いよいよ正式に発売された、新規設計の16インチMacBook Pro。そのうち特に、2015年の12インチMacBookから採用されていたバタフライ式キーボードから、シザー機構を採用したMagic Keyboardに変更されたことが話題となっています。

なぜキーボード機構を変更したのか、そして物理ESCキーが復活したのか。アップルのグローバルマーケティング担当上級副社長のフィル・シラー氏が、キーボードにまつわる数々の疑問に答えています。シラー氏をインタビューした米CNETの記者も、序文に「MacBookの筋金入りユーザーに暴言を投げかける最も手っ取り早い方法は、バタフライキーボードについて質問することです」として、バタフライ式への不満を募らせていたことを窺わせています。

バタフライ式キーボードに関する話題をざっと振り返ると、画期的な薄さを実現した一方で小さなチリやホコリの侵入に弱く、特定のキーが効かなくなる、文字が勝手に反復入力されるなどの苦情が相次ぎ、第1世代に対しては米連邦地裁に集団訴訟が起こされました。その後、第3世代まで改良を重ねたものの、最終的には搭載した全モデルが無償修理プログラムの対象となっています。

さてCNETのインタビューですが、バタフライ式キーボードで得られた顧客からの反応と、それをシザー機構のキーボードにどのように反映したかが質問されています。そうした問いに対して、まずシラー氏はバタフライ式の上手くいった点を語り、どのように改良したかを以下のように語っています。

ご存知のように、私たちは何年も前からバタフライキーボードで新しいキーボード技術に取り組み、MacBookで初採用しました。はるかに安定したキープラットフォームを実現できるなど、非常に成功したことも点もいくつかありました。硬くて平らな打鍵感を、一部の方々にはとても気に入って頂けましたが、他の人々は満足しませんでした。いろいろな反応がありましたね。品質の問題も何点かありましたが、長年にわたって設計を改良して現在は第3世代になっており、多くの人がそれを歓迎しています。


それと並行してMacBook Proの「プロ向け製品」という原点に立ち戻り、プロの顧客とキーボードに最も求められているものを話し合ったとのこと。すると多くのプロが「Magic Keyboardのようなものが欲しい、このキーボードが大好きです」との反応が得られたと述べています。

Magic Keyboardは元々はiMacやMac miniなどデスクトップ向けの、ワイヤレスキーボードの名称です。シラー氏は、アップルの開発チームがこのテクノロジーをノートPCに適応させる試みに取り組み、MacBook Pro用に新たなMagic Keyboardを開発したと語っています。

新型キーボードに関するもう1つの話題は、TouchBarとは独立した物理ESCキーが復活していることです。シラー氏は、そもそもプロユーザーからの苦情にはTouch Barの操作性があったことも認めています。そうした苦情をランク付けすると、No.1だったのが「物理ESCキーが好きな顧客」だったとのことです。以下、発言の引用です。

Touch Barを削除して一部の人が得られるメリットを失うのではなく、代わりにESCキーを追加することを決定しました。その一方で、MacBook Airには独立したTouch IDボタンがすでに新設されていました。皆さんはそれを本当に気に入っています。そのため、Touch Barを保持するだけでなく、EscキーとTouch IDキーのために両側にスペースを作成することも決定されました。それは苦情を寄せられていた大多数の方々に対する最適なソリューションであり、Touch Barで実現した革新的な要素を保持しました。


やはりTouch Barを削除して欲しいとの声が少なからずあったことが窺えますが、Touch Barはアップルが革新的な要素を打ち出していた要だっただけに、死守せざるを得なかったのかもしれません。

さらに、新型MacBookシリーズが登場するたびに繰り返されている「MacとiPadの融合」についても、シラー氏は従来通りこれを否定しています。「(MacとiPadの)中間の製品は、別々の製品ほど良くないからです。私たちは、最高のパーソナルコンピューターはMacであると信じており、その道を進み続けたいと考えています。そして、最高のタブレットコンピューティングデバイスはiPadであり、その道を進むと思います」とのことです。

そしてMacにタッチスクリーンを追加してはどうかとCNET記者に聞かれると、シラー氏は「エンジニアリングの努力は、Mac上で可能な限り最高のキーボードおよびトラックパッド体験を改善するために費やされます」と回答しています。MacとiPadの独立性を守るためにも、タッチスクリーン要素を含んだTouch Barは特別な位置を占めているのかもしれません。