連載「骨格筋評論家・バズーカ岡田の『最強の筋肉ゼミ』32限目」

「THE ANSWER」の連載「骨格筋評論家・バズーカ岡田の『最強の筋肉ゼミ』」。現役ボディビルダーであり、「バズーカ岡田」の異名でメディアでも活躍する岡田隆氏(日体大准教授)が日本の男女の“ボディメイクの悩み”に熱くお答えする。32限目のお題は「体を絞る際の食事法」について。

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 Q.体を絞りたいので、筋トレを始めただけでなく、3度の食事の内容も、低脂肪・低炭水化物に切り替えました。でも、毎日、腹が減ってくじけそうです……。

 脂質の高い食事は、胃に滞在する時間が長く、腹持ちがいい上に満足感が高いという特徴があります。一方、低脂肪の食事は消化が良く体への負担は少ないが、腹が減りやすい。だから余計に「空腹がツラい」と感じるのでしょう。

 しかも1日3食では、食事と食事の間が5〜6時間は空きますからね。そりゃあ誰だって空腹でキレそうになります。

 しかし、1日3食しか食べてはいけないと誰が決めたのでしょう? 

 体を絞る際、エネルギーの収支バランスの調整がいかに重要かを説くと、「でも、それじゃあ、お腹が空くじゃないですか〜」と、よくいわれます。でも、腹が減るなら、また食えばいい。皆さん、3回ルールに縛られすぎです。

 人は空腹が強すぎると、「腹が減った……おいしいものを食べたい……」という感情が生まれます。私にも、なくはない。そして、「食べたい」という感情をガマンしすぎると、反動は必ず来ます。私はそれを「“キレ食い”が発動する」と表現していますが、この状況を作らないためには、食事を3回ではなく、5回、6回に分けて、なるべくこまめに食べるのがオススメです。

 ただし、5食ガッツリ食っていい、という話ではありません。回数は増やしても量は増やさない。3食分を5食に分けて食べればいい、ということです。すると、一回一回の量は少なくなりますが、空腹の時間は間違いなく短くなります。それだけに、めちゃめちゃ空腹の状態にはなりにくい。3食だと満腹→空腹→満腹→空腹の繰り返しなりますが、5食だと、腹八分目→やや空腹→腹八分目→やや空腹と、大きな空腹感の波が起こりにくい。ここが大事なポイントです。

1日5食はカタボリズムも防げて一石二鳥

 私の経験上、本格的な飢餓状態になると、5食に分けたとしても空腹感が強くなり、キレ食いが発動しやすくなります。後述しますが、これは体のエネルギー残量があまりにも少ないために起こるものだといえます。

 私たち競技ボディビルの選手は、大会に向けて体脂肪を極限まで落としていきますが、「食べて絞る」のがイイ感じに進むのは途中まで。大会1〜2週間前になると、厳しい食事制限へ移行しないと仕上がってこない場合がほとんどであり、直前ともなるとかなり厳しくなります。

 すると容易に低血糖状態に陥り、動悸が激しくなり、思考は働かず、冷や汗も出る。非常に危ない状態になります。減量末期なので、体脂肪や体内のグリコーゲンが僅少化している、いわばエネルギー残量がほぼない状態であるため、常に強い飢えを感じるのです。

 これは仕上がってきたサインでもありますが、一方で食事のタイミングを一つミスるだけでも、突如、抑えきれないほどの猛烈な空腹感に襲われてしまう。こうなったら最後、「何でもかんでも食べちゃえ!」とキレまくり、すべてが終わってしまいます。

 おそらく、脳が設定している体脂肪率以下になると、本能的に「何か補給しないとヤバイ!」と食欲が発動するのではないでしょうか。これを読んでいる人はそこまで追い込まれることはないと思いますが、つまり、キレ食いを防ぐには、いかにして「極限の空腹状態を作らないか」が大事なのです。

 ちなみに、1日5食は除脂肪を進める上でも利点が大きい。空腹(低血糖)の状態から満腹状態にすると、血糖値が急上昇し、大量のインスリンが分泌されます。インスリンは栄養素を全身の細胞に送る働きをしますが、当然、筋肉だけでなく脂肪細胞にも送る。結果、脂肪細胞の内部に中性脂肪が蓄積され、細胞のサイズが肥大します。これは、太るという現象の細胞レベルでの考え方です。

 しかし、3回の食事を5回に増やすことで、空腹の度合いも頻度も少なくなるため、体脂肪の肥大を抑えられます。しかもカタボリズム(空腹によって筋肉や細胞が分際されてしまう作用)も防げるとあって、一石二鳥です。

朝食と昼食、昼食の夕食の間にそれぞれ間食を入れるとやりやすい

 さて、食事を3回から5回に増やす方法ですが、基本は朝食と昼食の間、昼食と夕食の間に、それぞれ間食を入れる方法がやりやすいでしょう。

 3回の食事で食べる量を5回に分けるのがベストですが、難しければ最初のうちは、2回、または1回の間食は、高タンパク・低脂肪・低炭水化物のものを加えるだけでもいい。例えば、低脂肪のプロテインドリンクやスルメ、鶏むね肉(サラダチキンなど)といったものですね。

 やってみると、結構、1日5回食うのは大変です。朝食を7時、昼食を13時、夕食を20時頃に摂るとしたら、間食は10時、16時頃の計算になります。3時間ごとに鶏肉を食べるとなると、結構、面倒臭いです。

 しかし、食べないガマンはキレ食いによる除脂肪の失敗を招きますが、「あー、また食わなきゃいけないのかよ」というガマンは太りません。恐れることはありません。食べて絞れ!(長島 恭子 / Kyoko Nagashima)

長島 恭子
編集・ライター。サッカー専門誌を経てフリーランスに。インタビューや健康・ダイエット・トレーニング記事を軸に雑誌、書籍、会員誌などで編集・執筆を行う。担当書籍に『世界一やせる走り方』『世界一伸びるストレッチ』(共に中野ジェームズ修一著、サンマーク出版)、『つけたいところに最速で筋肉をつける技術』(岡田隆著、サンマーク出版)、『カチコチ体が10秒でみるみるやわらかくなるストレッチ』(永井峻著、高橋書店)など。

岡田 隆
1980年、愛知県生まれ。日体大准教授、柔道全日本男子チーム体力強化部門長、理学療法士。16年リオデジャネイロ五輪では、柔道7階級のメダル制覇に貢献。大学で教鞭を執りつつ、骨格筋評論家として「バズーカ岡田」の異名でテレビ、雑誌などメディアでも活躍。トレーニング科学からボディメーク、健康、ダイエットなど幅広いテーマで情報を発信する。また、現役ボディビルダーでもあり、2016年に日本社会人ボディビル選手権大会で優勝。「つけたいところに最速で筋肉をつける技術」「HIIT 体脂肪が落ちる最強トレーニング」(ともにサンマーク出版)他、著書多数。「バズーカ岡田」公式サイトでメディア情報他、日々の活動を掲載している。