常時110キロ台のストレートでも防御率0点台。都立城東の林平太郎の巧みなピッチング林 平太郎

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 10月27日、秋季東京都大会3回戦の錦城学園vs都立城東の一戦は、都立城東が5対1で勝利し、都立で唯一のベスト8進出を決めた。

 2回表、都立城東は7番・松本 誇大郎の適時打、8番林 平太郎の併殺、9番高垣翼の適時打で3点を先制する。4回裏、錦城学園は5番根橋 幸ノ丞の犠飛で1点を返すが、5回表には千野 亜真汰の適時二塁打で1点を追加。さらに8回表にも1点を追加し、5対1と逃げ切り、ベスト8進出を決めた。

 この試合のヒーローは1失点完投勝利のエース・林 平太郎(1年)だ。錦城学園は夏の西東京王者の國學院久我山を破り、勢いに乗っている。林はそんな錦城学園の勢いを封じるようなピッチングだった。

 1年生で部員数の多い都立城東のエースとなり、ここまで都大会で無失点の快投をみせるとなると、思わず速球派なのかとイメージしたくなるが、アベレージは115キロ前後で、120キロに到達することはごくわずか。スピードだけ見れば、なぜ打たれないのかと思う。ただ詳しくピッチングの中身を見ると、少ない失点で抑えるのも理解できる。

 まずストライク先行できるコントロールがあること。そして平均的な投手と比べると遅いため、打者は積極的に打ちに行きやすい。それでも林はボール球を誘いながら打たせて取ることができる。さらにボールが高めに浮かない。それは意識的なものだけではなく、投球フォームの良さもある。入学から投球フォームの改良を重ねてきた林。同じ技巧派左腕の林 優樹(近江)の足の挙げ方などを参考にするなど研究は怠らない。 タイプ的に言うと、本人は全く意識していないと思うが、体型的にも、右肩の開きが抑えられた縦振りの投球フォームは大竹 耕太郎(福岡ソフトバンク)に似た投手ではないだろうか。

 序盤はコントロールに苦しんだが、徐々に修正を測り、5回まで被安打5を打たれていたのに対し、5回以降は安打2本に抑え、完投勝利を挙げた。

 地元の葛飾区立大道中出身。ベンチ入りはまだ先になると思っていた。だが、エース候補の投手が故障となり、チャンスと思った林は練習試合では好投。「練習試合から現在のような安定感でした」と内田監督に安定感あるピッチングが認められ、ベンチ入り。正捕手・松本 誇大郎からも「1年生ですけど、落ち着きがありますし、コントロールも優れて、ボールがほとんど低めに集まるので、長打が打たれることはほとんどないです」と信頼を寄せる。

 3試合を投げて防御率0.46と強豪校の投手たちにもひけをとらない好成績。林は「ここまでの成績はびっくりですけど、それでも強豪校相手に投げて勝っているので自信になっています」と自分のピッチングに手応えを感じている。そして技巧派左腕らしいコメントを残してくれた。

「今日は4番打者の狙いの裏をかくボールを投げることができました。うまく打たせて取ることができたり、相手打者が頭にないようなボールを投げられたときは気持ちいいです」

 それほどスピードはないのに、なぜかアウトになり、相手打者が思わず首を傾げたくなるようなピッチングを見せる林。今後も見逃せない投手だ。

 敗れたが、錦城学園のエース・石川 隆二は5失点を喫したが、11奪三振。フォームのバランスが良く、左足を回しこむように上げていき、内回りのテークバックからリリースに入るまでの流れは無駄がなく鋭い腕の振りから繰り出す130キロ前半の速球、120キロ近いスライダーの切れ味はなかなかのものがあった。ところどころで単調なところがみられるが、しっかりと体づくりをしていければ、来年には140キロ台も十分見える投手だった。

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(文=河嶋宗一)