その子は以前にJKビジネス店で働いていたが、条例によって仕事を失ってからは出会い系サイトで「パパ活」をしており、「もう年齢詐称して風俗に入るしかないのかな」と言いながら、幼い頃から父親に虐待されてきたことを告白した。

「うちの父親は自営業なので、家にいたら何をされるか、わかりません。突然、心臓が止まるかのような大声で怒鳴られるし、私服は一切買ってくれない。テストで良い点をとっても、『ふうん』で終わり。気持ちが通い合うような会話なんてしたことない。

 昔は普通のバイトをしてたけど、私の通帳に振り込まれた金額をチェックされて、現金を見せなきゃいけないし、見せたら『寄越せ。大金だから管理する』と言われて勝手に使われちゃう。だから、団体に相談したんだけど、今はパパ活をしているから『そういうことはやめなよ』って言われるばかりで……」

 親権者には、未成年者の子どもを監護・養育し、その財産を管理し、その子どもの代理人として法律行為をする権利や義務がある。しかし、現実にはその権利にあぐらをかき、子どもからお年玉を取り上げるような経済的虐待をしている親は珍しくない。

 厚生労働省は、高齢者への虐待の一つに「経済的虐待」があるとしている。子どもなどが高齢の親の貯金や年金を勝手に使うことは「虐待」だと認めているのだ。しかし、親が子どもの貯金やアルバイト代を勝手に使っても「児童虐待」とは認められない。そのため、こうしたケースは児童相談所で保護されるのは困難だ。

 筆者は、「これからもパパ活や風俗店探しを続けたいの?」と尋ねた。その子は言った。

「やってみて、べつに嫌いな仕事でもないかなとも思う。家の外にいる時間を増やすにはお金がかかるし、知らないおじさんとホテルにいると、誰かの娘でもなく、高校生でもなく、ただのメスみたいな感覚になって、誰でもない自分というか、なんだか自由になれた気がして、しばらくはそれでもいいかなって。卒業したらやめるんだろうけど……」

 その子は少なくとも今は漂流していたいんだと、筆者は思った。卒業後に一人暮らしの生活が成り立つだけの仕事に就くまでは、その子にとって他に選択肢がないように思えた。

「この人だけは裏切りたくない」という恋人や親友ができれば、家とはべつの居場所を調達できるのかもしれない。だが、その子には誰かと関係を望む気持ちの余裕はなく、親に向けても上滑りする自分自身の承認欲求の強さに疲れ、虚無感でいっぱい、いっぱいなのだった。

 倫理的に正しいだの、間違ってるだのと判断を急ぐ前に、まずはその子の正直な気持ちを否定せずに受け入れなければ、関係を確かなものに育てていくのは難しいだろう。

 ちなみに、15歳になれば、誰でも株式会社の社長になれるので、すでに起業した10代を見つけ、社員になれば、そこでの賃金を会社の口座にプールしておくことで、親権者は自分の子どもの所得に手を付けることができなくなる。

 こうした生存戦略は、義務教育の頃からどんな子でも学べる環境にするのが、子どもが求める福祉の姿のはず。虐待親とは、カネの切れ目が縁の切れ目になるのだから。

◆被虐待の18歳は、保護されないまま生きる希望を見失う

 ところが、必ずしも自分を虐げる親から離れたいと望む子どもばかりではない。

 ある18歳の男子高校生は、東北に住んでいたが、2年前に両親が離婚して以来、母親から殴る蹴るの虐待を受け始めた。

 それでも彼は、母を嫌っていなかった。しかし、どうにも耐えきれなくなってしまい、高校経由で児童相談所に相談。だが、18歳になっていたため、保護されなかった。 そこで、子どもの人権110番に電話して民間のシェルターに入れる段取りまで進んだが、すでに彼は日常的な虐待によってリストカットやOD(※オーバードーズ。薬の過剰摂取)の依存症になっていた。なのに、母親は精神科への通院を許可しない。