製造業、小売業の増加などで今年最多

2019年10月の倒産件数(785件、前年同月比5.1%増)は、2カ月連続の前年同月比増加で今年最多となった。業種別では、5カ月連続のプラスで2017年5月(114件)以来2年5カ月ぶりに100件超となった製造業(111件、同30.6%増)や、同じく5カ月連続増加となった小売業(195件、同12.1%増)などが件数全体を押し上げた。

また、負債総額は910億7900万円と、2015年10月(943億2800万円)を下回り、比較可能な2000年以降で10月としては最小となった。100億円規模の倒産は発生せず、大型倒産の発生は低水準が続いている。

運送業の倒産、さらなる増加を懸念

道路貨物運送業の倒産件数は、10月単月では前年同月を下回ったものの、2019年1〜10月累計は154件と、前年同期(133件)を15.8%上回り、前年の年間件数(161件)に迫っている。多重下請構造の業界内で、価格交渉力に劣る小規模企業を中心に、慢性的なドライバー不足による受注減や燃料コストの高止まりがネックとなった企業の倒産が目立つ。

こうしたなか、国土交通省は貨物自動車運送事業法の改正を受け、11月1日から運送事業者の許可基準である「最低保有台数5台」ルールの厳格化をスタートした。今後は、減車により最低保有台数を割り込んだ状態での営業継続が難しくなることから、小規模企業には一層の経営体力が求められ、台数維持が困難となった企業などによる倒産も懸念される。

台風被害の影響を注視

10月12日から13日にかけて列島を直撃した台風19号は、神奈川県箱根町で総雨量が1000ミリを超え国内最高記録を更新するなど、東日本を中心に記録的な豪雨となった。各地では河川の氾濫、決壊、土砂災害など、広範囲にわたり甚大な被害が発生し、政府は2016年4月の熊本地震に続き2例目となる大規模災害復興法の適用を決定した。9月の台風15号に続く度重なる豪雨災害により、企業は生産や営業の再開に向けて復旧を急いでいるものの、想定外の被害に作業が追い付かず、事業再開の見通しが立たない企業は依然多い。

今後は被災地域を中心に、セーフティネット保証4号などの資金繰り支援や復興需要の発生が見込まれるものの、事業の縮小や休業、廃業などを余儀なくされる企業が増えることで、被災地以外の企業にも間接的な影響が広がる可能性は高い。

消費税率引き上げ後の影響に注目、年間倒産件数は前年比プラスの公算

2019年1〜10月の累計件数は6922件(前年同期6730件)と前年同期を2.9%上回る。件数は業種や地域でバラつきが大きいものの、飲食店(610件、前年同期比12.3%増)では比較可能な2000年以降の年間最多ペースで倒産が発生しているほか、宮城県や神奈川県、福岡県など計12県では、すでに前年の年間件数と同数もしくは上回る水準で推移している。

11月には、百貨店やショッピングモールにアクセサリーショップなど複数店舗を展開していた大阪産業(株)(負債約1億5000万円)が来店客数の落ち込みなどから倒産。10月の消費税率引き上げ後に、店舗売り上げが急減したことが追い打ちとなり、事業継続を断念した。多くの飲食店、小売店では軽減税率レジ導入やシステム改修でコスト負担が発生しているうえ、今後は消費者の節約志向の高まりから収益へのマイナスの影響が一段と懸念される。負担感のより強い中小零細企業では倒産が増える可能性があり、2019年の年間倒産件数は2018年の前年比3.7%減から一転し、2年ぶりに前年を上回る見通し。