秋祭り、と聞いてどんな光景を思い浮かべるだろう。

筆者が思い出すのは、「エーンヤサーヨーイヤサー」と大声を張り上げながら神輿を担ぐ子どもたちや、神社の境内で竹笛や太鼓を披露する人々のにぎやかな姿だ。

しかし、写真家の藤岡亜弥さんが2019年10月21日にツイッターに投稿した写真は、そんなイメージとはかけ離れた秋祭りの様子を写していた。


藤岡亜弥さんのツイッター(@puchipoka)より

小さな神輿は担がれることなく、前方を進む白い軽トラに引っ張られている。トラックの荷台には祭り提灯が飾られ、和太鼓が積まれているようだ。

写っているのは10人ほどで、子どもの姿は見えない。神輿やトラックに結ばれた明るい色の風船たちが、なんとも言えず寂しげだ。

「絵に描いたような過疎の風景」だと、藤岡さんは表現している。

これは、広島県東広島市河内町小田地区で行われた、小田八幡神社の秋祭り。

Jタウンネット編集部は、小田地域センター長で小田八幡神社宮司の国原昭典さん(72)に話を聞いた。

軽トラで神輿を引いて20年

小田地区は、広島県中央部に位置する。住民自治協議会のウェブサイトによると、東西を流れる小田川を中心に、棚状の耕地が広がっている。人口は526人(19年10月末現在、東広島市発表)だ。

国原さんに、いつごろから神輿をトラックで引いているのか尋ねると、

「だいぶん前からですね。もう20年以上になるんじゃないか。
子どもの数も少なくなっているし、大人も忙しいので車になっているんです。
ワッショイワッショイとやるのが普通でしょうが、そうはならんですね(笑)」

と教えてくれた。地域では少子高齢化が進んでいる。祭りで神社に足を運ぶ人も、少なくなっているそうだ。

小田八幡神社の秋祭りでは、2基の神輿を率いて農道を練り歩く。地域の東と西から1基ずつ軽トラで引っ張り、中央にある神社を目指す。神社の鳥居で2基は合流し、一緒に参道を上がっていくそうだ。

「本来の『神様に地域を見てもらう』という神輿の目的とは違いますけど、地域の人に関心を持ってもらって、神社に集まってもらいたいという気持ちで続けています」

と国原さん。

祭りでは、住民が東広島市の無形民俗文化財「小田神楽」を奉納する。

小田神楽は、地域の住民が舞ういわゆる「素人神楽」。こちらも祭りと同様、地域を盛り上げるために続けられているそうだ。

国原さんは長い間、小田神楽を通して小田八幡神社の祭りに関わってきた。そのつながりもあって、現在宮司を任されているとの話だ。

祭りの光景を捉えた藤岡さんのツイートには、

「それでもやめないんだもん、偉いよ」
「続ける力!」

と、担ぎ手が足りなくても祭りを続ける住民に感嘆の声が上がっている。