懲戒免職となった教員もいました」

Q.お手本となりそうな児童のノートをスマホで撮影して授業で活用したり、体育で動画を活用したりするなど、スマホを授業に活用する好事例もあったようですが、そうした機会を奪う懸念はないのでしょうか。

担当者「確かにその懸念はあります。校長会議でも話しましたが、熱意ある先生の足を引っ張るつもりはありません。正しい使い方であったり、児童生徒の安全上必要であったりする場合は、使う目的などを話して、校長が承知した上で使わせてあげてくださいと言っています。ただ、学校にタブレット端末を配備していますので、まずは、それを利用してもらうのが原則です」

Q.そのタブレット端末が2台しかない学校があるとも聞きました。今後、端末を増やす予定は。

担当者「2台しかない学校があるのは事実です。それが、ガイドラインで『原則禁止』として、一律禁止に踏み込めない理由です。ICTで教育効果を挙げている例もある中で、教育委員会が十分に設備や備品を整えられていないのは認めます。設備や備品の予算を増やしていけるよう努力します」

Q.ちなみに、児童生徒のスマホ所持はどうなっているのでしょうか。

担当者「市立高校は許可制です。小中学校は原則禁止ですが、子どもそれぞれの事情があるので、塾で遅くなるなどの理由がある場合は許可制にして、登校したら職員室に預けて、下校の際に受け取って帰るという学校が多いようです」

Q.校内であっても緊急連絡が必要な場合など、スマホがあった方が便利に思えますが、いかがでしょうか。

担当者「学校の設備状況によりますが、プールや体育館に校内電話がある学校もあります。ない場合、トランシーバーを使ったり、それもなければ校長の許可を取ってスマホを持っていったりしてもらうことは可能です」

「一律禁止はおかしい」との声も

Q.ネット上では「機械を悪者にしているのでは」「99%の先生は問題ないのに一律禁止はおかしい」「教育の情報化推進に逆行している」という声もあります。

担当者「『禁止』という言葉だけをもって言われているのかなと思います。『原則禁止』であって、『一律禁止』にする気はありません。不届きな先生がいたためにこうなりましたが、ICTの教育効果を否定するものではありませんし、緊急避難的に使うことを否定するものでもありません。

先生たちに今一度、自分の持っているスマホを教育現場で使うことはどういうことなのか、見直してほしいのです。節度を持って使ってもらうためには、どこかでラインを引いておきたいということで、ガイドラインを作りました。

教育現場で使うものは個人の持ち物ではなく、公で用意した備品であるべきです。それを十分には用意できていないのは、私たち教育委員会の責任ですが、何とか追いついていくように努力していくので、今はガイドラインを守って正しく使ってください、ということです」

Q.違反した場合の罰則はあるのでしょうか。

担当者「ガイドラインそのものに罰則規定はありません。ただ、法律などに触れることがあれば、ガイドラインとは別の懲戒基準に照らして処分していくことはあり得ます」

Q.このガイドラインによって、不祥事がなくなるとお考えですか。

担当者「正直なところ、これですべてが解決するとは考えづらいかもしれません。ただ、こうしたガイドラインを作らざるを得なかった状況に関して、先生方が本気で危機感を持ってもらえれば、撲滅できると思います。人ごとと捉える先生がいてはいけません。99.9%の先生は不本意だと思いますが、危機感を持って信頼回復に努めてゆくことが大切だと思いますし、今後も先生の自覚を促していきたいと思います」