オールシーズンタイヤもスノーフレークマークの認定を取得した

 いよいよ本格的な冬シーズンの到来を迎える。クルマの冬支度としては雪道用タイヤに早めに履き替えておくことが重要だが、今季は「オールシーズンタイヤ」と呼ばれるジャンルのタイヤラインアップが増え、注目を集めているという。

 オールシーズンタイヤとはその名のとおり季節を問わず夏でも冬でも使えるタイヤであるということ。高温な夏のアスファルト路から冬のアイスバーン路まで使え、履き替える手間が不要で安心・便利が売りだ。北米では多くの地域で新車装着時のタイヤはオールシーズン(M+Sの表記があるもの)にしなければならないというルールがあり、ユーザーの間でも浸透している。東西に約4500km、南北にも約2500kmもの広大な国土を誇る北米地域では高温地域と降雪地域が同じシーズンに重なることも多く、タイヤの性能は生命にかかわる重要な問題。それだけにメーカーもユーザーもタイヤ性能に関心が高いのだ。

 日本でもオールシーズンタイヤは古くから存在するが、スパイクタイヤやスタッドレスタイヤが普及し雪上性能が格段に向上したことで、履き替え時の面倒を差し引いても性能に勝る冬専用タイヤを選択するのが一般的となった。だが近年、タイヤの性能向上によりオールシーズンが復権の狼煙を上げ始めたというわけだ。

 しかし、注意しなければいけないのはオールシーズンタイヤ=万能タイヤではない、ということだ。ゴムをベースにさまざまな素材を混入し剛性したコンパウンドゴムに細いサイプを彫り込んだトレッドパターンなど、冬用タイヤの技術を盛り込み一定の雪道性能は達しているが、本格的スタッドレスタイヤと比べたらやはり雪道性能は劣る。

 タイヤサイドウォールに「M+S」(マッド&スノー)の刻印があることが目印となっていて、泥濘や浅い雪道程度なら走れるという性能指標となっている。これまで冬用タイヤであることを示す「SNOW」の刻印のあることが国内の冬用タイヤ規制区域では必要とされていたが、近年国内の高速道路でチェーン規制下に走行するには「スノーフレークマーク」が刻印されているタイヤの装着が求められるようになった。

 これはASTM(世界最大規模の標準化団体である米国試験材料協会・American Society for Testingand Material)が雪上性能を認定した証しとして刻印を認めたもので、国内でも認証されている。オールシーズンタイヤの多くがこの「スノーフレークマーク」の認定を取得したことで一気に注目が高まっているとも言えるのである。

スタッドレスタイヤとまったく同じ性能を持つわけではない

 しかしスノーフレークマークがあるといえ、雪道専用のスタッドレスタイヤを装着した車両とまったく同じように走れると補償されている訳ではない。トラクションコントロールやVSC(ビークルスタビリティコントロール)、ESP(電子制御車両スタビリティプログラム)などの電子制御と連携してなんとか低速走行で安全を担保させることができるというレベルと考えるべきなのだ。

 そもそもメーカーが「SNOW」のタイヤ表記をタイヤに与えるうえで明確な基準があるわけではなかったと、あるメーカーのタイヤエンジニアは説明してくれた。トラクションやブレーキ性能など同じ走行条件のテストで夏用タイヤより優れていることが確認できればメーカーの自主判断で刻印ができるという。法律で定められた基準がないというのは驚きだが、雪道と一言でいってもアイスバーンやシャーベット路、圧雪路などコンディションはさまざまだから数値設定できるはずもないわけだ。そこでASTMの性能評価は意味を高めてくれているといえる。

 また乾燥舗装路に関して言えば夏用タイヤと同じく残り溝深さが安全基準としてあるだけで、性能的な指数はない。冬用スタッドレスタイヤで夏の乾燥舗装路を走っても違法にはならないのと同じで、オールシーズンタイヤも夏場に使用することは法的な問題ないのだが、高性能ラジアルと同じ乾燥路グリップが引き出せるはずはないのだ。

 逆に言えば夏の舗装路での性能はそこそこ。雪道性能もそこそこと中途半端な性能レベルであることは否めない。クルマの使用が市街地中心で、普段は降雪のない地域のドライバーが急な降雪で立ち往生しないための策としてオールシーズンタイヤを装着しているのは有効だが、それでウインタースポーツに出かけて行ったり、寒冷地や冬の山岳路が生活圏のドライバーが装着するのは避けたほうがいいだろう。

 そうしたことを理解したうえでオールシーズンタイヤを選択しようと決めたのなら、その替え時は正に「今でしょ」。11月末までに装着し降雪時にはフレッシュな性能を維持できているタイミングで迎えられることが望ましい。夏性能の低下分より冬性能の低下のほうが早いステップで進むということを知っておいてもらいたい。