by Irina Murza

2019年9月、YouTubeは「保護者の同意なしに子どもの個人情報を違法に収集し、児童オンラインプライバシー保護法(COPPA)に違反した」として、連邦取引委員会(FTC)に1億7000万ドル(約180億円)の和解金を支払うことに合意しました。こうした点を背景に、YouTubeはCOPPAの遵守を徹底する方針を固めており、「YouTubeのクリエイターは自分の投稿したムービーが子ども向けかどうかを選択し、YouTubeに申告する必要がある」と訴え、既に投稿したムービーについても設定変更を呼びかけています。

YouTube.com の子供向けコンテンツに関して今後予定されている変更点 - YouTube ヘルプ

https://support.google.com/youtube/answer/9383587

YouTubeは新たな変更点について、「すべてのクリエイターに向けた重要なお知らせ: COPPA への準拠」と題したムービーを投稿し、YouTubeにムービーを投稿するクリエイターに対して協力を訴えています。

Important Update for All Creators: Complying with COPPA - YouTube

「あなたがYouTube向けにコンテンツを作っている場合、このムービーを見ることはとても重要です。アップロード手順の変更、既存の全ムービーに必要になる設定、収益化に影響する可能性について説明しているからです」と話す女性は、YouTubeのファミリーパートナーシップ責任者であるローレン氏。



ローレン氏がクリエイターに対して早急な変更を訴えているのは、YouTubeがCOPPAに従うことによる、子ども向けコンテンツに関する設定です。



2019年9月にFTCとの和解が成立したのを受けて、YouTubeはクリエイターがCOPPAを遵守できるようにするための対策を整えました。これは、YouTubeが「クリエイターにムービーが子ども向けコンテンツかどうかを申告するようにお願いする」義務を負ったためだとのこと。アメリカで視聴可能なコンテンツが対象となるため、アメリカ以外の国に在住するクリエイターも今回の変更の影響を受けます。



ムービーの内容について最も理解しているのはクリエイターであるため、投稿者が自身のムービーについて、コンテンツが子ども向けかどうかを申告する仕組みになりました。



一方で、YouTubeでは機械学習システムを用いて子ども向けコンテンツの検出を行い、クリエイター自身が設定を行わないときには代わりに設定を行うとのこと。しかし、ローレン氏は「自動判断システムは必ずしも完璧ではありません」と述べ、投稿者自身での設定を呼びかけています。



コンテンツ投稿者は子ども向けコンテンツかどうかについて、「チャンネル単位」または「ムービー単位」での設定が可能。投稿したコンテンツ全てが子ども向けである場合、チャンネル全体を一括で「子ども向けコンテンツである」と申告することができます。



チャンネル全体で一括申告する場合、YouTube Studioの「Settings(設定)」画面から「Channel(チャンネル)」タブを開き、「Advanced settings(詳細設定)」を開きます。すると、「このチャンネルを『子ども向け』として設定します。いつも子ども向けコンテンツをアップロードしています」「このチャンネルを『子ども向けではない』として設定します。子ども向けコンテンツをアップロードすることはありません」「すべての動画について視聴者の設定を確認します」という3つの選択肢が表示されるので、最も適したものを選択すればOK。



チャンネル単位で視聴者を設定すると、既存の全てのムービーについて設定が反映されるため、まずはチャンネル単位での設定をローレン氏はオススメしています。また、チャンネル全体の設定と一致しないムービーが存在する場合、個別に設定することで対応が可能とのこと。



ムービーごとに設定を行う場合、YouTube Studioから特定のムービーを選択し、「編集」をクリック。



するとメニューが表示されるので、「視聴者」タブを開いて設定を行えばOKです。



さらに、今後はムービーをアップロードするごとに子ども向けコンテンツかどうかを申告する必要があります。既にチャンネル単位で子ども向けかどうかの設定を行っている場合はその設定画反映されますが、チャンネル単位の設定と合致しないムービーの場合は、ムービーのアップロード中に「詳細」タブを開き、ムービーの内容に近いものを選ぶことができます。



ローレン氏は基本的な疑問である、「COPPAが想定する子ども向けコンテンツとは何なのか?」という疑問に回答。



考慮するべき項目としては、「ムービーのテーマ」「子どもが視聴者に想定されているかどうか」「子どもの役者やモデルが登場するかどうか」「子どもの興味を引くキャラクターや有名人、おもちゃが含まれるかどうか」「子どもにわかりやすい言葉や表現を選んでいるかどうか」「ごっこ遊びや歌など、子ども向けのアクティビティが含まれるかどうか」「子どもの興味を引く歌や物語、詩などが含まれるかどうか」といったものが挙げられます。



YouTubeは法的な助言ができないため、可能な限りサポートはするものの、コンテンツが子ども向けかどうかの判断はクリエイターに一任されているとのこと。



COPPAで定義されている「子ども」は13歳未満とされていますが、「COPPAだけでなく各地域の子どもに関する法令も考慮してください」とローレン氏は訴えています。



子ども向けに設定したムービーについては、YouTubeが収集するデータが制限されてしまうため、その他のムービーと違う扱いを受けることとなります。



コメント、情報カード、ムービーの終了画面などの一部機能が制限されるほか……



パーソナライズド広告が表示されなくなるため、クリエイターによっては収益減少につながるとのこと。



また、チャンネル単位で「子ども向け」に設定した場合、ストーリー機能やコミュニティタブ、通知機能、「後で見る」機能なども使えなくなります。



もしも誤った視聴者層を設定してしまった場合、COPPAなどの法令に違反したとみなされる可能性があるほか、故意に不正な視聴者層設定をしているとYouTubeが判断した場合、チャンネルやムービーに対して対策措置がとられることもあるとのこと。



実際にGIGAZINEのYouTube Studioを開き、「設定」→「チャンネル」→「詳細設定」の順に開くと、チャンネル全体を子ども向けとして設定するかどうかを設定できるようになっていました。



投稿したムービーを選択して「詳細」をクリックすると、ムービーが子ども向けかどうかを個別に選択することも可能。



また、ムービーを一覧表示にして左のチェックボックスにチェックを入れ、「編集」をクリックし……



「視聴者」をクリック。



すると、選択したムービーが子ども向けかどうかを選択できます。



さらに「年齢制限(詳細設定)」をクリックすることで、視聴者を18歳以上に制限することも可能です。