今月末に完成予定の新国立競技場、その建設現場から大量の人骨が発見されました。その数はなんと187体。一体、どういうことなんでしょうか。

 新国立競技場完成前に飛び込んできた衝撃のニュース。なんと、建設現場から187体もの人骨が出てきたというのです。

 国立科学博物館・坂上和弘研究主幹:「(歯が)めり込んでる状況を考えると、単純に転倒とか転落よりも局所的に暴行を昔から受けていた」

 警察から遺体の骨の調査依頼を受けて事件を解決に導いたこともある坂上さんは暴行の可能性をも指摘します。ミステリーなのか、事件か、オカルトか。詳しく調べると、意外な事実が分かりました。

 新国立競技場の地下から見つかった人骨は、300年ほど前に亡くなった人の骨だとみられています。発見されたのは幼児から高齢者まで江戸時代に亡くなった人の骨だといいます。国立科学博物館の分析によりますと、さらに詳しいことが分かります。例えば、先ほどの暴行を受けたと推理した高齢女性の骨ですが…。

 国立科学博物館・坂上和弘研究主幹:「転倒や転落すると、手とか前腕の骨で骨折することが多いんですけれども、この人の場合、手とか腕の骨折は見られません」

 何カ所も骨折しているのに腕の骨折がない。さらに、胸や歯に何度も強い衝撃を受けた痕があるということで、暴行や虐待の可能性を推測できるそうです。

 国立科学博物館・坂上和弘研究主幹:「社会学とか歴史学の研究によると、ある藩では高頻度で老人の虐待、DVが行われたと指摘されています」

 さらに、3歳ぐらいだという子どもの骨からは虫歯の跡が。

 国立科学博物館・坂上和弘研究主幹:「現代人だったら(虫歯は)よくある話なんですけれども、(江戸時代では)そんなによくあるケースではないですね。恐らくかなり栄養状態は良かった可能性がある」

 見つかった骨は江戸時代に起きたDVから社会状況までが分かる大事な資料だといいます。

 国立科学博物館・坂上和弘研究主幹:「骨を見ていると、その人と直接、対話をしているような感覚によく陥ります。『昔の人と話せて良かった』って感じですね」

 しかし、ここで1つの大きな疑問が。なぜ、新国立競技場の地下に187体もの人骨が眠っていたのか。新国立競技場の場所を江戸時代の地図で見ると、日蓮宗立法寺の墓地があった場所でした。その後、300年かけて東京の街が発展していくなか、墓の下に埋まっていた骨だけがずっと地面の中に取り残されていたというわけです。

 そんななか、国立科学博物館では今、こんな問題も。本来、保管されるはずの人骨は骨をしまうスペースがなく、廊下の片隅に山積みになっています。実は、都内では今年だけでも1000体近くの人骨が発見されているそうです。

 国立科学博物館・篠田謙一人類研究部長:「100万都市が数百年続いたということになれば、恐らく、そこに住んでいた人は1000万人以上になりますから、五輪などの大規模開発が行われるということで、(集まる骨に)対応しきれなくなっている」

 東京の地下に眠っているかもしれない人骨。いや、貴重な江戸考古学の研究資料。専門家はその保管場所の確保を求め、文化庁も来年度の概算要求にこうした骨などの収蔵庫の新設を盛り込んでいます。