楽天モバイルの無料サポータープログラムに当選し、都内で1日使ってみた結果として「意外なほどつながる」という感想を抱きました。

それでは、「いますぐ有料サービスに移行できるか?」といえば、まだそういうレベルに達しているとは思えません。2回目のレビューとなる今回は、何が問題なのか気付いた点をまとめておきます。

楽天基地局とauローミングの微妙な関係


10月14日にSIMカードと「OPPO Reno A」を受け取った後、筆者は東京駅周辺、品川、新宿、六本木、お台場といった地域で無料サポータープログラムを試してきました。

東京23区内の地上部分は楽天の基地局が、地下や建物内はauローミングによってカバーされており、データ通信やテザリングに快適に使えています。


▲お台場では、ゆりかもめ車内や公園内でも楽天の電波が入っていた。

たとえば新宿では、JR新宿駅構内では楽天とauローミングが頻繁に入れ替わるものの、地上ではビルの谷間のような場所でも楽天の基地局につながっており、新宿タカシマヤのような商業施設の中ではauローミングにつながっていました。


▲新宿ミロードのモザイク通り。ビルの谷間でアンテナは3本だが楽天の基地局をつかんでいた。


▲そのまま歩いて新宿駅構内に入るとauローミングに切り替わる。

楽天はauとの間で2026年3月末までローミング契約を締結しており、東京23区、名古屋市、大阪市の地上部分、混雑エリアを除く全国エリアに加え、東名阪でも地下鉄や主要ビルではローミングが提供されています。

楽天によれば、ローミングを詳細している詳細な場所はKDDIとの契約内容となるため非公開としています。ですが、実際に使ってみた感触では都心の駅ビル、大型のオフィスビルや商業施設、地下街、地下鉄駅、走行中の地下鉄などでローミングは機能しているようです。

逆に言えば、それ以外の場所では楽天の電波が入らない限り、圏外になるわけです。たとえば原宿では、若者が行き交う竹下通りから1本入った細い路地で、圏外になる場所がありました。大きな通りに面していない住宅街や、都心から離れたエリアでは圏外の場所が多数、報告されています。


▲細い路地では圏外になることも。ここではアンテナピクトがぎりぎり1本立った

音声通話に課題、iPhone対応もまだ


楽天の携帯キャリアサービスで、すでに分かっている問題として音声通話があります。通話中に楽天基地局とauローミングが切り替わると、通話はブチッと切れてしまうのです。

これではターミナル駅のように楽天基地局とauローミングが頻繁に切り替わる場所での通話は厳しいと感じます。楽天によれば、現在の「S8」接続が「S10」接続に変わる2020年4月には解決されるとのことですが、そうした予備知識がない人が使えばクレームの嵐になりそうです。

楽天は当面の解決策として、IP電話やメッセンジャーなどを統合した「楽天Link」アプリの使用を推奨していますが、肝心のアプリがまだリリースされていません。LINEの通話で試してみると、基地局が切り替わっても問題なくつながっていました。


▲基地局ローミング問題を解決できるという「楽天Link」アプリ

国内展開にあたっては、シェアの大きいiPhone対応も必須です。楽天によれば、iPhoneへの対応予定は現時点で未定。Androidでも動作確認済みのモデルやアップデートで対応できる端末を除き、「すべてのSIMフリー端末で稼働するわけではない」としています。

今後、iOSのバージョンアップへの対応を含め、大手3キャリアと同じレベルでiPhoneが安定して使えるようにならない限り、広く国内に展開することは難しいでしょう。

ほかにもPayPayなどで増えている電話番号認証時のSMSが届かないとか、LINEアカウントの「年齢認証」に未対応など、大手キャリアではできるのに楽天キャリアではできない、といった制限も気になるところです。

人気端末は在庫切れ、申し込み回線数に混乱も


無料サポータープログラムの提供体制にも不満の声が上がっています。5000名に当選後、実際の登録案内は数グループに分けて送ることで申し込みの集中を避けたとはいえ、人気端末の「OPPO Reno A」は品切れが続き、回線の開通も遅いなどの報告があります。

回線数についても、当初は1人5回線まで申し込める仕様だったものが1回線に制限され、申し込んだ時期によって入手できるSIMカードの枚数に差が生まれてしまいました。楽天が提供しているシステムは本番向けのものを無料サポーター向けに作り替えた感があり、そのあたりに原因があるように思われます。


▲無料サポーターが申し込める回線数は1回線までに制限された。

楽天のキャリア事業は「ホップ・ステップ・ジャンプ」のうち、まだ最初のホップの段階ではあるものの、全国にサービス展開を広げるにあたって、さまざまな課題が浮き彫りになってきたといえそうです